日・印EPA大筋合意は確かに朗報だが、わが国全体としてみれば、EPA・FTAに後れをとり、さらに円高が災いし、輸出型産業がすべからく海外を見始めた。
その原因のひとつは農業だと言われている。
FTA/EPAを締結すると農業は壊滅的になると巷間いわれているからだ。
はたしてそうなのだろうか?
私は、農業と両立するFTAが可能だと考えているが、、
しかしそれはそれとして、、農業が壊滅的になるとする主張では、国内産出額や国内農業生産額の急速な縮小が生じるためと考えられており、結局政治的イッシューとなるのは農家の所得が減少するという一点につきる様だ。
(急速に、というのも10年から15年が考えられているようである)
農業問題が、政局化する際の大義名分となっているのは、この「農家が困る」である。
とすれば、農家の所得構造がどうなっているかクールにみておくことも必要だろう。
下記は平成19年の数値である。数値は万円、戸数は万戸である
総所得 農業所得 農外所得 年金等 戸数
販売農家 484 120 194 170 175
主業農家 548 425 39 84 37
準主業農家 592 48 399 145 40
副業的農家 445 32 210 204 99
主業以外の販売農家 487 37 264 187 139
100% 7.5% 54.3% 38.4%
農家数は250万戸,販売農家は上記175万戸
その差の75万戸弱は農産物販所得なしの自給農家
販売農家175万戸の内の8割弱に相当する140万戸の所得に占める農業所得の割合はわずか7%。逆に兼業所得は55%
こうした所得構成をみると、農家の所得確保には、誰が考えても農外所得、つまり兼業所得を増加させる政策がもっとも重要、ということになる。
それはいわゆる、景気向上政策であり、雇用確保政策である。
もっと言えば、工場等の海外移転を阻止する政策がどうしても必要になる。
ということはFTA・EPAが農家所得の確保に貢献するということになる。
そうした考えは、今の農政の常識にない。
農業所得が減少するから、FTAには反対の立場が、農業者サイドのスタンスで常識だ。
だが、この常識を見直す必要があるのではないか。
むしろ、「農家所得を確保するためにEPA/FTAを推進せよ」、のスローガンが正当性を持ってくる。
それはともあれ、冷静なシュミレーションが必要となろう。
真の課題は、主要国とのEPA/FTA締結が、日本の農家所得にどのように影響するのか、のシュミレーションである。
おそらく結論は、締結した方が、農家所得にはプラスになる、といったものになるだろう。締結しない場合の損失の方が農村には大きいはず。
それは、日本の農家がすでに農業で生計を立てていない「蛻(もぬけ)農家」(小倉武一のワード)になっているからである。
ただ、農業産出額は確かに影響を受ける。
農政として必要なのは、減少する農業産出額対策であろう
さらに、37万戸の主業農家をどうするかであろう。
彼らを中心とした農業成長戦略を構築するとともに、セーフティネットを考えれればいいのだが、、、彼らが日本農業生産の8割を担う構造をどう作るかではないか?
構造改革と競争力強化のための戦略構築、これにつきる。
最新の画像もっと見る
最近の「農政 農業問題」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2020年
2019年
2014年
2004年
人気記事