じゅにあ★Schutzstaffel II

キン肉マンの2次創作。小説載せてます。(以後更新予定無し)

幕引き、もしくは収束(6)

2019-06-13 21:51:00 | 小説/幕引き、もしくは収束
 
 
 
そうだ。
 
何故今の今迄、俺はこの事を考えなかったのだろう。
 
 
 
 
 
 
 
「・・・」
 
そもそもあいつが一番Jr.と長く深い付き合いの筈だ。ならば俺以上に気にかけていても全くおかしくはない。なのに何故、あいつは一度も此処を訪れなかったのか?
そういえば随分昔、「奴を頼む」みたいな事を俺は言われなかったか?全く意味が分からずそれっきり忘れていたが、まさかあの三つ編み仙人、あの時点からこういう事態を見越して俺にあんな事を言ったのか!?
 
 
「・・・」
 
ソルジャーもそうだ。あの人も同じように、俺にJr.の事を頼んできた。あれも同じ・・・あの人も何もかもお見通しだったってのか?お見通しで、そしてその通りになって・・・挙句、俺より先にJr.に会ったってのか!??
 
 
「・・・」
 
待て・・・そういえば何故あの仮面野郎がJr.の手紙を持っていたんだ!?あの時は早く一人になりたかったから聞きもしなかったが・・・。どういう伝手(つて)であいつはそれを手に入れたんだ!?まさかあいつまで俺より先に会ったなんて事は無いだろうな。先に会って、手渡されて・・・それで涼しい顔して「忘れてた」だと!??畜生、やっぱりあの時殺してやれば良かった!!
 
 
 
 
 
ひとたび火が付いたが最後。俺の憤(いきどお)りは膨らむばかりだった。
 
勿論、こんなくだらない感情ーー嫉妬ーーが湧いてくるのも、ようやく確固たる自分を取り戻したJr.の姿をこの目で見て安堵したが故(ゆえ)の事だ。
 
 
この大きな幸福に比べれば、吹いて飛ぶ程度の話。それでも止まらないものは止まらない。
 
 
 
だが、仕方ないだろう。
どんなに改心しても、俺は元悪魔超人なのだから。
 
 
 
 
 
 
「・・・」
 
じゃあなんだ。俺は何も知らないで、奴らが敷いたレールに乗ってたのか!?まあ百歩譲(ゆず)って奴らも心配はしていたのだろう。それにしても、余りに酷くないか?確かに一番苦しんだのはJr.本人だ。だが、俺だって俺なりに悩み苦しんだ。それも全部、奴らの想定の内だってのか!??
 
 
「・・・」
 
ああ、もうさっきの計画は無しだ。Jr.をファクトリーには連れて行かねぇ。奴が望んで口にしない限りは、俺からファの字も言うもんか。あっちに戻っても、あいつらには何一つ話してやらん。どいつもこいつも人を駒扱いしやがって。駒にも意地があるんだって事を思い知らせてやる。というかこうなったら、もうあんな場所に戻ってやるものか。Jr.は俺が飽きるまで居ていいと言っていた。だったらここに籠城だ。このままここでーー
 
 
 
 
 
 
「どうした?疲れたか?」
 
 
一体どれだけ俺は要らぬ怒りを打(ぶ)ちまけていたのだろうか。
気付けば知らぬ間に戻って来ていたJr.が、俺のすぐ側に立っていた。
 
 
外出の準備と言いつつ、シャツの釦(ボタン)が留っているのと部屋に来た当初見たものとは違う眼鏡を掛けている他は、何も変わってはいなかった。
 
 
ーーいかんいかん。こんなにも特別な日に、何を俺はくだらん感情に振り回されて・・・。
 
 
「いや、何でもーー」
「ははは。お前も年には勝てないか?長旅で疲れたか・・・座りっぱなしで腰でも痛くなったか?」
 
 
 
幸いJr.は俺の卑(いや)しい胸中には気付いておらず、単なる老化による態度と解釈しているようだった。
 
ご丁寧に、俺が立ち上がり易いよう手まで差し出す始末。人をどこか小馬鹿にするような表情は、もう何十年も見ていなかった、まだ現役の頃の奴の顔そのままだった。
 
 
ーーまあ、いいか。どうあれこいつが笑っているなら何でもいい・・・。
 
ーーそれに少なくとも今、こいつは俺の前に居る。それでもう、十分な筈だ。
 
 
 
「・・・ん?」
「いや、何でもねぇ・・・。しっかり”親孝行”、頼むぜ」
 
 
 
出された手を強く握る。
さらに強い力で引かれる。
 
 
 
 
 
俺の休暇は、まだ始まったばかりだ。
 
 

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