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東シナ海めぐり日本挑発
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高橋洋一
【日本の解き方】中国は国際社会の「無法者」 サラミスライス戦略で侵食、東シナ海めぐり日本挑発 一気に来る有事への警戒を
中国が連日、日本周辺に接近している。岸田文雄政権は防衛力強化の方針を決めたが、有事の備えには何が必要か。
中国が日本を挑発しているのは、尖閣周辺の中国船だけではない。防衛省は1日、中国軍のWZ7偵察型無人機1機が同日午前から午後にかけ、沖縄本島と宮古島の間を抜け、東シナ海と太平洋を往復したと発表した。同機種の飛行確認は初めてだという。
中国は少しずつだが確実に日本を侵食している。2000年ごろから、「核心的利益」という表現で、ウイグル、南シナ海、香港、台湾、尖閣を完全に自国領土とするという主張をしている。内陸のウイグルでは民族浄化とも見間違うかのような政策を展開してきたが、南シナ海では徐々に領有権拡大を図ってきた。つまり、時間をかけることで大きな戦略的変化になる小さな行動のゆっくりした積み重ねを繰り返してきた。
これは「サラミスライス」戦略といわれている。サラミを薄切りするように少しずつ入り込むやり方だ。南シナ海で行われたことが確実に東シナ海でも行われてきている。尖閣周辺や今回の無人機偵察は東シナ海での中国のサラミスライス戦略の一環である。
南シナ海での中国のサラミスライス戦略は16年にオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所で判決が出て、中国は主張に根拠なしとなって負けている。
それにもかかわらず、中国は判決を無視したので、すでに国際社会での無法者になっている。東シナ海でも無法な行いをすると考えるべきだ。
米国の発表によると、昨年12月21日、米空軍の偵察機が南シナ海上空の国際空域で通常の偵察活動を行っていたところ、中国軍の戦闘機が機首から6メートル以内に接近し、飛行を妨害したという。
中国からは、米国側が問題との反論もなされている。いずれにせよ、中国は国際法の無法者だから、のれんに腕押しだ。米軍は声明で「すべての国が国際法に従って国際空域を安全に使うよう望む」として中国に自制を求めたが、米中において、今後、偶発的な接触がないとはいえない。
近年、南シナ海上空で米国やその同盟国の航空機に対し、中国軍機による危険な妨害行動が急増している。それは南シナ海にとどまらず、東シナ海まで広がっているとみるべきだ。
冒頭の中国軍の偵察型無人機に対して航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進した。無人機は東シナ海から飛来し沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に出て、先島諸島の南を飛行した後反転し、ほぼ同じルートで東シナ海に戻った。次は確実に段階を上げて日本を挑発するだろう。そして、東シナ海の南シナ海化と台湾封鎖に向かってサラミスライス戦略が続くのではないか。
現状の中国有事は、少しずつだが決して後退しないサラミスライス戦略だが、来るときは一気に来ることを忘れてはいけないので気が抜けない。
東シナ海めぐり日本挑発
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高橋洋一
【日本の解き方】中国は国際社会の「無法者」 サラミスライス戦略で侵食、東シナ海めぐり日本挑発 一気に来る有事への警戒を
中国が連日、日本周辺に接近している。岸田文雄政権は防衛力強化の方針を決めたが、有事の備えには何が必要か。
中国が日本を挑発しているのは、尖閣周辺の中国船だけではない。防衛省は1日、中国軍のWZ7偵察型無人機1機が同日午前から午後にかけ、沖縄本島と宮古島の間を抜け、東シナ海と太平洋を往復したと発表した。同機種の飛行確認は初めてだという。
中国は少しずつだが確実に日本を侵食している。2000年ごろから、「核心的利益」という表現で、ウイグル、南シナ海、香港、台湾、尖閣を完全に自国領土とするという主張をしている。内陸のウイグルでは民族浄化とも見間違うかのような政策を展開してきたが、南シナ海では徐々に領有権拡大を図ってきた。つまり、時間をかけることで大きな戦略的変化になる小さな行動のゆっくりした積み重ねを繰り返してきた。
これは「サラミスライス」戦略といわれている。サラミを薄切りするように少しずつ入り込むやり方だ。南シナ海で行われたことが確実に東シナ海でも行われてきている。尖閣周辺や今回の無人機偵察は東シナ海での中国のサラミスライス戦略の一環である。
南シナ海での中国のサラミスライス戦略は16年にオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所で判決が出て、中国は主張に根拠なしとなって負けている。
それにもかかわらず、中国は判決を無視したので、すでに国際社会での無法者になっている。東シナ海でも無法な行いをすると考えるべきだ。
米国の発表によると、昨年12月21日、米空軍の偵察機が南シナ海上空の国際空域で通常の偵察活動を行っていたところ、中国軍の戦闘機が機首から6メートル以内に接近し、飛行を妨害したという。
中国からは、米国側が問題との反論もなされている。いずれにせよ、中国は国際法の無法者だから、のれんに腕押しだ。米軍は声明で「すべての国が国際法に従って国際空域を安全に使うよう望む」として中国に自制を求めたが、米中において、今後、偶発的な接触がないとはいえない。
近年、南シナ海上空で米国やその同盟国の航空機に対し、中国軍機による危険な妨害行動が急増している。それは南シナ海にとどまらず、東シナ海まで広がっているとみるべきだ。
冒頭の中国軍の偵察型無人機に対して航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進した。無人機は東シナ海から飛来し沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に出て、先島諸島の南を飛行した後反転し、ほぼ同じルートで東シナ海に戻った。次は確実に段階を上げて日本を挑発するだろう。そして、東シナ海の南シナ海化と台湾封鎖に向かってサラミスライス戦略が続くのではないか。
現状の中国有事は、少しずつだが決して後退しないサラミスライス戦略だが、来るときは一気に来ることを忘れてはいけないので気が抜けない。