今日の一貫

農政は一連のパッケージになっている。米政策はパッケージごと変えたらいい

今しがた書き終えた時事通信社用の原稿。
これまでブログに書いたことからの各所引用。

テーマは、「米政策の政策パッケージは選択できないのか?」

水田農業は専業農家を搾取することで成り立っている。
専業農家といっても、稲作の受託者のことだ。
彼らは、戦前の小作争議が頻繁におきた頃の五公五民にも似た苛斂誅求の下に置かれている。
稲作10アールあたりの物財費抜きの剰余はおよそ3万円から5万円でしかない。これが労賃やら地代に配分されるのだが、地代は、東北の稲作地帯では2万円が普通。3万円というのもある。となると、家族労賃は最悪で0から3万円。これ四公六民から十公零民の可能性もある。
専業農家を搾取して成り立つ農村社会と言われてもしょうがないだろう。


委託農家にしても、せっかく得た地代も土地改良費などですぐに消えるのだから、「米価が下がったので大変だ」という農家の事情も分かろうというもの。


こうなると、農政の出番だ。
ただ農政がやらなければならないのは、今の自民党がやっている様なことではないように思う。
最も優先しなければならないのはコメに対する直接支払い制度である。
稲作農業は割が合わないと見切って、その分を直接支払いで対応することではないか。対象はもちろん受託農家に限る。
現にEUの穀作専業農家の所得の大半は直接支払いによるものだ。


日本ではそうした制度を「ゲタ」という。
だが日本の品目横断政策に米の「ゲタ」はない。
理由は、778%の高関税維持を掲げてWTOで交渉しているからだという。米価が下がることを前提とした政策は打てないのだという。しかしこのことのディメリットは大きい。MA米は当然のごとく増え100万トン超になる。
さらには、価格維持をするためにと生産調整が強化された。

この生産調整、官民一体・業界一丸となった「合意書」なるものをあちこちに作らせ、強圧的な締め付けを正当化させた。
あれだけみんなで検討してきた「農業者と農業団体が主役になる」生産調整はどこかへ吹き飛んでしまった。

はてさてこうしたわが国の政策で、稲作に未来はあるのだろうか?

日本のコメは、778%もの関税をかけなければならないほどか弱くはないし、生産調整を強化し政府米で隔離すれば、米価が維持できるなどとは誰も思っていない。
そんなことは現実を見れば一目瞭然だろう。

政府は経済法則に目をそむけすぎた。生産調整をやれば大丈夫だと、長年「狼少年」をやりすぎた。

ここは、「米価が下がることを前提とした政策を打つ」た方がいいのではないか。
WTOで高額関税交渉をやめ、その見返りにMA米を縮小させ、さらに米農家に直接支払いをする、こうした政策に転換するのが筋ではないか。
米価下落にセーフティネットを張るこうした政策を、私は「低米価誘導政策」、あるいは「低米価対応政策」と呼んでいるが、どちらが真に日本農業のためになるか、国民に問うべき時期だと思っている。

コメント一覧

地方の米屋
一貫先生、お返事ありがとうございます。

いえいえ、
米屋に直接保障を!
などとは全く考えておりません(苦笑)
他の米屋さんもそんな人はいないと思います^^;

マイスターは・・・
一応、マイスターと食味鑑定士はもっており
先日の秋葉原での生産者交流会にも参加してきました。
有名な米屋さん、先進的な生産者さんたちと交流、繋がりが出来
大変有意義な会で、刺激とパワーをいただきました。

私の経験の話ですが・・・
食管法から食糧法に移行した時、(まだ大学生でしたが)
私はすぐに大手スーパーとの取引は切られるだろう、と考えました。実際、その予想は当たり、うちだけでなく全国の小さい米屋は取引をすべて切られました。(当然、売上げは激減)代わりにに大手卸が一手にそれを引き受けました。予想通りでした。
スーパーが次にしたことは、購買力をバックに大手卸に価格の引下げを要求。価格はどんどん下がりました。当然、産地の米の価格も下がりました。現在、米価を決めているのはスーパーになりました。(関係ないですがスーパーのバイヤーは信じられないほど傲慢な人間ばかりでしたw)

