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ブラインドネス

2008年11月26日 22時14分05秒 | 映画 は行
評価★★★★




隔離病棟での争いは人間の醜い部分がさらけ出される。




ある日突然失明する謎の病気が
感染症のように世界中に蔓延していく中
隔離施設に閉じ込められた発症者たちが
極限状況で露わにしていく様々な人間の本性を
寓話的に描き出す。

続々と増える感染者。
政府は緊急隔離政策を発動し感染者の強制収用を始める。
軍に厳しく監視され食糧や医療品の注文もままならない
収容所の現状に、苛立ちを募らせていく感染者たち。

秩序も衛生問題も限界に近づいていた。

そんな中
第三病棟の王を名乗る男が銃を振りかざし
暴力で全病棟の実権を握る。



こういう状況で必ず出てくる悪の権力者。
この王を名乗る男と仲間たちが外部から支給される食糧を独占し
各病棟の感染者らに食料が欲しければ金を払えときた。

そして金が底を付いたら今度は
女を出せ!ときたから各病棟の感染者たちは
生きるために苦渋の決断をし身を捧げるのだった。

辛いです。

見ていて、これはまさに地獄絵そのものだった。
ジュリアン・ムーアも木村佳乃も生贄となりました。

自分の妻を差し出した男たちは
この現実に背を向けるしかなく
言葉もなくただ、じっとしていることしか出来なかった。

この集団の強制乱交パーティーは
ほぼ、音声だけで描かれており
思わず過去に見た『ソサエティー』(1989)をイメージしてしまった。
また、N・キッドマンの『ドッグヴィル』 (2003)も思い出してしまった。

ただひとり、見えているジュリアンが
王と名乗る男に強襲して殺してしまうのですが
なんとも言いようのない気持ちになってしまう。

目が見えなくなると
ココまで文明の崩壊が起こってしまうのでしょうか。
隔離施設を監視していた軍も
いつのまにか誰もいなくなっていた。
当然、彼らも感染して見えなくなり
持ち場を放棄したことは言うまでもないが。

遂に自由になった感染者たちは街に繰り出す。
見えなくなると少数のグループで動くというのは
『ICHI』で出てきた瞽女が旅をするのとよく似ている。
全明か半盲の瞽女が先頭に立ち全盲の人間が
前のひとの肩に手を掛け歩く姿は本作も同じであった。

街の状況も酷いものだ。
ゴミが散乱し街としての機能は完全に崩壊していた。
個人で動いている人は野垂れ死に、あちこちに死体だらけだ。

人は皆、家に帰れずボロボロの衣服で
手探りで食料を求め、必死の形相で動いている。

これは、ゾンビ映画そのものである。
下手なゾンビ映画より、よっぽど怖いと思った。

そうした中、ジュリアンらのグループは
大型マーケットで食料と衣服を調達してきて
ジュリアンの家に向かうことにした。

家に付いた御一行様は
久しぶりにシャワーを浴び、食事をし
慣れ親しんだ仲間たちと安全に暮らせることに
安どの気持ちと、この上ない幸せを感じ始めていた。


黒い眼帯の老人(ダニー・クローバー)と
サングラスの娘(アリス・ブラガ)が交わした言葉が良いのだ。
これこそ人間本来の内面だけを尊敬し
それが恋に変わり、遂には「このまま二人だけで一緒に暮らしたい」
黒い眼帯の老人は、見えない状況がどれだけ幸せだったことか。



時は残酷だ。
















【ココからネタバレ】


最初に失明した男(伊勢谷友介)が大声をあげた。

見えてる!微かに見えてきた!
白い闇から徐々にジュリアンの顔がはっきりと見えてきたのだ。
そこへ、男の妻(木村佳乃)が「うそでしょう!?」「ほんとに!?」
男は「うそじゃないって!ほんとに見えてるんだ」
この夫婦、歓喜を上げ抱き合う。
周りに居たメンバーも喜びを分かち合っていた。
回復するんだ!もうすぐ自分らも!

そう!ひとりを除いて・・・。

黒い眼帯をした老人・ダニー・クローバーのこと。

見えてしまったら・・・


いろいろなテーマが盛りだくさんでした。
しかも、その全部が非常に重いのです。

ジュリアンさんが大活躍するパニックアクションではなかったね^^
ワタシとしては、この映画は全く期待してなかったので
結構、お得感があった映画でしたね。


本作はモノクロの一歩手前というくらいに
ギリギリまで色彩を落としたことで
映画の中で起こっている現実に一層の悲壮感を漂わせている。
無国籍映画にしたということだが
確かにニューヨークやロサンゼルスのような所だと
微妙に安っぽくなってしまったかも知れません。

