いむれ内科クリニック

愛知県豊橋市のクリニック
内科・感染症内科・呼吸器内科・アレルギー科

AMR対策いきまぁーす!

2017-12-23 12:20:21 | 診療

「いむれ内科クリニック」の院長の山本景三です。

風邪などのウイルス感染症に抗菌薬(抗生物質)は効かないということをご存じですか? 一般の方を対象にした最近の調査では、「ウイルスに抗菌薬が効く」と思っている方は半数近くに上り、約2割の方は「風邪で受診したら必ず抗菌薬を処方してほしい」と思っているとのことです。

抗菌薬は細菌が原因となる病気の治療に使われる薬で、医師は風邪などのウイルス感染症には抗菌薬が効かないことは当然知っています。しかし患者さん(やその保護者)から抗菌薬の処方を求められると「念のため」と言って処方してしまうことが少なくないと言われています。「あの先生は出してくれたのに」「薬を出してくれないなら別の病院に行く」などと言われるとくじけてしまいそうになります。

1940年代に発見されたペニシリンに始まる抗菌薬は多くの命を救うことができました。一方で、最近はその不適切な使用を背景に抗菌薬が効きにくい病原体(薬剤耐性菌)が増加しています。さらに新規の抗菌薬の開発は遅れています。病原体が変化して抗菌薬が効かなくなることをAntimicrobial Resistance; AMRと言います。わが国は2016年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を閣議決定し、さらに2017年6月に「抗微生物薬適正使用の手引き第一版」が厚生労働省により作成されました。詳しくは厚生労働省:薬剤耐性(AMR)についてをご覧下さい。

「手引き」によれば、急性気道感染症(感冒・急性鼻副鼻腔炎・急性咽頭炎・急性気管支炎)の原因微生物の約9割はいろいろなウイルスです。細菌などが関与するのは、溶連菌感染症やマイコプラズマ感染症に限られ、抗菌薬が必要なのはこのような場合のみです。また急性下痢症に対しても、まずは水分摂取を励行した上で、基本的には対症療法のみ行うことが推奨されています。

とは言え

  • 「ウイルス感染症です。特に有効な治療はありません」
  • 「抗菌薬は必要ありません」

という否定的な説明のみでは患者さんは不満を抱きやすいでしょう。一方で

  • 「症状をやわらげる薬を出しておきますね」
  • 「暖かい飲み物を飲むと鼻づまりがラクになりますよ」

といった肯定的な説明は受け入れられやすいと言われています。

感染症はその患者さん一人だけで完結する病気ではありません。他の人や未来の人間にも関係してきます。私は感染症専門医として従来からこれらのことに注意を払いながら診療してきました。国がAMR対策に本腰を入れ始めた今は、みなさんにもAMRについて考えていただくよい機会になると思います。

ところで啓発ポスターでおわかりのように、厚生労働省のAMR対策は機動戦士ガンダム(Amuro; アムロ)とのコラボレーションです。最近の厚生労働省は「麻しんがゼロ」(劇場版マジンガーZ)とか、ある意味頑張っています。


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