今月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOМC)を前に市場は、50ベーシスポイント(bp)の利下げの可能性を意識しだしている。13日の東京市場でドル/円は一時、140.65円までドル安・円高が進んだ。もし、米連邦準備理事会(FRB)が50bpの利下げを決断するなら、その理由が大きな注目を浴び、その次の会合での50bp利下げの声が高まってドル安・円高が加速する可能性が高まるだろう。
その意味で18日に公表される2024年末と2025年末のドットチャート(FOМCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図)の結果は、市場における利下げ織り込みに大きな影響を与え、円高進行の行方を大きく左右しそうだ。
<注目されたWSJ記事とダドリー前NY連銀総裁の発言>
13日の東京市場で円高が進んだ要因の1つとしてマーケットの注目を集めたのは、FEDウォッチャーとして著名な米ウォールストリートジャーナル紙のニック・ティミラオス記者が来週のFOМCに関し「0.25%の利下げか0.50%の利下げかという判断に直面している」と書いた記事だった。
9月会合は0.25%の利下げになると見方に傾いていた市場は敏感に反応。さらにダドリー前ニューヨーク連銀総裁が13日のシンガポールでのイベントで、50bpの利下げを実施する強い論拠があるとの認識を示したことも市場の関心を集めた。ダドリー氏は強い論拠として米労働市場の軟化を挙げ、雇用へのリスクがインフレの根強い脅威より大きいとの見解を表明した。
<50bp利下げなら、理由は何か>
一部の市場関係者は、仮にFRBが50bpの利下げを決断した場合、それが1回限りでとどまらず11月会合でも50bpの利下げが実施される可能性が急速に高まると予想している。なぜなら、通常の利下げペースである25bpを選択せず、50bpの利下げを決めるからにはFRBが懸念する重大なリスクが存在し、そのリスクを利下げで最小化させるには連続して50bpの利下げを実施することが効果的であるからだ。
ダドリー氏が言及した米労働市場の軟化によるリスクが、インフレ再燃の脅威よりも大きいとの判断があれば、足元の国内総生産(GDP)成長率が2.5%(米アトランタ地区連銀のGDP NOW)という現状でも大幅な利下げの合理性を説明できる。
50bpの利下げが決まった場合は、パウエルFRB議長の会見が一段と重要性を増す展開になる。その理由次第で今後の利下げパスがより鮮明になるからだ。
同時にドットチャートの結果をみて、年内に100bpの利下げの可能性が高まるなら、市場の「前のめり」の利下げ織り込みをFRBが容認したと受け止め、今よりもドル安・円高が進みやすくなる可能性もある。
<25bp利下げなら米金利上昇、それでも日本株安になる構図>
他方、9月会合で25bpの利下げを決め、その先も利下げペースも「より抑制的」なことがドットチャートから判明すれば、米金利が上昇してドル高・円安のパワーが再浮上する展開になるだろう。
そのケースでは、米利下げを過剰に織り込んだ反動として米株が下落し、円安に戻っているにもかかわらず日本株の戻りが鈍いということもありそうだ。
いずれにしても米市場の動向に振らされ、円高→日本株安、米株安→日本株安という日本株にとって逆風の吹きやすい地合いがしばらく続く可能性があると予想する。
<円高進行なら日本経済に影響、注目される植田日銀総裁の会見>
来週はFOМCとともに日銀も19-20日の日程で金融政策決定会合を開催する。こちらは7月利上げから間がないこともあり「無風」の予想が大勢を占めている。注目点は、8月上旬の株価大変動を経ても日銀が実質政策金利の大幅なマイナスを着実に修正させる目的で利上げの構えを持続させている点だ。
展望リポートに示された経済・物価の見通し通りに進めば、緩和度合いの調整のための利上げをしていく、というスタンスを改めて示すとみられる。
とはいえ、FOМCで50bpの利下げが決まり、その後の利下げパスもかなりのペースになると市場が予想してドル安・円高が進んだ場合、日本経済や日銀の政策判断に影響が出る可能性も否定できない。
そのケースで日銀の植田和男総裁が、円高の与える影響の経路やインパクトの規模に対してどのような見解を示すのか、市場は大きな関心を持って見守るだろう。このところ、日銀総裁会見中やその直後にドル/円が大幅に動くケースが目立っており、植田総裁の発言の微妙な変化にもマーケットが敏感に反応する展開が予想される。
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