では、うちのような小さな米屋はどうしたかというと
より専門店化、配達業務の強化、情報発信、こまめな営業活動、
こだわりの米の充実、農家との密なつきあい、高価格化orスーパー以上の低価格化
ランチェスターの法則ばりの行動をとり生き残りをかけました。
特に食糧法に改正されたあとの3年間あまりは激動でした。
法が変わるとは、生活がかわるだけでなく
まさに死活問題に繋がると身を持って体験しました。(鍛えられましたw)

新・食糧法の趣旨は、
誰でも米を自由に売ることができる!
大いなるチャンスである!
ですが、

この食糧法=販売の自由化(規制緩和)の結果
何が起きたか、
大手スーパーの一人勝ちです。
言いたくはないけど米屋の淘汰激減。
(酒屋も酒類の販売の自由化後、コンビニで売られるようになり淘汰激減)
(大店法の改正も同様に、大手の一人勝ちで商店街は壊滅。今はこれが過ちだったと政府も気づき、まちつくり3法を作りました。気づくのが遅かったですが、やらないよりずっと良いでしょう。ちなみに私が知る限りで地方の商店街でも非常に良い形で生き残ったのが、静岡駅前と鹿児島駅前の商店街。なぜなら近くにスーパーがなかったから)

では、米の産地が潤ったか?
誰もそうは思いませんよね。

では、大手卸が儲かったか?
今では、スーパーへの納入の際は入札でその入札も米の価格で入札をするのではなく手間賃(ガソリン代、人件費、工賃)の入札で、k15円位です。
米の仕入れはスーパーが直接産地と交渉し価格を決めているそうです。
しかも、2週間~1ヶ月たった商品の卸への返品はバンバンあるそうで、中でも新潟が一番返品率が高く、うちの取引している卸にもそれが回ってきています。問題ないのに返品・・・。リスクは卸へ。

つまり、
規制緩和し、自由競争を認めると
結局、大手大企業の一人勝ちの結果を生み、
利益が一部に集中してしまう。
それは経済格差を生むことになり社会不安を招きによくないのではないかと。
wikiを読んでも、検索しても、経験からもそう実感します。

新自由主義者(市場原理主義者)の方たちは、
自由競争が絶対善である。規制は絶対悪であると主張します。サッチャーから始まりレーガン、中曽根、小泉と続く流れの中で、果たして社会は良くなったのか?国鉄の民営化は成功だと思いますが、道路公団、郵政民営化はどうなのか?我々の生活がよくなったのか?サービスは向上したか?郵貯・簡保の350兆円で国内を潤す予定ではなかったのか?低金利政策のため、より高利な海外に逃げていってしまったのか?
法人税の下げ、高所得者の所得税下げ、消費税UP、年金の不公平感、最近では、教育、福祉、医療まで自由化しようとしている。
大企業、大都市だけが勝ち、中小零細や農家、地方は負け組み、これで本当にその国は経済成長するのか?
この新自由主義に異議を唱えている面白い方がいます。私は好きではないですがヒラリークリントンです。アメリカに社会保障制度を導入し、低中間所得者を保護しようとしている。民間にまかせるのでなく国がセイフティネットをひき国民を保護しようと。民間にまkせると多くの商品・サービスが非常に高額のものになり不平等が生まれ社会が不安定になる。それを少しでもなくそうと。

最近では、日本では自動車の国内販売、スーパーでの売上げ低下が続いています。ひとつの要因として、構造改革があるのではないでしょうか。効率の良い大企業だけを勝たせ、経済合理性から無駄が多い中小零細を潰すことで、経済成長するという驕った構造改革の考えが根底にあるためと考えます。中小零細の多くの負け組みは消費者でもあるわけで、負け組みは消費を控えます。GDPの60%を占める消費が回復しないことには経済成長もないのではないかと。

話が回りくどくなりました。(すみません)

今、自給率39%です。
世界最低レベルで、124位。どう考えても正常ではない。
なので国民は、自給率を上げようと真剣に考えている。
しかし、日本は世界最大の農産物輸入国で、平均関税率は12%。自給率が下がるのも無理はないです。世界で一番輸入農産物を低関税で買っているんだから、自給率があがるわけがない。で、今度は駄目を押すように、米の関税をさげると・・・。

世界最高の品質を誇る日本の米を、中国やアメリカ米並みの低価格にすると。かわりに所得の直接保障をすると。

ただ、所得を直接保障をすると言っても、その保障率は?社会保障費、年金、医療費が削減されている中、農家だけが何百万もの所得を得ることに、将来的にも国民の合意を得られるのだろうか。(米屋に保障はいりませんw)
それ以上に私が危惧するのは、直接保障を受けることができる農家は100軒に数軒位の割合のような気がするんですが、どうでしょうか?

