「難しい話をしても仕方がない。ともかく最初は描くこと。成功を目指しながら、数々の失敗を大胆に繰り返すこと。そして学ぶこと。学ぶことを楽しむこと。失敗から学ぶことは多いからね」
2年前に読んで以来、何回も読み返してしまう作品です。
この作品の感想をどこまで伝えきれるのかはわからないですが、ここ2年の私の1番のオススメ作品ですので、よろしければ読んでお付き合いください。
(1)あらすじ
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。
※あらすじはアマゾンより抜粋しております。
(2)感想
水墨画のド素人が才能だけでコンクールに挑むというあたりがライトノベル調だなと思うところなのですが、主人公のおかれた状況でしか描けない線があるというところにまず引き込まれてしまいました。
著者が水墨画に精通しているということもあり、水墨画の表現がとにかく鮮やかで、一筆、一筆に墨の香りまで漂ってきそうなくらい鮮やかです。
水墨画を通じて、自分自身と向き合っていく主人公の描写も面白いですが、主人公の友人たちなどの登場人物も味わい深い良いキャラで非常に読みやすい作品だと思います。
ところどころにちりばめられている、水墨画の師匠湖山先生の言葉や、主人公の気づきに、普段の自分自身と重ね合わせてもっと基本からやり直して頑張らないとなと思ったり、肩の力を抜くことも大事だなと思ったりしました。
物語が面白いだけでなく、普段の自分自身の仕事への向き合い方に気付きやヒントをもらえるというのも良いなと思います。
いろんな心に刺さる言葉があふれている作品で、恵まれた環境とはお世辞にも言えない主人公を見守りながら、自分自身も読後は何か大切なものをもらったなと思えるそんな作品です。
私は、この作品に出合えて本当に良かったと思っています。