------------------------------------------------------
監督:フェルナンド・メイレレス
脚本:ドン・マッケラー
撮影:セザール・シャローン
音楽:マルコ・アントニオ・ギマランイス



出演:ジュリアン・ムーア/マーク・ラファロ/アリス・ブラガ/伊勢谷友介/木村佳乃/ガエル・ガルシア・ベルナル



『ブラインドネス』



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10 コメント

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☆ネタバレ、回避!(=^_^=)☆ (TiM3)
2008-11-26 23:26:17
本作は劇場で・・と漠然とながら思ってるので、完読はせずに・・(=^_^=)

しかし、ワタシの好きな「シャマラン系」というよりも、どっちかって言うと「ミスト系」の流れを感じますね。

あんまり「ミスト」路線のハナシはすすんで観たくはないのですけれど・・(・ω・)
返信する
今日観て来ました♪ (ポロン)
2008-11-27 20:16:43
昨夜 危うくネタバレまで読んでしまうところでしたよ(笑)

ウ~ン なんとも人騒がせな感染ねえ
女性として息をのむシーンも多数^^;

ずっと緊迫感のある映画だったわぁ^^


返信する
TiM3さん (ituka)
2008-11-27 20:43:54
シャマラン系いいですよね~
あの空気感が好きです。

隔離施設の前半部と街頭に出てからの後半部と
まるで2部構成仕立てのようでした。
いろんな意味で考えさせられる映画ということは事実でしたね^^

>あんまり「ミスト」路線のハナシはすすんで観たくはないのですけれど・・(・ω・)

そうか~、ワタシは『ミスト』路線でもOKでしたね^^
夢の中の出来事として整理してしまうんですよ^^
返信する
ポロンさん (ituka)
2008-11-27 20:51:28
鑑賞お疲れ様です^^

一応、記事のネタバレ部分をドド~ンと空けてみたのですが
空けすぎという思いもあったのですが、読まれなくて良かった^^

>女性として息をのむシーンも多数^^;

怒りとか湧いてこなかったですかね^^;
触っただけで年齢って分かるものなの?

割と女性レビューでは憤慨されてる方が多かったように感じましたから。

返信する
☆別なのを・・☆ (TiM3)
2008-11-28 01:38:23
観て来ましたが・・これが、、しょっぱかった(×_×)
返信する
おっと!^^ (ituka)
2008-11-28 22:09:05
一体なんでしょう!?
では、早速お邪魔に~^^
返信する
こんにちは~♪ (由香)
2008-12-04 09:43:26
お邪魔します。
かなりの辛口感想を書いた私にTB&コメントどうもありがとうございました。
しかも、goo禁止用語があったようで、お返事に手間取り申し訳ないです(汗)

itukaさんはお得感があったようですね~
私にはどうにも合わない映画でした。
人間ってあんなに醜いものかなぁ~と感じてしまって、、、
でも、全世界の人類が失明すると、ああいう風な世界になるのかもしれません。観ていて辛かったなぁ~
これの原作には続編があるようですね。なんでも4年後を描いているとか、、、どういう世界になっているんでしょうね。
返信する
4年後・・・ (ituka)
2008-12-04 16:01:49
>かなりの辛口感想を書いた私に・・

その辛口のなかにも、映画の中で受けた印象が
非常に似ているな~と思ったものですから^^
最終的な評価点については男女の違いによる生理的な部分で別れたのだと思いました。

>これの原作には続編があるようですね。なんでも4年後を描いているとか、、、

そうなんですか!
崩壊した世界が復興したところに再び発症するとか^^
実は地球外生命体による意図的なウィルス散布で、人類への最終警告だったり(地球が静止する日じゃないって~!)
その原作は、可也気になりますね~^^
返信する
☆モーニング・コーヒーの湯気で視力回復?☆ (TiM3)
2008-12-20 02:18:36
ばんはです。 って遅いよ!(=^_^=)

いよいよ、観て参りました。

いやー、なんか、しょっぱかったですね・・

本作を過大評価する方はよほどのMかよほどのSでしょう(・ω・) ←決め打ちかよ!

もそっと後味の良い、おバカな清涼感が欲すかった、、
返信する
遂に!^^ (ituka)
2008-12-20 23:39:20
>いやー、なんか、しょっぱかったですね・・

しょっぱかったですか。
微妙に味付けがお口に合わなかった感じですね^^

>本作を過大評価する方はよほどのMかよほどのSでしょう(・ω・) ←決め打ちかよ!

確かにS愛好家やM愛好家のどちらにでも対応可能な作りになってましたですね。

>もそっと後味の良い、おバカな清涼感が欲すかった、、

本作も『フォーガットン』的な展開になったら
もうちょっと救われた印象になったかも^^
ジュリアンさんの映画だけに、「もしかして・・」な~んてこともアリかなと^^

返信する

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