今日の一貫

EPAと農業はなじまないのか? NO2機関車農家論の農村づくり

農家所得を安定させ、かつ増加させるためには、日本の経済成長が必須であり、EPA締結の拡大はその手段として必須である、と先日書いた。

しかしそれでも、農業産出額も影響を受けるとした。

常日頃、『農業成長産業論』で訴えているのは、①農業資源の効率的利用、②農業生産性の向上、③農業産出額の増加。
そのため、①顧客志向、②普遍性のあるビジネスモデルの構築等、そして③経営感覚の醸成、いわゆる経営というコンセプトの農業内部での定着だ。企業の参入等もそうした脈絡でとらえている。

つまり、現在のような農業構造を継続するならともかく、少なくても、普通の産業に共通するロジックで動けば、EPAを締結しても、農業が壊滅すると言った悲観的な状況からは、免れる可能性が高いと言うこと。

農産物価格が低下しても、重要なのは、農業所得や利潤の高さであり、経営としての持続性である。そのための輸出力、競争力を持った農業構造の構築が必要と考えている。

さて、どのような農業構造を目指すべきなのか?
一言で言えば、「機関車農家論」。
これ、常日頃からいっているもの。
全ての農家を、農業を媒介としながら共存しうる農村社会システムを模索する、とする考え方。
地域の経営者(機関車)が、兼業など、離農したい農家の地代や、片手間でもできる農業の面倒をみるような構造である。農村のお互い様の構造再生。
これは、20年ほど前に出版した『一転突破で元気農業』をお読み頂くのがわかりやすい。

この機関車農家論を水田農業に援用するとどうなるか?を考えてみたい。
まず考慮しておくべきは、1ha未満層の経済構造だろう。
この層は、生産に参加するより地代所得の方が所得増になるという状況に置かれている。
そうした現状を、農家自身がどう考え、またその上で、どう政策化するかが肝要となるのだろう。

(1ha未満層の経済構造と問題の所在)
○稲作生産を行うと、1戸あたり6,4万円の赤字になる。
○わが国政府は、10アールあたり1.5万円の戸別所得補償で、この赤字を補填している(1戸あたりにすると、4.8万円から6,4万の補填額か?)。
○これらの農家が稲作生産をやめ地代取得者になると、逆に1戸あたり6,4万円の黒字になる。
その様な性格を持った農家がわが国の102.3万戸、(全稲作作付け農家の)72%を占め、面積にして47,5万ha、35.2%を占めている。

繰り返しになるが、ここでわかる1ha未満層の経済構造とは、
①稲作赤字は1戸6,4万円。
②その分を財政で負担して、チャラに、としてるのが戸別所得補償。
しかし、結果は、若干の赤字かプラスマイナスで、チャラとしているレベル、、
③この農地、委託すると、逆に1戸に6.4万円が入ってくる。

今のままの稲作ではさらになお赤字が続く。
その赤字を、戸別所得補償で補填するとするのが民主党。
さらなる財政支出がつづく。
農協は、米価を維持して、さらに補填しろと主張。
この場合も、今の5618億円(コメは、3,451億円だが)にさらに上積みの財政補填となる。

(政策課題として提案すれば)
政策課題としては、
①消費者負担を増加させる米価維持策と、
②赤字補填の直接所得補償しか議論されてはいないが、、
③大規模農家が、1ha未満層の地代を負担するという、機関車農家論の第三の道がある。
これは、米価維持や直接支払いと、水田の地代化による大規模化促進策の、三者の内、どれが社会的厚生を増大させるかといった選択の問題としてある。

これ、一目瞭然。
コメ政策に関して「機関車農家論」を援用していえば、
①農業保護の有り様としては「米価」ではなく、「地代」で小規模農家を「守る」構造を作ること(地主化) 
②同時に機関車農家(大規模水田複合経営)の農業活動によって生み出される販売活動や、雇用、新商品開発等の経済効果によって農村の多数を占める客車農家の農村での農業活動を保証することである(稲作以外の農業への誘導)

(水田経営活動で650億から712億の地代を負担できるか?)
102万戸、47.5万haの地代は653億円から712億円になる。
(102万戸×6.4万円=653億)(47.5万×14万円=665億)(47.5×15万円=712億)
これを規模の大きい農家が負担できるか、という課題が出てくる。

15ha以上層には、2100万円以上の販売額があり、200万円ぐらいの地代負担力がある。
20ha以上だと400万円ぐらいの地代負担力はある。
つまり機関車が、客車(1ha未満層)の面倒を充分にみれることになる。
となると、現在の戸別所得補償補助金は不要となってくる。
戸別所得補償では、700億円の補助金を出しても、結局1ha未満層の赤字は補填しつくせない(だから戸別所得補償では5000億円必要だったのだ)。
しかし、農家同士が機能分担し、規模の大きい農家が地代負担すれば、1ha未満層は、むしろ、1戸あたり6.4万円の収入となるという構造が作れる
農村の経済活動で、充分にウインウインの構造ができると言うこと。
自立する農村のできあがりだ。

この700億円の地代を地代負担する大規模農家に直接支払いしても良いだろう。
となると、次の課題が出てくる。

コメント一覧

一行政マン
教えてください
一貫先生の議論の展開が早くて着いていけないところがあるので教えてください。
1.「1戸あたり6,4万円の赤字」の計算根拠((販売価格-生産費)×面積?)
2.「1戸あたりにすると、4.8万円から6,4万の補填額」の計算根拠
3.「地代取得者になると、逆に1戸あたり6,4万円の黒字」となるのは何故でしょうか?(1の6.4万円と同じ数値のようですが、地代がその値で形成されるということなのでしょうか?)また、資産保有農家が6.4万円で土地を貸すのでしょうか?
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