評価:★★★★[4/5]
チンピラに絡まれるシーンのリアルさは秀逸。
◇
ウォルト・コワルスキーには、自分だけの正義があった。
それに外れるものは、何もかも許せない頑固で偏狭な男だ。
妻の葬儀では、孫娘の露出過剰なファッションにキレ、
大勢の参列者は「会食に出すハムを食いに来ただけだ」と一刀両断。
ふたりの息子たちは、式が済むと逃げるように帰って行った。
もっと、許せないことがある。
近隣に暮らす、ウォルトが偏見を隠さないアジア系の移民たちだ。
彼らに罵声を浴びせる以外のウォルトの日常は、いたって退屈だ。
そんな彼の唯一の楽しみは、
磨き上げた愛車〈グラン・トリノ〉を眺めること。
定年までフォードの自動車工を勤め上げたウォルトが、
1972年に自らステアリング・コラムを取り付けたヴィンテージ・カーだ。
その宝物を盗もうとする、命知らずの少年が現われる。
<映画サイト>
◇
各種アワードにノミネートすらされなかったのは
本編内に於ける過激な台詞にも一因があったのでは?と
感じてしまうほどに人種差別用語がポンポン出てくる。
といっても、そんな偏見用語を吐き出すのはウォルトだけですが^^;
まぁ、そうは言っても殆んどは、独り言みたいに唸っているだけ。
昔から通い続けている床屋のイタリア系移民の店主との絡みは
汚い言葉の応酬合戦だが、そこには互いの尊敬の念が感じられる。
この店主とのやりとりは、後にタオを立派な男にして行く過程で
ウォルトが“男の会話”としてレクチャーさせるところは笑える^^
◇
引っ込み思案で内向的な隣家のタオがメキシコ系の
ストリートギャングらに絡まれる。
ちょうどそこへアジア系でタオと同じモン族のチンピラたちが通りかかり
絡まれているタオを助けるのだが、その絵面がなんだか妙に
『ワイルド・スピード/TOKYOドリフト』の雰囲気なんですけど(笑)
あの改造日本車の車種は何だったんでしょうか^^;
タオを演じる俳優さんですが、そのキャラクターから言って
見事にタオになりきってましたね。
もともと、そういうキャラだったのかは知りませんが
まったくの無名俳優であることは事実です。
しかし、このタオですが、なぜ学校にも仕事にも就いてなかったのか
その辺りの説明は父親がすでに他界しており、お金が無いという
ことだけのようだったので、ちょっと理解出来なかったですね。
そしてタオの姉のスーが実に良いんです。
あの偏屈なウォルトが初めて本編で誉めた人物がこの子。
会話が的確で機転が利きユーモアがある。
ウォルトにとって、この姉弟は自分の人生に於いて
確実に生きがいの一部になっていくように感じたのではないだろうか。
今度は、スーがボーイフレンドと歩いているところで
黒人とスパニッシュ系らのチンピラに絡まれる。
相手は3人。ビビっていながらも白人のボーイフレンドは
「やぁ!兄弟」とハイタッチを試みるが、相手は乗って来ない。
ここでの“すべり”は非常にヤバいのである(爆)
本編中に、出てくるチンピラ&ギャングらに絡まれるシーン。
3系統の人種に絡まれることになるタオとスーですが
実際に絡まれる怖さがものすごく伝わってくる演出は
イーストウッドの自然体演技によるものなんでしょうか。
ポイントとなる台詞以外は、全部アドリブだとしたら
それはそれで、かなりの評価ができる部分ですね。
◇
ウォルトがスーを救う場面は、老いて動きがゆっくりなのは
仕方ないが、囁くように言う啖呵は、その内容で相手を圧倒させる。
もちろん、ここでも銃を抜き相手に付き付けているわけですが
ウォルトの取った行動は、もっとも手っ取り早い方法なんですね。
しかし、終盤で何度もタオに絡むスパイダーらに対し
ウォルトは、このままではタオに将来はないと判断し
スパイダーらのメンバーのひとりを袋叩きにし脅しをかけるのだが、
それが後半、とんでもない展開となっていくのだ。
まさに、ウォルトでさえ予想し得なかった事態となっていくのである。
深夜に何100発もの弾丸を家に撃ち込まれ、首に傷を負うタオ。
更に、スーは外で暴行を受け瀕死の状態となって帰って来たのだ。
この事態を重く受け留めたウォルトは最終決断をする。
