「ニッポンの農力」の第6部が5月3日から始まった。
どうやら、民主党農政の現場が明らかになってきた。
これまで、様々に論評されていたが、現実の動きが論評を超えて見えてきたからだ。
「ニッポンの農力」第6部は、初っぱなから「戸別所得補償の憂鬱」。
「もろ刃」との評価。
しごくまともな評価だろう。
「構造改革に中立」とするこのブログの論評とも整合的。
西部開発農産の照井さんの事例で貸しはがしの記事がでていた。。
600人の地主の内、12人から貸しはがしがあったという。
わずか2%
照井さんは、かつて北上市で集落営農による、農協からの組織的貸しはがしにあった伊藤栄喜さんの友人でもあるから、この程度の貸しはがしは何の問題もないことはよく知っているだろう。
金がほしい人はいるものだが、しかし貸しはがししたとしても、これで本当に金が入って儲かるかは疑問。
記事では、「飼料米を作る」から脱けるのだと言う、、
飼料米の補助金は8万円という破格の補助金。これに目がくらんだのかもしれない。
先に1ha未満は6万円の赤字としたが、エサ米だと収量は同じとして、米価㌔50円としたとしても、収益は3分の一程度の16万円程度に下がってしまう。70万円の経営費を差し引くと54万円の赤字。
これに補助金がつくが、1ha未満層の平均だと37万6千円にしかならず、赤字が増加するだけ。
ただ限りなく規模が1haに近いなら、補助金は80万円になるから26万円の黒字にはなる。
1haを照井さんに預けていると地代14万円は入るが、貸しはがし農家は、それよりも家族労賃含みで26万円の方を選択したということ。
これは、農業労働力の機会費用が低いのと、農業用機械が償却しきってないせい。
労働の機会費用は、他に働き口がないので農業がその就業の場として選択されるため。
65歳以上が6割、60歳以上が7割という農村の状況では、こうした老人の働き口として大事と言うことだ。
これは別に東北の農業地帯に限らない。
老人はお金を出しても市民農園等で農業をするのだから、農村の老人が趣味で農業をやって悪いはずはない。
これが民主党政権の狙いの一つなのだろうか?
山下一仁や浅川芳裕はこうした点を、戸別所得補償は農業構造改革を阻害すると批判しているのだが、しかし、おそらく新規機械投資を考えれば、大して問題にすることもないことのような気がする
というのも、こうした農家は、何百万円もする機械新規投資はしないだろうし、機械が償却し終われば、また委託農家に点ずるのではないかと考えられるからだ。
時間の問題だ(、←その時間が問題という主張もないではないが)。
しかも農村でこうした人はわずか2%でしかない。
ただ農協が、あなたの農地は集落営農でやりますといってくるかもしれない。
その方が大問題だ。
でもその集落営農、所得補償でダメージが大きい。
それは、むしろ歓迎すべきことなのではないか。集落営農で、、といった話はもはやないだろう。
集落営農、いろいろなタイプがあるが、ここで言う集落営農は、品目横断対策(稲・畑作経営安定対策)対応で、補助金目当てで作られたもの。
このときは規模要件があったが、民主党は規模要件を外した。
元々赤字の集落営農が崩壊するのは農業の発展には良いこと。
農村には、照井ファーム、、西部農産のような、、農業経営者を中心となった農業システムを作っていくのがよい。
問題は、戸別所得補償によって
その農業経営者のモラールが低下することだろう。
彼らに会うと、どこからか金が降ってくる、くれるというならもらわない手はない、、とバブルな状況。
記事によれば、農業生産法人45経営への聞き取りで、制度に賛成なのは、半分にもみたない21人、しかし金をもらうと答えた人は、38人だという。
これが経営政策であってはならない、、。
なにしろ経営者が疑心暗鬼となり、、、金がもらえるなら、、といった政策でしかないのが今の戸別所得補償制度だからだ。
何度も言うが、成長戦略が見えない直接所得補償は意味がない。
成長戦略があって、それに効果的に機能する直接支払いが必要なのである、
直接所得補償の目的は、構造改革を進めながら常に進化させていくことも考えておかなければならない。
民主党には、今後制度のさらなる改革が必要とされるのではないか。
日経「ニッポンの農力」
第6部政策転換に揺れる
は良い記事だった。
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taka
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