ハニカム薔薇ノ神殿

西南戦争の現地記者の歴史漫画を描いてます。歴史、美術史、ゲーム、特撮、同人誌の話他

コミスタ終了の激震マグニチュード9

2015年04月24日 | がんばれデジタル侍
いつか、この日が来る事は、出会った時からわかっていた。

コミスタ終了のお知らせのようです。サポートは2018年まであるらしい。
使い続けたいのになあ。
これほど、日本文化のそれも印刷媒体用に規定を作って来た「漫画」というものに特化したソフトは無かった。
今、ウェブ用もやってるけど、もはや「ノド」とかいらんですよね。



思えば、いろんな所に行ったね、コミスタ。

写真を2値化できるのは画期的だったよね。
あんまり使えなかったけど。そんなのあるだけで「安心感」はあったよ。
聖都を描く時は、レンガのトーンを手作りして
パースに合わせて変形で貼ったよね。手描きだと死んだよね多分。

「美神のカルテ」その他の広告漫画は
商品の説明のコマとかあったから
クライアントからもらった画像をトレスできる機能あってこそだったし。
アナログよりずっと夜景を描くのが楽だった。

それからトーンを削るのは、削るんではなくて
貼ったトーンの上からホワイトのペンで描くのよというのに気付いて驚かされたり
線を太くするったってアンタこれ微調整できないじゃない、と
ちょっと融通のきかない所にも惹かれたりしてた。

思えば、あなたがいたから歩いてこれた。
もしかして、「もう10年もやっているのなら、誰だってアシスタント5、6人は雇えるほど
出世してないとおかしいでしょう」とでも言うのかと…。
そんな事は田舎に住んでる限り夢だよ。
だいたい、そんな出世街道を歩みたい人は、はなからコミスタなんて使わずに必死に作業をして「修業」をしている人等だよ。
今時はきっと、漫画の大学だの専学だかで、きちんと就職も世話してもらっているに違いないよ。


私達はそんな大通りではなく、いつも漫画の街の裏通り、邪道にいて
「パースこれでいいや」とか「担当が明日までにリテイクって言った」というのに対応していた。
「コミスタだからここカットして拡大でいける」
なんてね、あなたは頼もしかった。
いつだって側にいたんだ。
そして私はあなたを頼りにしてきた。
液晶タブレットはあなたの為に買ったのだと言って過言ではないよ。


もちろん、CSP、クリスタはクールだ。確かにスマートだ。
「ほら、こんなんでいいんだろ」的なトーンも用意してはくれている。
わざわざ吹き出しのカーブを変えれるようにしてある。親切のつもりらしい。
けれども、何よりも
コミスタ、あなたの中には
私が作りに作った自作トーンが入ってるんだよ。
なによりも一緒に過ごした時間の証として。


誕生してから15年らしいね。
私と出会ったのは2006年だから、そろそろ9年にもなるのか。
そんなにも長くつきあっていただなんて。正直びっくりした。


コミスタ、私は時々思う事があるんだ。
もしも漫画なんかやってなかったら、どんな人生だったのかと。
こんなものやってどうなると思った時もあった。「やめろ」と言われた時もあったし。


本当に描くのが好きなのか?惰性でやってるだけなんじゃないのか
本当はもう、とっくに情熱は失せていて、
ただ、目の前に締切があってクリアせねばならぬという義務感だけでやっているなら
真摯に情熱を傾けている人達に、詫びなくてはならないのではないかとも思ったり。

描くのってもうホントに嫌になる事もある。
何十年やっても一向に上達しない。誰かと比較なんかしようものなら、凹み倒して即、死ねる。
あんなにも理想は遠くて、道はこんなにも長くて暗くて
ただ迷う事ばかりあって、時間は限られていて、それでも楽しいだろ、好きな事やってんだろとか言われたら
ぶっちゃけ苦しい事の方が多いのに。世の中には楽しい事はいくらでもあるのにと。
なぜなんだろう。

この10年で私の考えは少し変わったよ。
体力も気力も使い果たしてメンタルヤバい事なる時もあるけれどね

いいじゃない、全部完璧に描けずとも、自分の下手さに何度も泣きたくなっても
向き合って、そしてできる限り気持ちを伝える努力だけはしていこう
信じてやってくしかない。
その相手が、誰であってもいいと決めた。


「大丈夫、それじゃあ、できる部分からやってみよう」
そんな事を言ってくれるソフトであったんだあなたは。

その昔まだ、アナログが多かった時に
「デジタルで描くのは邪道だ」と言った人もいたけれど
どうせツールや技法は時代によって変化する。何を選択するかは自分で決めていいと思う。
新しい選択の先にはまた別の世界がある。
だからまた新しいツールができたり
表現方法もどんどん、新しいのが出てくるかもしれないんだけれど


「才能の限界なんてものは、別の誰かになろうとするから訪れるんだ」とあなたが言った気がした。
そうなんだろうな。仕方無い部分もあるのをしっかりと受け止めて
だったらまだ、もうちょっと進めるかな。


そして

漫画という街が
大通りも裏通りも、新しい道も含めた、いろんな道を許すものであってほしい。
枠の中に縛られないで、広がっていけるものであったらいいな。

もうちょっとは一緒にいよう。
「.cst」の拡張子と。
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