復讐の鬼と化したタオを宥め、ウォルトは綿密な復讐計画を立てはじめる。
そしてラストでウォルトらが取った驚愕の作戦とは・・・。
良かった。期待通りの秀作でした。そして驚いた。
この映画のラストは俳優業を引退するイーストウッドにとっての
こだわりが感じられました。
あんなに大事にしていた愛車「グラン・トリノ」を貸すシーンに
思わずウルウルとなってしまったワタシ^^
おまけ)
・スーとデートしていた白人の男の子。スパニッシュ系の
ギャングらに絡まれ、全くいいところなく
そのまま居なくなってしまいましたが、意外にも
イーストウッドの息子さんだったんですね。
『父親たちの星条旗』にも出演していたらしいです。
・ウォルトの誕生日に長男夫婦が持ってきた各種プレゼントは
老人介護がらみのお笑いネタとしか思えない^^
事実、固定電話のところで劇場内は爆笑してましたから(笑)
------------------------------------------------------------
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ニック・シェンク
撮影:トム・スターン
音楽:カイル・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド/ビー・ヴァン/アーニー・ハー/
クリストファー・カーリー/ジョン・キャロル・リンチ/
『グラン・トリノ』
チンピラに絡まれるシーンのリアルさは秀逸。
◇
ウォルト・コワルスキーには、自分だけの正義があった。
それに外れるものは、何もかも許せない頑固で偏狭な男だ。
妻の葬儀では、孫娘の露出過剰なファッションにキレ、
大勢の参列者は「会食に出すハムを食いに来ただけだ」と一刀両断。
ふたりの息子たちは、式が済むと逃げるように帰って行った。
もっと、許せないことがある。
近隣に暮らす、ウォルトが偏見を隠さないアジア系の移民たちだ。
彼らに罵声を浴びせる以外のウォルトの日常は、いたって退屈だ。
そんな彼の唯一の楽しみは、
磨き上げた愛車〈グラン・トリノ〉を眺めること。
定年までフォードの自動車工を勤め上げたウォルトが、
1972年に自らステアリング・コラムを取り付けたヴィンテージ・カーだ。
その宝物を盗もうとする、命知らずの少年が現われる。
<映画サイト>
◇
各種アワードにノミネートすらされなかったのは
本編内に於ける過激な台詞にも一因があったのでは?と
感じてしまうほどに人種差別用語がポンポン出てくる。
といっても、そんな偏見用語を吐き出すのはウォルトだけですが^^;
まぁ、そうは言っても殆んどは、独り言みたいに唸っているだけ。
昔から通い続けている床屋のイタリア系移民の店主との絡みは
汚い言葉の応酬合戦だが、そこには互いの尊敬の念が感じられる。
この店主とのやりとりは、後にタオを立派な男にして行く過程で
ウォルトが“男の会話”としてレクチャーさせるところは笑える^^
◇
引っ込み思案で内向的な隣家のタオがメキシコ系の
ストリートギャングらに絡まれる。
ちょうどそこへアジア系でタオと同じモン族のチンピラたちが通りかかり
絡まれているタオを助けるのだが、その絵面がなんだか妙に
『ワイルド・スピード/TOKYOドリフト』の雰囲気なんですけど(笑)
あの改造日本車の車種は何だったんでしょうか^^;
タオを演じる俳優さんですが、そのキャラクターから言って
見事にタオになりきってましたね。
もともと、そういうキャラだったのかは知りませんが
まったくの無名俳優であることは事実です。
しかし、このタオですが、なぜ学校にも仕事にも就いてなかったのか
その辺りの説明は父親がすでに他界しており、お金が無いという
ことだけのようだったので、ちょっと理解出来なかったですね。
そしてタオの姉のスーが実に良いんです。
あの偏屈なウォルトが初めて本編で誉めた人物がこの子。
会話が的確で機転が利きユーモアがある。
ウォルトにとって、この姉弟は自分の人生に於いて
確実に生きがいの一部になっていくように感じたのではないだろうか。
