竈猫氏の山の牧場の話を続けます。
確かにサバゲ―の場所としてあの場所は良いかもしれないけど竈猫氏が「何があっても知らないよ!」と言うと、「何かあっても退治してやるって」と友人と一緒に来ていた自〇隊の人が言いました。高校時代の友人が自〇隊で空てい団に入っていて、その繋がりもあって、この本業の人達も来ていたそうで、どうやら今回、友人と一緒に来ていた人の半分はこの本業の人達でした。
車で移動し山の牧場に着くと、早速チーム分けをして、友人らは何やら箱の中から妙な道具を取り出し始めました。「何それ?」と聞くと「いや、実はこれを使いたかったんだよ」と言い、彼等が取り出したものを見るとそれは暗視装置でした。どうやらこれを使いたいが為に夜中にサバゲ―をやる事にした様でした。しかも二種類で四台。それを2台づつ分けて三十分後にスタートという事でチームごとに分かれました。
ひとチームは牧草地側、そしてもうひとチームは廃墟側からスタートという事になりました。竈猫氏は牧草地側のチームでしたが、正直、この時は帰りたかったそうです。そして装備を確認し、暗視装置を付けてこれからスタートという事になりました。
この暗視装置はそれなりに高価なものですが、当時、ソビエト製のものが安く出回っていたので、それを購入したそうです。北海道の港町にはロシア人も当時は多くいたので、そこから入手したみたいでした。大体、一台三万程度であったそうです。この暗視装置はスターライトスコープという物で、実際に見てみるとかなり良く見えたようでした。またイスラエル製の赤外線の暗視装置を持ち込んでいた奴もいた様で、そちらの方は一台二十万もする高価なものですが、かなり良く見えたそうです。
するとイスラエル製の赤外線暗視装置を使用していたメンバーが変な感じになっていました。そのメンバーが「お前の方は何か映っていないか?」と聞くので、ロシア製の方は何もお前らしか映っていないと言うと、「お前、ちょっとこっち見てみろ」というので、そのイスラエル製の暗視装置を覗いてみると、牧草地で数日前に大雪が降っていたのですが、牧草地の根本あたりに、所々まるで逃げ水の様な何者かが畝って見えていたのです。ロシア製の暗視装置では何も見えないのですが、明らかに赤外線の暗視装置では何かが居るのが見えたのです。しかもその数が沢山見えていて、自分達の周囲を取り囲み始めていました。それを見た本職の人達が「おい、何か俺たちは取り囲まれているぞ」と言い、囲い込みの範囲が徐々に迫ってきているようでした。「おい、これはどう見ても罠だろう」という事を言っていたので、竈猫氏は「あのー、本職の皆さん。この時はどうするんですか?」と聞くと、本職の人は「お前ら、剣付け」と言いました。要は銃剣を着けろという事でしたが、竈猫氏はそんなモノはありません。でも本職の人は本当にガス銃の先に銃剣を着け始めたそうです。「考えてもどうしようもない。奴ら(廃墟側のメンバー)と合流しよう!」という事で、一斉に廃墟目指して走りだしました。一人が「声出せ!」というので、みな「ワー!」とか「ギャー!」と大声を出して走りました。
廃墟に近くなると、何やら廃墟側でも「ワー!」とか「ギャー!」と声を出して大騒ぎになっていました。しかもガス銃を乱射している音まで聞こえるのです。何かに向って。そして廃墟側のチームとかち合うと「何だ!お前ここ!!」と竈猫氏は言われたそうですが、そんな事さっき言ったじゃんと思ったそうです。「どうした?」と廃墟側のメンバーに聞くと「何か変なのが一杯いる」と牧草地側のチームと同じ事を言っていたのです。「お前らの方はどうした?」と聞かれたので「うちらの方も(変なのが)一杯いる」と答えました。要は牧草地と廃墟側ともに囲まれた状況になっていました。「もうこうなったら、藪を突っ切るぞ」という事で、全員で夜中の闇の中、藪をかき分けかき分けして、ホウホウの体で道路にでて、車に乗って逃げだしたのです。
しかしこのまま自宅に帰るのも嫌だったので、市街地中心で駅の近くにあるファミレスへと皆で立ち寄りました。夜中のファミレスに迷彩服を着た男十人が入って行くのもかなり異様な光景だったと思いますが、今から考えたらよく警察を呼ばれなかったと思ったそうです。そして全員でホットコーヒーを注文し、コーヒーを飲んだあとに出た言葉は「何なんだ?あそこは」というものでした。そこで竈猫氏は中学の時に体験した事などを説明し、廃墟側にいた人達に「いったいあなた達は何見たの?」と聞きました。すると彼らはチームに分かれ、廃墟に行き準備をしていたら、同じく赤外線の暗視装置を着けていた奴が「あーこれ良く見えるね」と周囲を見回して歩いていたそうです。そして廃墟の処でピタッと立ち止まり「うわ!!!」と腰を抜かしたそうです。「え?何」と他のメンバーの肉眼では見えなかったそうですが、その赤外線暗視装置を付けたメンバーに聞くと、彼が言うにはガラスは無いのですが、その廃墟の窓が「ブレて見えた」と言うのです。要は窓の処から黒いトコロテンの様なものがニューっと出て来たと言い、そしてそれがドバドバと出て来て、足元にまで来たので腰を抜かしたというのです。他のメンバーも赤外線暗視装置を着けてみると、それが見えたのでパニックとなったという事でした。竈猫氏がその窓の場所を確認すると、階段後ろの例の小部屋の近くの窓でした。つまりあの小部屋にあった斜め土管の様な穴から何者かが出て来たのかもしれないと思いました。
「もうこんな怖い処は二度と行かん」「こんな処に連れてきやがって、覚えておけよ」と言われ、その夜は解散しました。
ちなみにこの話をする中で、竈猫氏が思い出した事がありました。それは中学校の時に廃墟の居間に侵入した際、畳の下に敷かれていた新聞を見ると1983年の新聞だったそうです。その後、地元の図書館で調べると、1983年にその牧場では確かに一家心中があった事が確認できたそうです。
まだまだこの山の牧場の話は続きます。
(続く)