竈猫氏の「山の牧場」の話は、その牧場が破壊され埋められた事で終わりませんでした。この話はもう少し続きます。
竈猫氏はこの当時、地元でくすぶっていたそうですが、怪談好きの性もあり、怪談話のサイトなどをネットで徘徊していました。するとどう見ても、その「山の牧場」に関する書き込みを発見しました。ただその話は牧場で何かを見たという話ではなく、異質な話でした。
この書き込みをした人は、どうも道に迷ってしまったらしく、困り果てていたところ「”自”の付く商売の人(自衛隊)」の人達がいたので、丁度良いや、道を聞こうと思い、その人達の処へ行こうとしたら、彼氏に「行くな!」とめられたそうです。そしてその自衛隊の人達を見ると、装備は演習の最中の様ないでたちだったらしく、彼氏は何故、この時に彼女(書き込みの人)を止めたかと言うと、彼氏曰く。通常、自衛隊は演習でも事故防止の為、銃器に弾倉は付けないそうですが、この時の自衛隊員は全員が銃器に弾倉を着けていたから止めたと言うのです。また戦車も見たとありました。
「あんな所で自衛隊が演習やるんですかねぇ」とあったのですが、どうも書き込み内容からすると、山の牧場の場所の様に竈猫氏は思いました。これを読んだ竈猫しは「やっぱあそこは関わっちゃまずいんだろうなぁ」と思ったそうですが、このサイトは一週間後に跡形もなく消えてしまいました。
実はこのサイト、別にアプリを使ってチャットをするという場所があって、そこで竈猫氏は「あの自衛隊の話の場所で、前に山の牧場という話が合って云々」と書き込みをしていたそうです。そしたら割とチャット内で好評になり「今度集まって、リアルに怪談会をやりませんか?」という事になったそうで、盛り上がった結果、古びた温泉で怪談会をやる事になりました。
そして当日、竈猫氏は浮かれて温泉街へと出かけていき、旅館へ向かいました。古びた旅館に入り「すみませーん、今日〇〇の会で予約が入っているかと思いますが。。」と言うと、少し旅館の人の反応が変で「はぁ・・・」みたいな感じで首を傾げていたました。そして「お部屋に御通しします」と言われ、案内されたのが、大広間でやると言っていたのに小さな個室(和室)でした。
それで荷物を置いて、時間もあったので大風呂でひと風呂浴びて、部屋に戻ってくると、旅館の人が「お食事の準備が出来ていますので、大広間の方で」と声をかけてきました。「食事つきで怪談会とは豪華な事するな」と思い大広間に行くと、大広間には人が三人しかいませんでした。そしてこの三人も、近所で土方仕事していて、この旅館を宿泊所にしている様な人にしか見えません。「え?ここでやるの?」と竈猫氏は思ったそうで、旅館の人に「ここで(怪談会)〇〇の会をやるんですか?」と聞くと、旅館の人は「いや、無いですよ」と答えたのです。竈猫氏が「でも私は竈猫(本名)で予約を・・・」と聞くと「ええ、予約は給わっています」と言うので、状況が判らなくなり混乱してしまいました。
そしてご飯を食べで部屋に戻り、予約が入っているのであれば呼びに来るのかもしれないと、部屋の中でボーっとしていたら、ドアがノックされたので「怪談会の呼び出しかな?」と思い出てみると、50代位の三つ揃えをきっちり着こなした普通の叔父さんがそこに立っていて「いやー、竈猫さん。お待たせしてすいませんね」と挨拶したのです。ラフな会にも関わらず三つ揃えのスーツを着ている事に違和感を覚えたのですが、その叔父さんは「では、私の部屋で」と言うので、てっきり竈猫氏はこの叔父さんの部屋で怪談会をやるものだと思い付いて行ったそうです。
案内されたのは竈猫氏の部屋と同じ広さの和室で、これを見た時「あれ?あんまり集まんなかったから、こんな部屋にしたのかな」と思ったそうで、「もしかして人があんまり集まらなかったのですか?」と竈猫氏はその叔父さんに聞きました。すると叔父さんは「まぁまぁまぁ。。」と部屋の中に招き入れ、ビールを一杯御馳走してくれました。竈猫氏は状況を図りかねていると、この叔父さんは言いました。
「すいません、竈猫さん。うそです」
と言いました。「え?」と竈猫氏が思うとその叔父さんは言いました。
「怪談話の会なんですが、あれは嘘なんです。」
これを聞いて竈猫氏は更に混乱したそうですが、その叔父さんが言うには「あなたの山の牧場の話、とても興味がありまして、ぜひサシで聞きたいと思いました、ごめんなさい」という事でした。竈猫氏は「えー!!そんなのありですか?」と言ったのですが、結局ビールを飲まされてある程度、話をしたそうです。すると叔父さんは「あー、あそこはそう言う場所でしたか、怖いですねー」と言いながら「ところで竈猫さん、貴方見ましたよね?」と聞いてきました。「え?何をですか?」と竈猫氏が言うと叔父さんは「いやいや、貴方はあそこ(山の牧場)行ったんでしょ?」と言い「何回も行っているんですよね?」と続け「じゃあ貴方は何か見ていると思うんですけど」と聞いて来るのです。竈猫氏はビールがあまり好きではなく、酔いも回ってきましたが、この叔父さんの会話は、何かの話につけてこの事をループで聞いてきたそうです。
結局、その晩は夜中の2時までこんな会話を繰り返し、もう疲れて来たので竈猫氏は自分の部屋に戻る事にしました。部屋に戻ると竈猫氏はカギをかけて一晩、部屋の中で震えていました。
翌朝、大広間で竈猫氏は朝食を取っていたそうですが、そこにまた三つ揃えのスーツを着こなした叔父さんが現れ「いやー、今回はすみませんでしたね。また何か楽しい話があればぜひ」と話かけてきました。結局、その叔父さんの運転する車で駅まで送られて別れたそうです。
東京に帰った後、知人の警察官に会いバカ話をしていた時、この温泉の話をその知人にしたところ、知人が言うには「その話し方は典型的な公安の話方だよね」と言われました。竈猫氏は「公安ってあの?」というと「そう、警視庁10Fに居る人達」と笑って答えていました。知人からは「何やったの?竈猫さん」と言われたそうです。
一体あの叔父さんは何を聞きたかったのか、何を知りたかったのか、竈猫氏は未だに理解出来ない状況で、別の意味であの場所に何があったのか、もしかしたら自分自身が忘れている事があるのか、未だに釈然としないそうです。またネットのチャットで話をした人達は一体何者だったのか、そこも未だに判らないそうです。
最近になり、帰省した時に山の牧場の場所に知人に連れて行ったもらったそうですが、その知人が「これ以上、もう先に行きたくねー」と言うので「何で?」と聞くと「ほら、監視カメラがあっちこっちについているじゃん。お前、ヤバい場所に俺を連れて来てねーか?」と言われました。
また他の知人にも「良いニジマスの釣れる場所があるから見て来てくれ」と嘘を言い、場所を教えたところ、その知人から夜中に怒気がこもった電話があっり「お前、俺をどこに案内した!?」と言ったのです。聞くとそこには塀が立てられていて周囲が監視カメラだらけだったとの事でした。
以上が竈猫氏の「山の牧場」の話となります。
(続く)