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じゅにあ★Schutzstaffel II

キン肉マンの2次創作。小説載せてます。(以後更新予定無し)

運命の糸(5)

2019-06-13 21:57:00 | 小説/運命の糸
 
 
 
人間が超人の力を得る。
 
その為にJr.は幼少より過酷な鍛練を乗り越えたらしい。
 
 
しかし私は知らなかった。
 
それで終わりではなかった事を。
その後も過酷な運命が続く事を。
 
 
 
 
 
 
「拙者が御主に、最初にブロッケンの事を話したのが確か四年程前だったか・・・」
「ああ。そのぐらいだったと記憶しているが」
「あの頃もなかなか不憫ではあったが・・・だが、正直今ほどの苛立ちは感じていなかった。何故か・・・もう分かるな?」
「どうせ・・・じき死ぬ、と・・・・・・そう、お前は思っていたーーと、いう訳か」
 
 
 
ニンジャの話によれば、あの王位争奪戦の時点で、血を得る為の殺戮を止めたJr.の命の火は、正に風前の灯(ともしび)だったらしい。
そして、父親の敵討ちから改心し、正義超人として戦い始めたのが、それよりさらに一、二年前。つまりーー
 
 
つまりニンジャは、生き返ったJr.が、しかしまたやがて死ぬだろうーー残虐超人の頃のような戦いを重ねない限りはーーと、思っていたのだった。
 
 
 
「そう・・・だから薄情かもしれんが、短い余生を一族に捧げるのだと・・・、奴もそう考えて、あんな馬鹿な話に乗ったのだと思った。そう考えればやり切れぬ事もないと・・・拙者も、割り切っておったのだ」
「・・・」
「だが今も奴は生きている。六年間拙者が知る限り、ただの一度も人に手に掛ける事無くだ」
「・・・」
「まあ、あんな生活が、果たして生きていると言えるか、甚だ疑問でもあるがな」
「・・・つまり、お前は、ブロッケンが血を浴びなくとも死なない体で生まれ変わったーーと、そう結論付けた訳ーーーー」
 
 
それは、突然の覚醒にも似た回想だった。
 
自分とJr.を結び付ける、先人の記したあの一節が、頭の中でぐるぐると駆け巡った。
 
 
“髑髏堕ちる時 卓越した友情の闘士救うべく 理想を持ちたる渦中の人現る”
 
 
ーーまさか、予言の示した未来がまだ続いているとでもいうのか・・・。
 
ーー生き返ってもなお、犠牲になれと・・・堕ち続けろというのか・・・。
 
 
 
 
 
 
私は、本当に足元が崩れるような感覚を、生まれて初めて味わった。
 
 
ニンジャの推測が全く正しいとするならば、こういう事になる。
 
スグルの力で蘇ったJr.は、誰かを殺さなければ己の命を徽章に奪われるというリスクからは解放された。
しかし、完全な超人になれた訳でもなかった。相変わらず超人でいる為には、徽章の力が必要だった。
 
 
ーー死ななくなった・・・死ねなくなった。
 
 
つまりJr.は死ーー自死を除くーーという、プライドの高い奴が唯一縋れそうな”逃げ道”すら、閉ざされてしまっていたのだ。
 
 
ーーそう遠くないと思っていた苦難の終わりが、いつまで経っても訪れない悲劇・・・か。
 
 
いつの時点でJr.が死なない事に気付いたのかは分からない。
だが、少なくともニンジャが疑問に思うよりずっと前から、奴は感付いていたのだろう。
 
 
 
「ーーーーだ」
「・・・・・・アタル殿?」
「恐らく・・・いや、間違いなく全ては、私と関わってしまったせい・・・だな」
 
 
 
Jr.と初めて相対したあの日。
 
あの日自分が感じた、震えるような喜びと高揚感こそ、悲劇の始まりの一歩だったのかもしれないと思った。
 
 
 
弟の王位継承が邪悪な神の手で妨げられる。
その未曾有の危機に、遂に己も立ち上がらねばならないと、そう決意しこのマスクを手に入れた私が真っ先に向かったのが、他でもない、Jr.の居る屋敷だった。
 
団体戦に必要な四人。己が信念ーー超人にとって最も大切な事は個人の自立。それがあって初めて真の協調が生まれるーーに合った超人として目をつけたのが彼らだった。
そして、中でも特にJr.に対し、私は特別な感情を抱いていた。
 
 
ーー奴の存在。それそのものこそが、私が再び表舞台に立つのに必要な力。
 
ーーそして、奴を閉じ込める殻を壊してやれるのは、私。スグル達では駄目だ。私なら出来る。
 
ーー奴こそ私の右腕であり、同時に私の隣こそが、奴の居場所・・・ーー
 
 
自ら飛び出したにもかかわらず、しかし何かにつけ運命と責任を押し付けた弟の事が気になり、その様子を陰から見ていた自分。そんな弟の仲間になった一際年若い男に、私が常に感じていたのは”焦り”と”苛立ち”だった。
 
他の仲間に比べ年齢も経験も浅かったJr.は、それ故に誰よりも強くなろうと、成し遂げようと必死だった。
しかし、そんな思いと裏腹に、仲間達は奴を庇護の対象とした。
 
もちろんスグル達に他意は無く、純粋な友情ーー愛情で、自分より未熟なJr.を守り導こうとしていた。だが、その情がJr.を一層焦らせる。焦りは無謀に繋がり、無謀な行動は更なる庇護欲を掻き立てる。
 
ある種恵まれた居場所に、しかしJr.は甘んじる事なく、抜け出そうと必死にもがきあがいていた。
 
 
そのひたむきさ。
飼われても決して慣れず、いつまでも牙を剥く野生の狼の如き気高さ。
 
 
私はその誇り高い輝きを、再び表舞台に立つにあたり、何としても手に入れたかった。
 
 
ーー運命・・・まさに、これは運命だったのだ・・・・・・。
 
 
 
 
 
 
そして私は手に入れた。
 
 
 
Jr.は己の全てを私に捧げ死んだ。
 
そして、私はJr.から得たものを糧に、正義超人の未来にこの身を捧げた。