お久しぶりです。
何年ぶりの投稿になるのかというくらいの久しぶりの投稿です。
読書はぼちぼち続けていましたが、長文で書くのがめんどくさく、簡単に感想が書ける「読書メーター」に逃げていた今日この頃。
でも、たまには長文感想文を書きたいなと思いまして、久しぶりに書いてみたいと思います。
今回読んだのは『ゴールデンタイムの消費期限』(斜線堂有紀 著)の感想になります。
(1)簡単な概要
かつて、幼くして天才と呼ばれた少年少女がいた。彼らは各メディアに取り上げられるほど有名で、将来有望、その道の天才として輝かしい活躍をしていくはずだった。しかし、彼ら彼女たちは努力を続けたにも関わらず、壁にぶつかり、才能が通じなくなってしまう。
そんな彼らの才能を再生しようと政府が立ち上げたのが、才能再生プログラムともいえる「レミトン・プロジェクト」。
集められた各分野の天才と呼ばれた6名は11日間のAI「レミトン」とのセッションを通じて、自分の才能と向きあっていく。
(2)感想
様々なテーマを含んでいると思われる作品で、いろいろなことを考えさせられたり、自分自身と重ねたりしてしまう作品でした。
まずは、AIについて。
ビッグデータを収集したり、ディープラーニングなどで、日々進化しているAIですが、これに小説のプロットを考えさせたり、人が好む味付けを提案したり、人に感動を与えやすいような日本画の設計図を作ったりさせるというもの。
これについて、当然、それが芸術なのかという議論が出たり、AIの言う通りにすること自体がそもそもインチキだという様々な意見がありそうですが、私は、実はこれは肯定的にとらえています。
作中にあるように、設計図を作るのはAIとしても、それをもとに作る人間に実力がないと結局、それを生かせません。
料理もレシピがどれだけ優れていても、私の腕がないと本来の美味しい味にたどり着けないのと同じで、AIの指示通りに作って良いものを作るのも才能なんだろうと思います。
AIを利用してよいものができるのであれば私はどんどん利用して良いのではないかと思っています。もちろん、考えからAIに頼りたくないというのも一つの道だと思います。
そして、才能については共感するところが多かったなと思います。
私も、全然違う分野ですが、夢を追いかけて努力したことがあります。
はじめはその筋では大分よい成績をおさめ、自分には才能がありこのまま努力をすればいつかは夢が叶う。
そう思っていました。
ところが、夢を追いかけていく中で、はじめは優位に立っていた才能も夢に向かってライバルたちと競ってみれば、普通の人と変わらない、むしろ他の人と劣っているのだと思うことが多くなりました。
結局、夢は諦めて、全然違う道を選ぶことに一時なったことがあります。
私の場合、一回逃げたというのが良かったのかもしれませんが、幼いころから本当に天才と呼ばれ、その道でしか輝けないと思っている人にとっては、余計にその道から逃げるということができないのだろうなという気持ちが痛いほどにわかりました。
私にはこれしかない!というのはもはや呪いみたいなものでないかと改めて思わされました。
才能があり、努力をしてもいつかは壁にぶつかるということを暗に示されているように思いますので、ある意味才能という考え方については厳しい姿勢を保ちつつ、壁にぶつかったとき、スランプに陥った時、自分に才能がないと気が付いたときには、どういう道があるのか、そのまま突き進むのか、立ち止まるのか、逃げるのか、別の道にいくのかという選択肢のどれをとっても、自分が決めた道に間違いなんてないだよと優しく教えてくれる作品でもあるかと思います。
才能との付き合い方、頭打ちになったときの心の落ち着け方など、頑張って夢を目指したり、更なる飛躍を目指して頑張っている人にこそ、読んでいただきたい作品だなと思います。
いつも良いことばかりではなく、もうこれ以上頑張れない、活躍を見込めないなと悟った時に、自分の努力と才能にいつか折り合いをつけていかないといけないわけですから。