桜庭支配人の現場一直線 第十二話
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・取るのでなく流れを作る
こうして 宴会のフォローの訪問を続けて1ヶ月ほどすると、徐々に宴会の申しこみが桜庭支配人あてに入りだした。
そして幹事さんに挨拶に行ってお申し込みいただいた宴会のメニューや進行内容について打ち合わせに行くと、何回も利用していただいている幹事さんから逆に 何かもっといいメニューを提案してくれ、進行内容に提案をくれ、司会をやってほしい、等々の依頼が出るようになった。
桜庭は自分がベテランでもなく経験も無いので、会社に帰って聞いてきますとその場を取りつくろって帰ってきたが、例の後藤部長に相談すると
「それくらいのことは、自分で解決してください。」
とあっけなく断られてしまった。
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これは素直に現場に聞いてみよう、とはらをくくって
桜庭はしばらくのあいだ 知り合いの他式場の支配人たちに電話をかけて、宴会の演出アイテムを教えてもらったり宴会グッズを貸して貰ったり、直接宴会を見学に行ったりと東奔西走する毎日となった。
サルのぬいぐるみを着て司会をしたり、手品を覚えて自ら披露したり、自力で出来る努力はすべてやる覚悟で挑戦した。
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「支配人がサルになった」
「今日は金魚を飲んだ」
「女装してお酌をしていた」
等々 社内の女性社員のあいだでは話題に事欠かない存在となっていった。
しかし桜庭本人はまったくの本気だった。
周囲の評判など気にしている余裕は無かった。
その日も桜庭はサルのぬいぐるみを着て司会をし、お客様が帰るときにマイクロバスまでお見送りにサルのままで挨拶にきると、いつに無く、お客様が喜んでいる。
後ろを見ると バンケットの社員全員出てきて整列しているではないか。
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バスがスタートするとサルと社員はしばらくバスのあとを追って、隣の葬儀屋を横切り右折して見えなくなるまで手を振り続けた。それから、この式場では宴会後も結婚式の終わった後も、この風景が当たり前の光景となった。(サルが続いたわけではありません)
この日 この宴会に参加していた白石さんは、もう67歳になって仕事を引退していたが、地元では有名な人だった。
N生命保険の営業マンのトレーナーとして10年以上 現場の営業マンの育成を手がけ、日本一の営業マンを5年間連続でこの地域から排出した辣腕教育者として、保険業界では知らない人はいない存在だった。千葉県内にはこの方の教え子が2000名以上活躍しており、営業に関して多くの著書も著していて、公演会も頻繁に開催していた。
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この日もN生命保険の営業研修会を昼間開催した後、宴会をここに申し込んで桜庭が一切の進行を仕切ったのだった。
白石トレーナーが次の日に桜庭に電話を入れて、少しお話ししたい、と午前中にやってきた。「桜庭さん、貴方はどうしてそんなに一生懸命にお客様に投入できるんですか。?」
「、、、、、、?」
桜庭は 自分は経験も何も無いのでお客様から聞いて、その要望どおりやっているに過ぎないことを伝えた。「何か、特別な教育を受けているんですか?」
「ハイ」といって桜庭は石原マネージャーを呼んで同席させた。
「この人から沢山教わりました。」
「やだー支配人 恥ずかしいじゃないですか。まるで支配人をいじめたみたいで。」
そして率直に今まで桜庭がここに来て感じてきたこと、社員とのかかわりの中で悟ったことをそのまま言葉にした。
しばらく黙って聞いていた白石トレーナーは、
「もしうちの近くを通られる時がありましたらぜひお寄りください。いろいろお話したいことがあります。」
といって その日はそのまま帰っていった。
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・取るのでなく流れを作る
こうして 宴会のフォローの訪問を続けて1ヶ月ほどすると、徐々に宴会の申しこみが桜庭支配人あてに入りだした。
そして幹事さんに挨拶に行ってお申し込みいただいた宴会のメニューや進行内容について打ち合わせに行くと、何回も利用していただいている幹事さんから逆に 何かもっといいメニューを提案してくれ、進行内容に提案をくれ、司会をやってほしい、等々の依頼が出るようになった。
桜庭は自分がベテランでもなく経験も無いので、会社に帰って聞いてきますとその場を取りつくろって帰ってきたが、例の後藤部長に相談すると
「それくらいのことは、自分で解決してください。」
とあっけなく断られてしまった。
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これは素直に現場に聞いてみよう、とはらをくくって
桜庭はしばらくのあいだ 知り合いの他式場の支配人たちに電話をかけて、宴会の演出アイテムを教えてもらったり宴会グッズを貸して貰ったり、直接宴会を見学に行ったりと東奔西走する毎日となった。
サルのぬいぐるみを着て司会をしたり、手品を覚えて自ら披露したり、自力で出来る努力はすべてやる覚悟で挑戦した。
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「支配人がサルになった」
「今日は金魚を飲んだ」
「女装してお酌をしていた」
等々 社内の女性社員のあいだでは話題に事欠かない存在となっていった。
しかし桜庭本人はまったくの本気だった。
周囲の評判など気にしている余裕は無かった。
その日も桜庭はサルのぬいぐるみを着て司会をし、お客様が帰るときにマイクロバスまでお見送りにサルのままで挨拶にきると、いつに無く、お客様が喜んでいる。
後ろを見ると バンケットの社員全員出てきて整列しているではないか。
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バスがスタートするとサルと社員はしばらくバスのあとを追って、隣の葬儀屋を横切り右折して見えなくなるまで手を振り続けた。それから、この式場では宴会後も結婚式の終わった後も、この風景が当たり前の光景となった。(サルが続いたわけではありません)
この日 この宴会に参加していた白石さんは、もう67歳になって仕事を引退していたが、地元では有名な人だった。
N生命保険の営業マンのトレーナーとして10年以上 現場の営業マンの育成を手がけ、日本一の営業マンを5年間連続でこの地域から排出した辣腕教育者として、保険業界では知らない人はいない存在だった。千葉県内にはこの方の教え子が2000名以上活躍しており、営業に関して多くの著書も著していて、公演会も頻繁に開催していた。
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この日もN生命保険の営業研修会を昼間開催した後、宴会をここに申し込んで桜庭が一切の進行を仕切ったのだった。
白石トレーナーが次の日に桜庭に電話を入れて、少しお話ししたい、と午前中にやってきた。「桜庭さん、貴方はどうしてそんなに一生懸命にお客様に投入できるんですか。?」
「、、、、、、?」
桜庭は 自分は経験も何も無いのでお客様から聞いて、その要望どおりやっているに過ぎないことを伝えた。「何か、特別な教育を受けているんですか?」
「ハイ」といって桜庭は石原マネージャーを呼んで同席させた。
「この人から沢山教わりました。」
「やだー支配人 恥ずかしいじゃないですか。まるで支配人をいじめたみたいで。」
そして率直に今まで桜庭がここに来て感じてきたこと、社員とのかかわりの中で悟ったことをそのまま言葉にした。
しばらく黙って聞いていた白石トレーナーは、
「もしうちの近くを通られる時がありましたらぜひお寄りください。いろいろお話したいことがあります。」
といって その日はそのまま帰っていった。
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