スイスはヨーロッパでは最小規模の平均耕作面積で14ha。農家の70%は専業農家。ここに直接保障をしている。
けれど、日本は1,2haで専業農家比率は10%もない。しかもヨーロッパは基本平野や丘、日本は中山間地。
もちろん、これを機会に大規模化&集約をし効率的で合理的な農業(稲作)に構造改革をしようとしているのだと思います。

けれど、これは、日本社会で現在起こっている経済格差の農業版ではないかと。90%の農家の切捨てではないかと。特に私が心配なのは、これがきっかけで起こる地域コミュ二テーの崩壊です。間違いなく崩壊すると思う。当然、全農&JAの機能も劇的に衰退するでしょう。全農&JAの肩をもつわけではないですし、悪い点も多々あると思いますが、全農&JAは日本の農業社会のセイフティネットそのものだと思うのですね。ここがあるから農家も安心できる面があると思うのです。商店街が大店法で安心できていたように。

けれどもNHKでの本間さんの発言の希望通り、自給率が39%→10%に低下した場合、
下落分の29%は米です。
アバウトな予想ですが、その29%分を埋めるのが外米。
外米を取仕切るのは政府と大手商社になるでしょうが、実質大手商社になるでしょう。伊藤忠とか三菱商事とか。
現在多くのコンビニではここらを通しています。

自給率が下がり外米が主食用なることを政府が認めた時、
同時にそれは、最安値価格の外米を握っている大手商社の一人勝ち状態が生まれ
全農・JAは農業界での負け組みに転落する。
これは、農業界の主導権が
官から民へではなく、
全農から大手商社へ、
と構造改革することを意味すると思うのです。
(一個人の米屋として、ここの部分だけは特に認めたくないですね~)

はその通りです。
だからこの開放カードを貿易交渉でもっと有効に使わないといけないのだと思っていますが、使えてないのが現状です。

日本を代表する方たちには頑張ってほしいです。(心底願っています)

これもその通りなのですが、、「高関税をかけてるために印象が悪いだけで、、」と言うのですが事態はもっと深刻で、、、国際交渉では、12%が有効に機能しないため、、、コメに高関税をかけ、それを唯一に近い交渉イシューとしているために日本は閉鎖的という国際認識となってしまっているのが問題なのでしょう。これも高米価維持政策の副産物です。
そこを突破しなければならないと思ってるのですが、、、ね。

実際の交渉というものを知らないものとしては、産業界が農業界を助けてくれればいいのになあ~と思っているのですが、、、あと、外国が本当に米を日本に売りたいのか?本当に本気でそう思っているのか?激しく疑問なんですが、、、まあ、これも実際の交渉を知らないものの、言いたい放題なのかも知れませんが^^;

駄文を長々と失礼しました。すみません。
お返事があったので、頑張って書いてみました。
ありがとうございました。









ikkann
米屋さんのセーフティネットですか、、
低米価で、農家は直接支払いがあるからまだ何とかなるが、、米屋はどうなるか、、ということですね。

米屋さんにセーフティネットをという考えは行政にはないですよね。同じコメに関わる家族経営なのに、商業と農業は何故異なるのか?

重要な論点ですね。

コメやさん、構造改革のまっただ中状況が続いていますよね。日米連ではお米マイスター制度を推奨して、優秀なコメ屋さんだけが残るような状況が続いています。この低米価、需給が均衡するまで下がるわけですから、米屋さんの商売等には底値が見え始めている人もいます。米屋さん、やはり商店街と同じで、価格維持より、MKT力を鍛えろ、が社会の反応なのでしょうか、、、。

