2005年の邦画。1988年に刊行された藤沢周平の小説を映画化。監督は黒土三男。出演は市川染五郎、木村佳乃、緒方拳、原田美枝子、今田耕司、ふかわりょう、他。
原作も面白く読んだ。藤沢修平の代表作。ドラマ化もされそちらも評判が良い。
父は緒方拳、母は原田美枝子。家禄は28石。普請組屋敷で暮らす。どんな広さの屋敷かというと過去に読んだ本のメモから引くと、幕府の例でいうと百石以下の旗本屋敷で4LDKくらいで実感がわく広さ。属する組の大縄屋敷に宅地を与えられる。屋敷の広さは200坪程度。ここでは28石だからもっと楚々としている。2DKか3DKくらいの広さ。収入は玄米換算で70俵ほど。『武士の家計簿』 では米1石=「現代感覚(現代の賃金から換算)」27万円 とあり28石は756万円となるが、「現在価値(現在の米価から換算)」すると5万円 とあり140万円になると書いてあって幅が大きい。28石は28両、1両が6万円とする資料もあり、これだと168万円。暮らしぶりは大変つましい。緒形拳が朝出仕する際の裃の張りは無くそろそろ新調したい。妻の原田美枝子に「我が家にはそんな余裕はございません」とはっきり言われてしまう。
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季節は夏。朝、主人公の文四郎は家のそばを流れる川で顔を洗う。父の緒形拳は朝飯前に庭に作った菜園から茄を収穫する。選んだ食事の場面は朝食の場面。先ほどの茄はどう調理されたかは出てこない。小説では冒頭で住み方について書いてある。川があること、そこを便利に利用して住んでいること、つましい生活であること。それが映画の冒頭でよく表現できていると思った。
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主人公の文四郎は養子。15歳。ある日、父助左衛門(緒形拳)は藩に反逆したという罪で切腹を命じられる。龍興寺で父と面会し短い会話をしたのが生きている父に会った最後となった。
一人、車を引いて父の亡骸を引き取りに来た文四郎。町の人々はその姿を冷ややかに見る。父の亡骸を車に乗せ、それを文四郎が一人で引くのだが屋敷に戻る坂道では一人では手に余る。それを手伝ってくれたのが燐家に住むふくという少女だった。車を押しながら一緒に涙を流してくれた。ふくとは幼馴染で毎年の夏の熊野神社の夜祭り見物は一緒に行く仲だった。
父の死後、禄は減らされ文四郎と母は組屋敷を取り上げられ長屋暮らしになる。そのころ、ふくは江戸屋敷勤めになり江戸に行くことが決まった。ふくは文四郎に挨拶に来たが文四郎とはすれ違いになり会えないまま。父が藩の内紛に巻き込まれ切腹を命じられたと知ったころ文四郎は復禄の沙汰を受けた。そして「ふく」は藩主のお手がつき跡継ぎを生み「お福」と呼ばれていたが藩の世継ぎに絡む政争に巻き込まれ江戸から逃げ「金井村のはずれにある」欅御殿に隠れていた。
文四郎の復禄はふくとその子の暗殺のためだった。文四郎は復禄を実現した家老の命に背きふくを守ることを決意する、、、、、。
時は流れ文四郎は郡奉行になっていた。私生活では家庭を持ち二子の父になっていた。ふくは一子が世継ぎに決まりこの年の秋には尼寺に入ることが決まる。あの事件から会うこともなかったふくから手紙が届き文四郎はふくに会いに出向く、、、というお話。