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小泉吉宏『戦争で死んだ兵士のこと』〔メディアファクトリー・2001年〕
本文はわずか26頁。
であるにもかかわらず、「死に至るまでのあまりにもの偶然さ」
が非常に丁寧に描かれている。
これほどまでの内容を26頁で凝縮しているものは、
私が読んできた本にはなく、とても素晴らしい一作といえよう。
本書は、ある兵士の「生」ではなく、「死」から人の一生涯を
さかのぼっていく形で、記述が進んでいく。
人の生涯に対する淡々とした記述を書いただけだ、といえば、
そうかもしれないが、挿絵とともに読み進めていくと、
「人の一生涯のはかなさ」を感じることができ、
「あぁ、人生っていうのは、偶然の連続によってできているんだな」
と感じさせる内容である。
特に、本書において、主人公が陸軍士官学校に入学するに至った経緯を
最初から読みすすめていくと、「あぁ、そうするしかなかったのか。
ほかに選択肢はなかったのか。」と思わず、ホロッと泣いてしまうだろう。
そういう意味で「人は偶然に大きく左右されて生きている生き物だな」
と嫌な意味で感じてしまうが、逆にそうであるならば、
あまりかっこつけず、ケ・セラ・セラではないが、
「ありのままになすがままに力まずに生きる」ことで、
世の中のできごとに耳を澄まし、感受性の高い人生を送ることの大切さも感じた。
なお、本書は、戦争とそこに向かったある兵士のことについて、書かれているが、
私はこれが現実のアメリカにもあることではないかと思ってしまった。
そう感じながら、もう一度、読んでみたら、次のことを感じた。
戦争はいかなる理由があっても起こしてはならない。
兵士となって、不幸にも死んでいくものを生み出さないためにも。
最後に、短編であるにもかかわらずこれだけの感動を与えるというのは、
やはり、文章と挿絵の絶妙なマッチングの素晴らしさではないかと感じた。
ちなみに、装幀を申し上げると、これだけの薄さの本であるにもかかわらず、
しっかりとした上製本と仕上がっていることには、関係者としては驚いた。
<補 足>
本書の書評にあたっては、maさんより、本を提供していただいた。
ここに記して、感謝申し上げる次第である。
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~ムッシュ・いけふくろう~