わたなべ りやうじらう のメイル・マガジン
頂門の一針 6472号
頂門の一針 6472号
━━━━━━━━━━━━━━━━
EV見直しとHV復権の好機に
━━━━━━━━━━━━━━━━
高橋洋一
【日本の解き方】中国がレアアース磁石技術を「禁輸」か 調達先確保、精錬加工と日本が米国の弱み補う可能性も
中国政府が、ハイテク製品に使われる高性能レアアース(希土類)磁石の製造に関する技術の輸出禁止に向けて検討作業を進めていることが明らかになった。中国政府の輸出禁止・輸出制限技術リストで、レアアースの精錬や加工などの技術の輸出制限を盛り込む予定だ。
レアアースといえば思い出すのが、2010年に沖縄・尖閣諸島をめぐり日中が対立すると、中国側が対日輸出を一時停止したことだ。
政府と日本企業は1.中国以外での調達先確保2.国内での再利用推進3.省資源や代替原料の技術開発などの対策を行った。その結果、中国からのレアアース輸入量は半減、輸入の中国依存度も8割から5割に低下した。レアアース価格は暴落し中国では生産停止に追い込まれる企業も出た。
日本はレアアースの原材料確保についてよく短期間で成果を出せた。さらに、安倍晋三・菅義偉政権の時、中国以外の海外で行っていた精錬加工を日本国内でできるような対策もしており、相当の準備もできている。
一方、米国は自国での鉱山開発にレアアース生産に占める中国依存度は9割から7割まで下がった。しかし、自国で生産したレアアースの多くを中国に輸出して、現地で精錬してから輸入している。
日本はレアアースを使う高性能磁石の生産を得意としており、原材料のレアアースの確保は中国以外からの調達や再利用である程度のめどがたっている。米国は高性能磁石を搭載するハイテク製品が得意であるが、中国にレアアース精錬を依存している弱点がある。
今回の措置は、中国が米国に対抗するのが目的だろう。その点では、レアアースに対する準備をしてきた日本が米国の弱みを補える可能性がある。
レアアースが注目されるのは、電気自動車(EV)などでは強力な磁力を有する駆動モーターが必要だが、それにレアアースが欠かせないからだ。幸いにも、日本では、すでにレアアースなしでハイブリッド(HV)車用の駆動モーターを開発している。
もし、中国がEVでの覇権争いのためにレアアースを仕掛けるのであれば、世界のEV戦略を一部HVに変更すればいい。
日米でEV戦略を見直し、欧州連合(EU)が合成燃料「e─fuel(イーフューエル)」を使うエンジン車の販売を例外としたように、対中対策でレアアースなしのHVを認めることも検討してはどうだろうか。中国によるレアアース生産と精錬は著しい環境破壊を招いており、日本によるレアアースなしのハイブリッドは環境に貢献するとのロジックだ。
もともとHVからEV主導になったのは、欧米の自動車会社の戦略だった。
それに中国も乗ったのだが、ここに来て経済安全保障が重要になってきたので、その観点からEV戦略を見直す好機と思ったほうがいい。まさにピンチはチャンスである。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
EV見直しとHV復権の好機に
━━━━━━━━━━━━━━━━
高橋洋一
【日本の解き方】中国がレアアース磁石技術を「禁輸」か 調達先確保、精錬加工と日本が米国の弱み補う可能性も
中国政府が、ハイテク製品に使われる高性能レアアース(希土類)磁石の製造に関する技術の輸出禁止に向けて検討作業を進めていることが明らかになった。中国政府の輸出禁止・輸出制限技術リストで、レアアースの精錬や加工などの技術の輸出制限を盛り込む予定だ。
レアアースといえば思い出すのが、2010年に沖縄・尖閣諸島をめぐり日中が対立すると、中国側が対日輸出を一時停止したことだ。
政府と日本企業は1.中国以外での調達先確保2.国内での再利用推進3.省資源や代替原料の技術開発などの対策を行った。その結果、中国からのレアアース輸入量は半減、輸入の中国依存度も8割から5割に低下した。レアアース価格は暴落し中国では生産停止に追い込まれる企業も出た。
日本はレアアースの原材料確保についてよく短期間で成果を出せた。さらに、安倍晋三・菅義偉政権の時、中国以外の海外で行っていた精錬加工を日本国内でできるような対策もしており、相当の準備もできている。
一方、米国は自国での鉱山開発にレアアース生産に占める中国依存度は9割から7割まで下がった。しかし、自国で生産したレアアースの多くを中国に輸出して、現地で精錬してから輸入している。
日本はレアアースを使う高性能磁石の生産を得意としており、原材料のレアアースの確保は中国以外からの調達や再利用である程度のめどがたっている。米国は高性能磁石を搭載するハイテク製品が得意であるが、中国にレアアース精錬を依存している弱点がある。
今回の措置は、中国が米国に対抗するのが目的だろう。その点では、レアアースに対する準備をしてきた日本が米国の弱みを補える可能性がある。
レアアースが注目されるのは、電気自動車(EV)などでは強力な磁力を有する駆動モーターが必要だが、それにレアアースが欠かせないからだ。幸いにも、日本では、すでにレアアースなしでハイブリッド(HV)車用の駆動モーターを開発している。
もし、中国がEVでの覇権争いのためにレアアースを仕掛けるのであれば、世界のEV戦略を一部HVに変更すればいい。
日米でEV戦略を見直し、欧州連合(EU)が合成燃料「e─fuel(イーフューエル)」を使うエンジン車の販売を例外としたように、対中対策でレアアースなしのHVを認めることも検討してはどうだろうか。中国によるレアアース生産と精錬は著しい環境破壊を招いており、日本によるレアアースなしのハイブリッドは環境に貢献するとのロジックだ。
もともとHVからEV主導になったのは、欧米の自動車会社の戦略だった。
それに中国も乗ったのだが、ここに来て経済安全保障が重要になってきたので、その観点からEV戦略を見直す好機と思ったほうがいい。まさにピンチはチャンスである。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)