あるところに、ニーノという名の男がおりました。
ニーノは、教会で見た絵の中に居る美しいある天使に憧れていました。
その天使はJunという名で、神様から大きな信頼を得ているのだ、と教えてもらいました。
長い睫毛に縁どられた鳶色の瞳は、母のように慈愛に満ちた眼差しでこちらを見つめる。
白磁の肌は触れてみたくなる誘惑をもち、
ほんのり色ずいた唇は固い意志の表れか、
きりりと結ばれていて、観る人の誰もが魅了されていました。
いつしか人びとはその天使を大天使とよび、その絵を見る度に幸福感を味わい、感謝するようになりました。
ニーノは、美しい大天使が、町の人々の愛されているのが誇らしい一方で
一つの欲望が芽生えてきます。
ある日、大天使を見つめるニーノに黒ずくめの小柄な男が近づきました。
「ニーノさん」優しげに語りかけてきた男はジッとニーノを見ただけでしたが、
自分の目の奥に隠す想いをを見つけられたようで、ニーノは慌てて立ち去ったのでした。
悪魔は静かに、だれにも気付かれず、待っていました。
人々から幸福を奪い、憎しみと悲しみ、嫉妬が渦巻く空気に飢えていました。
用意周到に準備を進めて
嵐の夜に、ニーノに囁きが聞こえてきます、今日はチャンス…
不思議なほど速く身軽に体が動き、ニーノは大天使の絵の前に立っていました。。
更に、あっという間に、ニーノは部屋に戻っていました。目の前には大天使が。
沸き立つ喜びにニーノは我を忘れ、大天使に語りかけながら過ごす日々が始まったのでした。
町では教会から大天使の絵が消えた事で騒ぎになりましたが、
二ヶ月もすると、思い出したように口に登る程度になりやがて未解決のまま忘れられて行きました。
to be continued