三鷹市にある禅林寺は太宰が生前自分の墓として望んでいた場所です。
晩年の作品『花吹雪』に以下の記述があります。
「この寺の裏には、森鴎外の墓がある。どういうわけで、鴎外の墓が、こんな東京府下の三鷹町にあるのか、私にはわからない。けれども、ここの墓地は清潔で、鴎外の文章の片影がある。私の汚い骨も、こんな小綺麗な墓地の片隅に埋められたら、死後の救いがあるかも知れないと、ひそかに甘い空想をした日も無いではなかったが、今はもう、気持が畏縮してしまって、そんな空想など雲散霧消した。私には、そんな資格が無い。」
太宰らしい文体ですね。
まさに彼の墓は鴎外の墓の斜め前に建てられています。

美知子夫人が太宰の気持ちを汲んでこの地を選んだのでしょう。
彼の故郷ではちょうど「桜桃」が最盛期でしょうね。

ボクが初めて読んだ太宰の作品は「人間失格」です。
中学三年生のころでした。
小説の内容など理解できないながら背伸びして読んでいたのでしょう。
次々と読み進み,高校生の頃に彼の終焉の地が三鷹市にあると知りました。
「桜桃忌」に何度か訪れようと思ったのですが行きそびれたまま半世紀近くが過ぎ,なぜか最近になって行ってみようと思い立ったのです。
人間って不思議なものですね。
昨年は三島由紀夫の没後50年ということでもう一度彼の作品を読んでみたのですが,今回は太宰の作品を読み返してみようと思っています。
しかし,このブックカバーはいかがなものか。

かつては白黒の不思議なデザインだったよね。