経済財政諮問会議/性急過ぎる農業改革論
掲載日:2007-4-25 11:45:00
経済連携協定(EPA)交渉の加速化と農業改革を審議している経済財政諮問会議の専門調査会は、5月にもこれまでの議論をまとめて中間報告を出す。この報告は政府の経済財政運営の指針となる「骨太の方針2007」に反映することになっている。そこで農業は市場競争原理一辺倒の政策運営では立ち行かないことを、あらためて問題提起しておきたい。
農水省は2月末、同調査会の作業部会の求めに応じ「国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響(試算)」を報告。国内農業生産額の約4割に相当する3兆6000億円が減少、食料自給率は12%にまで低下、農業を含む全産業で375万人もの失業者が出る――と、経済界の一部にある農産物市場開放論をけん制した。
ところが同部会の議事要旨をみると、委員から「国内生産が結構残るじゃないかという印象」「消費者余剰が増えるなど、国全体での利益はどうなのかという視点が必要」「米価を政策的に高止まりにしているのではないか」などの意見が相次いでいる。さらに「価格を徐々に下げるということを出し・・・・・・赤字でも作るところは作りなさいというメッセージを送らないと、構造改革が進まない」「生産調整をしないと認定農業者として存在できなくなってしまう。これでは経営の選択肢を狭めているのではないか」と述べる委員すらいる。
同部会の論議は「グローバル化改革」「国境措置に依存しない競争力のある農業の確立」が大前提にあり、経済界の主張をうのみにした性急な農業改革論に陥っているきらいがある。
農水省は「国内農業の体質強化に向けて」とした資料の中で「国境措置撤廃の是非は、我が国の食料安定供給や農業の在り方にとどまらず、この国のかたち、日本人の生き方そのものに大きくかかわる問題」と強く反論。地域経済の柱である農業・食品産業が深刻な打撃を受け、地域社会の崩壊や農業の持つ多面的機能が低下することに警鐘を鳴らしている。
同部会は4月11日に意見集約。その中には依然として「日豪EPAは、天然資源の少ない我が国が資源・食料の安定供給を確保する上で重要な意義を有する」と明記している。基本食料を外国に委ねた食料安保論など聞いたことがない。北米自由貿易協定(NAFTA)で主食のトウモロコシの自給率を下げたメキシコは、昨今の価格高騰に悲鳴を上げている。食料を外国に依存する怖さが分かる。
地球温暖化対策や世界的な穀物価格高騰を機に、世界の農政の潮流は「市場開放」一辺倒ではなく、環境保全を重視した「農村振興」に重点が移っている。農業で安心して暮らせるように、活気に満ちた田園をよみがえらせてこそ、安倍首相が言う「美しい国、日本」ではないのか。
上記記事は、どうやら農水省のスタンスを強く後押ししたいようだ。クールに見て四点で疑問があるので書いておく。ただし無視してくださって結構です。
①農業は市場競争原理一辺倒の政策運営では立ち行かないことを、あらためて問題提起しておきたい。
→これはおそらくワーキングの面々も十分に承知していることでしょう。ただ農業経営者等が言うのは、土地利用型では、わが国では市場原理すら未だ実現していないと言うことです。グローバルな対応ではもちろんのこと、国境措置をどうするかは考えられているでしょう。論点にならないと思います。
②同部会の論議は「グローバル化改革」「国境措置に依存しない競争力のある農業の確立」が大前提にあり、
→こんな事は大前提として誰も考えていないでしょう。やはり国境措置は必要だが、国民の利益に合うような措置をどのレベルに措定するかを考えてるのではないでしょうか?だから消費者利益の損失という視点を語ってるのでしょう。
③基本食料を外国に委ねた食料安保など聞いたことがない
→農水省の食料安保論は、国内での供給を基本とし、輸入、備蓄を組み合わせた安保論でしょう。確かに、海外との関係がおかしくなると、食料供給にも異変がでることは、最近のバイオエタノールや、豪州の不作、オレンジの高騰、などで論証済みですが、だから国内生産をと強調するのも一つの手ですが、同時にだから海外との関係強化も大事、とするのも理解できます。むしろリアリティのあるのは後者の方で、以上が公式見解ではないのでしょうか。
④世界の農政の潮流は「市場開放」一辺倒ではなく、環境保全を重視した「農村振興」に重点が移っている。
→多くは構造改革がほぼ終わったEU地区で環境保全が大事になってきてるし、また中山間地等はそれなりに対応してるのが現状。日本もその様な方向にシフトしているのではないでしょうか。それが国民的共感を得るためには、やはり政府が何をやってくれるの?というスタンスではなく、住民が主体的に取り組む、協同の地域づくりの実践が必要ではないでしょうかね。
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