母を亡くし、父も母の看病と子育てで精神的に動けなくなったため、子育てができなくなったことから、母の実家に一時的に預けられた小学6年生の主人公の翔。
彼が転校した先で出会った母からネグレクトを受けている大也と親から虐待を受けている美波が出会う。
そんな3人のサーフィンを通じた友情と彼ら自身の親たちと向き合う物語です。
ポプラ社小説新人特別賞の受賞作品である本作品は、作者のデビュー作とは思えないほど、デビュー作としては衝撃作じゃないかと思います。
本作品の特徴だと思うところは、その紡がれる文章だと思います。
ここ数年、特に読んでいて作家さんによっては独特の言い回しや描写があると思います。
本作品の文章は?と言われると、恐らくひねりというか言い回しが多いとかそういうことは一切なく、文章だけで言えば、誰でも表現できる、何なら文章だけなら私でも書けるくらいのものだと思うような文章が並んでいます。
しかし、間違いなく、本作品は作者しか書けない、表現できないだろうなと思うほどに読みやすく、頭に文章が入ってきて、その場の光景が頭の中に映ってくるくらい、この表現しかあり得ないと思いました。
サーフィンやってる光景や海、そして登場人物たちの負の感情までリアルに思い描けそうなくらいに。
お陰であっという間に読めてしまいました。
そして、本作品はサーフィンという競技がうまく使われているなと思いました。
サーフィンは私はやったことはなく、東京オリンピックをテレビで見た程度のことしか知識がないのですが、サーフィンをこんなふうに使うんだと思いました。
子供は親を選べない。親ガチャと言われればそれまでですが、子供は親に振り回されざるを得ないのも真実かと思います。
ただ、サーフィンのようにどんなにその日に良い波が来なくとも、どんな波でもそれなりに波を乗りこなさないといけない。
波を乗りこなすということは自然に立ち向かうということだけじゃなく、自然に対してどんな風に折り合いをつけるのかとちいうことも含まれているということ、そして、そんなに大した波じゃなくても、命を脅かすような波がきても、その波に乗るのはあなた次第と言われているような気がしました。
そして、自分の幸せは自分で決めるということで、決して他人が決めるようなものじゃない。
私も今ある波を見つけてその波をのりこなせばそのうち良い波がくる。
そんなことを言われたような気がする、そんな作品だなと思いました。
※ブクログに掲載した感想を転載しております
今でも思うのは、幸せとは何か。それは誰が決めるわけでもなく自分で決めるもの。
そして、良いこともあるし、悪いこともある私たちの日々の生活でどうやって折り合えるのかを見つめ直す、そんな作品だと思います。