東京国際映画祭2「雨降る日の水彩画」

前回に引き続き、東京国際映画祭で観たものをご紹介していきます。今回は韓国映画。

雨降る日の水彩画（1989）
「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨン監督のデビュー作。89年の作品という事で、数えれば今から16年前。という訳で、ほとんど期待せずに行ったのですが、予想に反して..面白かったです。面白かった、というのも見方を変えた視点ではあるのですが。
ストーリーはというと、
地方の有力者の家の養子になった青年ジスは、新しい妹ジヘとの恋に落ちながらも養父の思い通りに、ソウルの神学大学に入学。地方の美大に入学したジへと離れている間も愛は深まり...。といった感じ。韓流ドラマ「秋の童話」と同様に、韓国では最もタブー視されている禁断の恋を描いた作品です。
話的にはありがちですし、出てくる人物の台詞も見当はずれな事ばかり言っているので、シュールでなんだかよく解らなかったりします。しかしどこがツボだったかというと、

●映像がもろに「大映ドラマ」な世界
韓国映画なのにも関わらずどこか懐かしい..。この感じはいったいなんでしょう？
再放送でしか観ていないのですが、往年の「スクールウォーズ」や「不良少女とよばれて」等の大映ドラマの映像そっくり、というかそのもの？思わずそこに鶴見信吾や「イソップ」の姿を探してしまいましたよ。
途中シャブ中のホステス・ギョンエが出て来たり（役どころでいうと、伊藤かずえでしょう）チンピラとタイマンをはるシーンは、松村雄基が学ランを着て出てくるのでは？と本気で思ってしまいました。また、ヒロイン役（中山美穂や南野陽子のような80年代アイドル風）が野山を歩くシーンは、往年のアーモンド・チョコレートの宣伝そっくり。

●雨降り過ぎ！
インド映画なんかでもよく活用される雨ですが、この映画ではいかなる場面でもやたらに雨が降ります。晴れの日の方が少ないです。監督は韓国の名作恋愛小説「ソナギ」に出てくる雨のシーンに影響を受けたそうですが、ここまで降ったら、「そういう国なんだ」と勘違いされても仕方ないかも。

●主人公がとにかく殴られる
はじめから最後まで、極端な特殊メイクで顔を腫らしたシーンばかり。主人公はちょっと冷やかされただけでも相手を殴るので、当然殴り返される訳です。頬ばかりを殴られるので、普通なら間違いなく死んでます。ちなみに主人公は「北の国から」の純君役の人+野球の江川卓さんといった風貌で、過去のスター発掘を期待していた奥様方からは不評そうでした。

...と、こんな要素を抜きにしても、クァク・ジェヨン監督のデビュー作という事でファンの人は必見の作品かもしれません。後の作品に通じるところがたくさんあります。
全編通じて要所に用意されたおなじみのユーモアや、他の作品でも多用された人物を中心として背景が360度回転するカット。主人公の大学時代の相部屋の同僚（役者さんは大鶴義丹にうり二つ）は変人ですが実はいい奴で、後の作品「ラブストーリー」に出て来たテス役に通じるところがあります。きっと監督の学生時代、もしくは兵役の時期に、同僚にこんなタイプの変な友人がいたんでしょう。別れの列車のシーンで使われた駅も、ひょっとして同じ駅？

90年代後半から「シュリ」や「八月のクリスマス」といった作品が日本で取り上げられ、韓国映画は商業ベースで国内でどんどん大きくなっていくのですが、日本にはあまり紹介されていない80年代、90年代前半にも実は隠れた名作があるのではないか？と思いました。　あと1本は観に行く予定ですが、いろんなブログを見てみると1週間ほとんど通い詰めで見ているような人って結構いるんですね。一体仕事はどうしてるんだろう？等余計な心配をしてしまいます。