10アール定額1万5千円。
1,バラマキと構造改革を天秤にかけた両にらみの非常にうまい額と思う。
①バラマキと構造改革を天秤にかけた、どちらつかず、あるいは両にらみの額といったところだろう。
次期参院選で全ての販売農家を抱え込める金額だ。
②また、生産調整参加メリットもあると判断して良いのではないか。民主党の政務三役が、「米価は下がらない」と強調していたが、それもこうした背景があってのことだったのだろう。
2,当初この額を聞いたときは、総額3371億円で定額という情報が入ってきていたので安いと感じた。
この額を全部定額とすると、生産調整面積は160万(152万)haだから、生産調整参加の全農家に2万円/10aほどの現金が配られることになる、と予測していた。
農水省によると、3371億円の内2000億円ぐらいしか定額に使わないのだそうだ。だから転作面積を132万haで計算し、10アール1万5千円と言うことらしい。だから、次期参院選対策としては合格点としても、1万5千円は安いのではないか、というのが第1印象。
残りの1500億ほどは暴落対策ということなのだろう。どう使うのか疑問だ。
満額確保したと言うが、今後予算削減にあっても対応可能と言うことなのかもしれない。
3,ただ、同時に小規模層へはバラマキといった性格を持つ。結果、赤字農家が増える。
構造政策としてみると、この9月に民主党が潰した「農地集積加速化事業」より性格が悪い。
もともと農地集積加速化事業、同様の予算規模(3000億円弱)で、10アール1万5千円で、小規模農家の農地貸しだしを促進する目的で5年間拠出するとするもの。1万5千円という額は水田の借地料(地代)に相当する額だ。これを本来なら、借地農家に渡すのが経済的には良いのだが、貸し手農家に渡して、構造政策に資する性格を持っていた。
戸別直接所得補償の小規模層への拠出も基本的にはこうした性格をもつが、農地貸し出し義務はない。ないどころか、耕作が条件だから小規模農家が、否が応でもコメと転作に参加することになり構造政策に逆行する。
赤字農家がますます増えることになる。
戸別所得補償は赤字農家育成、赤字補填のバラマキとなる由縁だ。
4,他方、規模の大きい農家にとってみれば、地代負担力が醸成され、構造政策にプラスに作用する。もともと生産費も安いし販売額も大きいだけに、剰余にさらにプラスとなる。
戸別所得補償自体は、規模拡大に中立的なものだが、構造改革抑制的作用と規模の大きい農家での構造改革促進的要素のどちらが全体として機能するのか、これからが見物だろう。
5,もともと、構造政策を促進するには、価格の下落分を補填するぐらいの直接支払いがあればよい。しかも規模拡大農家に絞って支払うというやり方だ。
およそ、この10年間で、米価(相対全銘柄平均)は、年㌔5円平均で下がっている。10アールにすると530㌔換算で2600円強の下落幅で、このぐらいの直接支払いが構造改革をもっとも促進することになる。
直接支払いで5年間支えるとしたら、7800円程度の単価で5年間支払うというので十分だ。10年間でとなれば14300円程度になる。
(5年間だと㌔15円を5年間、10年間だと27円を10年間、60㌔だと5年の場合900円を5年間、10年だと1650円と言うことになる。)
米価下落幅は、関税があるので、おさえられているという効果もある。
民主党は米価下落は考えていないというのだから、この戸別所得補償は、純粋に転作に参加するご苦労賃、つまり生産調整参加メリットなのだろう。金額に関してみても米価下落のセーフティネットとしてもほぼ満足のいくもので、参議院選対策のバラマキとしても充分だ。
難点は構造改革に中立な点だ。
6,この施策、やめどきが難しい。
通常なら政策目標が明確で、期限限定でなければならないものだが、構造改革が射程に入っていないため、期間限定が不明確という欠点を持つ。いつどのような状況になったらやめるのかが定かではないのが問題だ。おそらく今年はモデル事業で、1年限り、また来年新たに考えると言って逃げるのだろう。
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