今度は、スーがボーイフレンドと歩いているところで
黒人とスパニッシュ系らのチンピラに絡まれる。
相手は3人。ビビっていながらも白人のボーイフレンドは
「やぁ!兄弟」とハイタッチを試みるが、相手は乗って来ない。
ここでの“すべり”は非常にヤバいのである(爆)
本編中に、出てくるチンピラ&ギャングらに絡まれるシーン。
3系統の人種に絡まれることになるタオとスーですが
実際に絡まれる怖さがものすごく伝わってくる演出は
イーストウッドの自然体演技によるものなんでしょうか。
ポイントとなる台詞以外は、全部アドリブだとしたら
それはそれで、かなりの評価ができる部分ですね。
◇
ウォルトがスーを救う場面は、老いて動きがゆっくりなのは
仕方ないが、囁くように言う啖呵は、その内容で相手を圧倒させる。
もちろん、ここでも銃を抜き相手に付き付けているわけですが
ウォルトの取った行動は、もっとも手っ取り早い方法なんですね。
しかし、終盤で何度もタオに絡むスパイダーらに対し
ウォルトは、このままではタオに将来はないと判断し
スパイダーらのメンバーのひとりを袋叩きにし脅しをかけるのだが、
それが後半、とんでもない展開となっていくのだ。
まさに、ウォルトでさえ予想し得なかった事態となっていくのである。
深夜に何100発もの弾丸を家に撃ち込まれ、首に傷を負うタオ。
更に、スーは外で暴行を受け瀕死の状態となって帰って来たのだ。
この事態を重く受け留めたウォルトは最終決断をする。
復讐の鬼と化したタオを宥め、ウォルトは綿密な復讐計画を立てはじめる。
そしてラストでウォルトらが取った驚愕の作戦とは・・・。
良かった。期待通りの秀作でした。そして驚いた。
この映画のラストは俳優業を引退するイーストウッドにとっての
こだわりが感じられました。
あんなに大事にしていた愛車「グラン・トリノ」を貸すシーンに
思わずウルウルとなってしまったワタシ^^
おまけ)
・スーとデートしていた白人の男の子。スパニッシュ系の
ギャングらに絡まれ、全くいいところなく
そのまま居なくなってしまいましたが、意外にも
イーストウッドの息子さんだったんですね。
『父親たちの星条旗』にも出演していたらしいです。
・ウォルトの誕生日に長男夫婦が持ってきた各種プレゼントは
老人介護がらみのお笑いネタとしか思えない^^
事実、固定電話のところで劇場内は爆笑してましたから(笑)
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監督:クリント・イーストウッド
脚本:ニック・シェンク
撮影:トム・スターン
音楽:カイル・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド/ビー・ヴァン/アーニー・ハー/
クリストファー・カーリー/ジョン・キャロル・リンチ/
『グラン・トリノ』
期待を裏切らないイーストウッド。
彼の人生哲学と美学を「これでもか」というほど感じました。(確かに発言は不穏当なものが多かったですが^_^;)
エンディングの曲がまだ耳について離れません。素晴らしい曲でした。
>スーとデートしていた白人の男の子
そうなのですか!
イーストウッドの息子さんだとは知りませんでした!
先述のエンディング曲はイーストウッドと彼の息子さんとの共作らしいのですが、長男と次男さん?なのでしょうか。
エンディングの曲、良かったですよね~^^
長男のカイル・イーストウッドですよね。
父親譲りのジャズ音楽で今後の活躍を期待したいトコロです^^
>長男と次男さん?なのでしょうか。
母親は違うみたいですが、長男カイル40歳、二男スコット23歳のようです。
他にも3人のお嬢さんが居るようですが、アリソン監督をはじめ
すべて芸能活動の方で頑張っているようです。
母親も女優だったし、まさに芸能一家とはイーストウッド家族の事をいうのでしょうね^^
これは連休の楽しみです。
時速80キロで走ります(あー、分かった分かった)
『ピンク・キャディラック』と勘違いしてました^^;
車名と相棒の部分でシックリきたのに惜しい!
