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反撃能力までの四半世紀
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【阿比留瑠比の極言御免】
岸田文雄首相と米国のバイデン大統領は13日(日本時間14日)の会談で、日本の反撃能力(敵基地攻撃能力)の開発と運用に向けた協力の強化で一致した。首相はこれに先立つ昨年12月16日、反撃能力保有を盛り込んだ新たな「安保3文書」の閣議決定に伴う記者会見で、こう述べていた。
「安倍晋三政権で成立した安全保障関連法により、いかなる事態でも切れ目なく対応できる体制がすでに法律的、理論的に整っているが、今回、あらたな3文書を取りまとめることで、実践面からも安全保障体制を強化することとなる」
[安倍氏のレールの上]
日本はようやく、空想的平和主義に自縄自縛となった状態を脱し、現実に即した当たり前の安保政策へとかじを切ったと感慨深い。
それと同時に、首相が言及した集団的自衛権行使を限定容認した安保関連法も反撃能力保持も、安倍氏の問題意識と危機感が敷いたレール上にあると感じる。
安倍氏は24年前の平成11年4月の衆院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会で、集団的自衛権行使の限定容認を主張し、16年後に実現させた。
同じく反撃能力についても、10年9月の衆院安全保障委で訴えていた。
「(日米安保条約5条には)弾道ミサイル攻撃への対応に際し、米軍は必要に応じ打撃力を有する部隊の使用を考慮すると書かれている。必ず報復するということではない。その場合、わが国が報復する能力を持っていなければ抑止力の穴があいてくる。防衛は穴があっては多くの努力が水泡に帰してしまう」
自衛隊は「盾」、米軍は「矛」という役割分担の限界と矛盾を、衆院当選2回の若手議員時代からずっと問うてきたのである。
安倍氏は小泉純一郎内閣の官房長官時代の18年7月にも反撃能力検討の必要性を指摘し、24年12月に首相に再登板した後もたびたび警鐘を鳴らしてきた。
そして令和2年9月の退陣時には「私の最後の仕事」(安倍氏)として安全保障政策に関する異例の談話を発表し、政府・与党として反撃能力保有を検討する方向性を指し示した。
安倍氏が先を見据え、四半世紀にわたってこのように強くリードし続けてこなければ、現在のように安保環境が急激に悪化しても、日本はうろたえるばかりだったかもしれない。
[核の傘当てになるか]
ただ、今回の日米両首脳の共同声明で、バイデン氏は核を含むあらゆる能力を用いた日本の防衛への揺るぎない責務を表明しているものの、日本を米国の核兵器などで守る拡大抑止について突っ込んだやり取りがあった形跡はない
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が、昨年11月の大陸間弾道弾ミサイル(ICBM)「火星17」発射を成功だとして「惑星最強のICBM保有国」(労働新聞)になったと狂喜乱舞している中で、米国の核の傘はどこまで当てになるのか。自国まで届く核兵器を持つ国とは戦いたくない米国が、日本が通常兵器ではなく核攻撃を受けたからといって、核で報復してくれるのか。
この点に関する疑問から安倍氏は昨年2月、米国の核兵器を日本の領土・領海に配備して共同運用する核共有について問題提起したのである。
日本が一歩前進しても、世界情勢もすぐに変わる。首相には非核三原則など過去の国会対策で生まれたお題目にこだわるよりも、現実世界と合理性を重視して国民の生命、財産、自由を守ってもらいたい。
反撃能力までの四半世紀
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【阿比留瑠比の極言御免】
岸田文雄首相と米国のバイデン大統領は13日(日本時間14日)の会談で、日本の反撃能力(敵基地攻撃能力)の開発と運用に向けた協力の強化で一致した。首相はこれに先立つ昨年12月16日、反撃能力保有を盛り込んだ新たな「安保3文書」の閣議決定に伴う記者会見で、こう述べていた。
「安倍晋三政権で成立した安全保障関連法により、いかなる事態でも切れ目なく対応できる体制がすでに法律的、理論的に整っているが、今回、あらたな3文書を取りまとめることで、実践面からも安全保障体制を強化することとなる」
[安倍氏のレールの上]
日本はようやく、空想的平和主義に自縄自縛となった状態を脱し、現実に即した当たり前の安保政策へとかじを切ったと感慨深い。
それと同時に、首相が言及した集団的自衛権行使を限定容認した安保関連法も反撃能力保持も、安倍氏の問題意識と危機感が敷いたレール上にあると感じる。
安倍氏は24年前の平成11年4月の衆院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会で、集団的自衛権行使の限定容認を主張し、16年後に実現させた。
同じく反撃能力についても、10年9月の衆院安全保障委で訴えていた。
「(日米安保条約5条には)弾道ミサイル攻撃への対応に際し、米軍は必要に応じ打撃力を有する部隊の使用を考慮すると書かれている。必ず報復するということではない。その場合、わが国が報復する能力を持っていなければ抑止力の穴があいてくる。防衛は穴があっては多くの努力が水泡に帰してしまう」
自衛隊は「盾」、米軍は「矛」という役割分担の限界と矛盾を、衆院当選2回の若手議員時代からずっと問うてきたのである。
安倍氏は小泉純一郎内閣の官房長官時代の18年7月にも反撃能力検討の必要性を指摘し、24年12月に首相に再登板した後もたびたび警鐘を鳴らしてきた。
そして令和2年9月の退陣時には「私の最後の仕事」(安倍氏)として安全保障政策に関する異例の談話を発表し、政府・与党として反撃能力保有を検討する方向性を指し示した。
安倍氏が先を見据え、四半世紀にわたってこのように強くリードし続けてこなければ、現在のように安保環境が急激に悪化しても、日本はうろたえるばかりだったかもしれない。
[核の傘当てになるか]
ただ、今回の日米両首脳の共同声明で、バイデン氏は核を含むあらゆる能力を用いた日本の防衛への揺るぎない責務を表明しているものの、日本を米国の核兵器などで守る拡大抑止について突っ込んだやり取りがあった形跡はない
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が、昨年11月の大陸間弾道弾ミサイル(ICBM)「火星17」発射を成功だとして「惑星最強のICBM保有国」(労働新聞)になったと狂喜乱舞している中で、米国の核の傘はどこまで当てになるのか。自国まで届く核兵器を持つ国とは戦いたくない米国が、日本が通常兵器ではなく核攻撃を受けたからといって、核で報復してくれるのか。
この点に関する疑問から安倍氏は昨年2月、米国の核兵器を日本の領土・領海に配備して共同運用する核共有について問題提起したのである。
日本が一歩前進しても、世界情勢もすぐに変わる。首相には非核三原則など過去の国会対策で生まれたお題目にこだわるよりも、現実世界と合理性を重視して国民の生命、財産、自由を守ってもらいたい。