先日、ある老人ホームから病院送迎の依頼予約が入っていたのだが、その方のお名前が大変に珍しい苗字なので、「もしかしたら昔し働いていた会社の先輩なのではないだろうか…」と思いつつお迎えの日がやって来たのだ。たまたま早く到着した為、施設の駐車場で予約時間の5分前まで待機していたら、若い女性が歩いて来られて「今日はありがとうございます△△です。」とご丁寧にあいさつをされた。この日の段取りを打合せして、「失礼かもしれませんが、お父さんの以前のお仕事は…?」とお尋ねしたら「〇〇交通でタクシー運転手してました。」とおっしゃった。すかさず「門司の⁈」「そうです ❣ええ~ ご存知ですか?」「やっぱり 私も同じ営業所にいました。大変に親しくさせてもらってましたよ 」「信じられない ❣ 覚えていたら大変喜びますよ ❣ …でも…認知症なので覚えてないでしょうね…。」「そうなのでしたか…。」(内心、ガックリ…)
「でもお願いします ❣ その話を本人にしてやってください。もしかしたら、それがきっかけで記憶が戻るかもしれませんから ❣❣❣」「わかりました。」と、話しが盛り上がるうちに時間が来ていた。施設内に入ると、紛れもなくご本人であった。「△△さん、オレオレ〇〇だよ。〇〇交通の門司営業所で一緒に働いていた。覚えてないかなぁ。」少し笑顔になって「いやぁ覚えてない…。」その頃の思い出話をいくつか話してみたけれど、「…覚えてない…。」自分としては、すごく懐かしく当時は結構仲良くしてもらっていたので悲しくなってきた。
実は先日も認知症がかなり進行している女性の利用者さんとお話しをしたことが有った。ご主人から「今日は酷く、絶対に病院に行かないと言ってきかないので、あなたが説得してもダメなら諦めます。」と言われていた。「△△さん、お迎えに来ましたよ。〇〇先生から言われてきたので、さあ行きましょう ❣」「あんた誰。あんたなんか知らない。私は行きません 」「〇〇先生が待ってますから行こうよ。」「いいや、今日は旦那さんが帰ってくるから行かないの。」(旦那さんは横にいるのに…)「こんな男は知らない。勝手に人の家に入って来て、あんたもこの男に入れてもらったのじゃろうが ❣ あんたどこから来たのか?」「家は近くよ、下関市内よ。」「そんなことあるか。下関は私がいるから下関になったのだ。」「はぁ、それはないでしょう。」「あんた知らないね、私の旦那さんは天皇陛下だよ。もうすぐ帰ってくるからどこか行きなさい ❣」
(こりゃあダメだ、どうにもならない。 しかしご主人があまりに可哀そう過ぎる…。) 結局、その日は病院に連れて行けずキャンセルとなっていた。この方は、容態のいい時は大変に物静かな品の有る奥様なのだ。ご主人様の残酷なほどの辛さが察せられて哀れでもあった。
その時と比べれば、この人はかなり落ち着いている。なんでもご家族の顔と名前はしっかりと覚えているとのこと。単に忘れているという程度だが、案外古い記憶は残っているらしい。当時、可愛がってもらった者としては辛い…。元々、かなり厳格な人であっただけに涙が出そうになった。娘さんとのお話しで、今後も使って頂けるようなので焦らずゆっくりとお付き合いをさせてもらうことになった。
それにしても認知症というものは恐ろしい…。
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