古賀春江といえば「海」。
図版を見たのは、小中学校時代の教科書だったと思います。
昔風の水着を着た女性。ありえない、というような場所に立っています。
その不可思議な印象は強烈で、記憶に刻み込まれました。
実物を見たのは、社会人になり、初めて訪問した東京国立近代美術館の常設展示にて。
日本の近代画家は、西洋の二番煎じ的な作品が多いなあ、興味を持てないなあ、というのが印象でした。
「海」に対してということではなく、その周辺に展示された他の画家の作品群も含めての話ですが。
古賀春江に対しては、その程度の思いだったのですが、今回の展覧会はなぜかしら是非行きたいと。
「海」のような作品が他にもあるのかなあ。
認識したのは、男性であること。奥様の名前が「好江」さんであること。
38歳と若くして亡くなったこと。
画風が著しく変遷していること。「海」はそのなかで誕生した特別変異的な作品であること。
お気に入りの展覧会となりました。
第1章 センチメンタルな情調 1912-1920年
1912年に福岡から上京。専ら水彩画を描いている時代。「好江夫人」の肖像もあります。
第2章 喜ばしき船出 1921-1925年
油彩を本格的に開始。この時期は、表現主義やキュビズムの影響を受けた作品を描いています。
1室目は1921-23年制作の作品で、かなり好みの作品が多いです。
二科賞受賞作品
「埋葬」(浄土宗 総本山知恩院)
「二階より」(個人蔵)
海辺シリーズ
「海水浴」(和歌山県立近代美術館)
「海水浴の女」(石橋財団石橋美術館)
「海女」(石橋財団石橋美術館)
その他には、
「縁側の女」(東京国立近代美術館)
「母子」(東京国立近代美術館)
「農夫の家族」(東京国立近代美術館)等
2室目は、1923-25年制作の作品が並びます。
くすんだ強い色彩や強くデフォルメされた人物が目立つ1室目と比べると、穏やかになります。
「室内」(個人)
「将棋」(東京国立近代美術館)
あたりが目を引きました。
第3章 空想は羽搏き 1926-1928年
クレー時代。興味がわかない。
第4章 新しい神話 1929-1933年
突き抜けています。この2作品。
「海」(東京国立近代美術館)
「窓外の化粧」(神奈川県立近代美術館)
いろいろな雑誌や絵葉書の写真から引用したイメージを組み合わせて作っています。
引用元の雑誌や絵葉書も展示されています。
本当に写真のイメージを「そっくりそのまま」描いていることに驚き。
古賀作品の中で突き抜けています。
日本近代美術の代表作とされているのも納得させられます。
この時代は、シュレリアリズム風。
1室目に展示の「海」は1929年、「窓外の化粧」は1930年の製作です。
「鳥籠」(石橋財団石橋美術館)もあります。
これ以降の作品も、2室目に展示されていますが、この2作品には及ばないとの印象。
38歳と若くして亡くなった古賀春江。
もっと生きていたら、次はどのような作風を展開したのでしょうか。