サル系が出てくるのは『ダーティファイター』の方でした。
80年代ごろのイーストウッド作品は時々
どれがどれなのか分からなくなることがあります。
>時速80キロで走ります(あー、分かった分かった)
これはもう、誰もが試したくなる行為だと思います。
高速道路で手を振っているひとを見たら、まちがいなく“これ”をやってたんでしょうね^^
そして『おっぱいバレー』を観たお方(笑)
OKってことで(=^_^=)
私的には『ファイヤーフォックス』『アイガー・サンクション』『アルカトラズからの脱出』の3作は外せませ~ん。
『ピンク・キャデラック』と『ピンク・フラミンゴ』はちと間違えそうですね(=^_^=)>
>ソンドラ・ロックとサンドラ・ブロックの違いが
そっくりじゃあないですか(爆)
イーストウッドの元奥さんですよね^^
なんか、前にアリ・ラーターとラナ・ターナーとか言ったのとニアピン賞ということで^^
>私的には『ファイヤーフォックス』『アイガー・サンクション』『アルカトラズからの脱出』の3作は外せませ~ん。
たぶん、このうちの2本は観ていると思いますが、説明できるほどの記憶が残っていません(汗)
『アウトロー』が観てみたい、第一候補なんです。
レンタルしようかな^^
>『ピンク・キャデラック』と『ピンク・フラミンゴ』はちと間違えそうですね(=^_^=)>
そういえば、先日のことで、『マックス・ペイン』のチケットを買って劇場内に入っていったら
『マーリーおバカな・・』の予告編をしてまして、ココの映画館は階下で上映してる作品の予告編を未だに流すんだ~
と、不思議に思っていたら、一向に予告編が終わらず「これは新バージョンなんだな」と・・
そうです。劇場の入り口を間違えていたのです(爆)
慌てて場内から出たら、管理人のお爺ちゃんが「そっちじゃないよ~ククク!」とひと言。
これホントの話です^^;
ようやくレビューがまとまりそうです。
にしても、タオ。めちゃ重傷に見えたんだけど(首の傷)・・あいつもアンブレイカブル?(またかよ!)
>『アウトロー』が観てみたい、第一候補なんです。
良かったですよ~。確かBSで観た記憶があるけど、
終盤でクリント1人の前に保安官助手(?)10人ぐらいがズラリと並ぶんです。
「絶対、死ぬじゃん!」みたいな緊迫感がありました。
(少し作品時間が長いですけどね)
>と、不思議に思っていたら、一向に予告編が終わらず
>「これは新バージョンなんだな」と・・
>そうです。劇場の入り口を間違えていたのです(爆)
オープニングが予想してた雰囲気と違ってて、戸惑うケースはワタシもありますけどね(=^_^=)
『メン・イン・ブラック』なんかもトンボ(?)が飛んでて「何じゃこりゃ?」と思ってしまったもんです(=^_^=)
観賞お疲れ様です。
車種が分かってスッキリしました~^^
モン族の奴らは、しつこくタオに「いいから乗れ!」とか言ってましたよね。
どうみても、すでに5人は乗車しているのに、どこに乗せようとしていたんでしょう。
まさか、トランクにひとり移動でもしたんでしょうか(笑)
>にしても、タオ。めちゃ重傷に見えたんだけど(首の傷)・・あいつもアンブレイカブル?(またかよ!)
ウォルトの判断も早かったですよね^^;
「どれどれ、うん!かすり傷だ」って
戦争行ってた人間からすれば、男たるものそんなことでわめくな。ってことでしょうね^^
あそこでタオが言い返したら、猪木パンチとかもらいそうですしね(笑)
他の誰も傷つけない、ウォルトなりの落とし前の付け方だったと思います。
★4.5/5
観賞お疲れ様です。 そうですよね~^^
あのラストは、うそだろ?と一瞬固まってしまいました。
息子夫婦との確執に加え、病院での診断結果。
そしてトドメは神父さんとの腹を据えた会話でウォルトの腹は決まったのでしょう。
俳優人生に幕を落とす意味に於いても最高の演出だったと思いました^^