また
>日本は輸入農産物に高関税をかけ
>超保護政策をしているというのは嘘で
>むしろ世界もっとも輸入農産物に開放的な市場であること>がわかる。

はその通りです。
だからこの開放カードを貿易交渉でもっと有効に使わないといけないのだと思っていますが、使えてないのが現状です。

>米など一部が突出して高関税をかけているため
>印象が悪いだけで、全体をみれば
>他国やトヨタなどの輸出企業に文句を言われる
>筋合いはないと考えるのです。

これもその通りなのですが、、「高関税をかけてるために印象が悪いだけで、、」と言うのですが事態はもっと深刻で、、、国際交渉では、12%が有効に機能しないため、、、コメに高関税をかけ、それを唯一に近い交渉イシューとしているために日本は閉鎖的という国際認識となってしまっているのが問題なのでしょう。これも高米価維持政策の副産物です。
そこを突破しなければならないと思ってるのですが、、、ね。

これは2-3日で消去します。



地方の米屋
仮に将来、低米価政策が実現し
米の価格が
10k1000円~2000円になったとします。
(現在の平均は10k3500円くらいでしょうか)

粗利益3割とると仮定します。
すると
700~1400円の玄米を仕入れることになり
×60kをすると
玄米1俵4200円~8400円(←これが低米価政策の結果となる)

所得保障されるというので
この低価格でも農家は困らないということになる。
米屋は、所得保障されないので
売上げは激減となる(笑うしかないです^^;)

しかし、農水省も朝日新聞も
低米価にすると米の消費が増え
食料自給率が向上するという。
(農政の中心人物である東大の本間さんは
低米価&自給率10%でも良いという考え)
米屋の立場からすると
価格が下がって半値になっても
自給率が39%→70%くらいの倍に伸びれば
売上げは維持でき問題ないので良いのですが、
低価格にして米の消費が2倍に伸びるとは
現実的に到底考えられない。
私だけの意見ではないと思う。

調べてみると
日本は世界最大の農産物輸入大国で
平均関税率は意外にも低い。

タイ35%
EU20%
日本12%
アメリカ6%

日本は輸入農産物に高関税をかけ
超保護政策をしているというのは嘘で
むしろ世界もっとも輸入農産物に開放的な市場であることがわかる。

米など一部が突出して高関税をかけているため
印象が悪いだけで、全体をみれば
他国やトヨタなどの輸出企業に文句を言われる
筋合いはないと考えるのです。

そもそもWTOやFTAは、強国やグローバル大企業に
有利な結論しかでないことで有名であり、
強国やグローバル大企業のために存在している
組織・考えですよね。
米をその遡上にあげるのは違うと思うのです。
トヨタなどの輸出企業の利益のために
日本の農村風景や食文化、地方の伝統・文化が壊されるのは
やっぱりおかしいと思うのです。


地方の米屋
時々、書き込みさせていただいたものです。

私は低米価政策も外米輸入も反対の立場なんですが
よろしくお願いします。^^;

直接支払いする・・・
理屈では納得できますが、
実際はどのような形になるのか
具体策がでてないので、
大手を振って賛成となっていないのが現実でしょうか。

あるドイツのりんご農家は
実収入が190万で、補償が210万、計400万円だそうです。
これなら生活できそうですが、
さて日本でこのような補償システムが
国民の同意を得られるか?

ところで低米価政策ですが、
それを望む農家の人はいるのでしょうか?
私が知る限り一人もいないのですが・・・^^;。
米屋仲間で会合をする時も、
こんなに安くて大丈夫なのか?という声ばかり。
20年産になれば農家の阿鼻驚嘆が聞こえてくるでしょう。
先日、農政局がうちに監査に来た折、
外米輸入のことを聞くと
倉庫には170万トンあると。
処分できないから肥料にまわし始めていると。
外米輸入は私らではなく、お上で決めているから
何もわからないと。

農政の上のほうと末端との乖離が非常にあるのが
現実で、低米価は理解されてない気がします。

それから本来セーフティネットとは、
所得保障もいいですが、規制が筋だと思うのです。
私の自論ですが・・・^^;。

今日の朝日新聞の記事で
やはり低米価政策をあげていましたが
なんだかピント外れな記事だなと。
コストや外米のこと何も書いてないし・・・。

ただ、私は日本の農業は成長できるはずであると
信じているし、可能だと思っています。
(下手な文で申しわけないです^^;)
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「農政 農業問題」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2023年
2022年
人気記事