東京でカラヴァッジョ 日記

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「木彫り熊の申し子 藤戸竹喜」展(東京ステーションギャラリー)

2021年07月27日 | 展覧会(日本美術)
木彫り熊の申し子   藤戸竹喜
アイヌであればこそ
2021年7月17日〜9月26日
東京ステーションギャラリー
 
   北海道美幌町で生まれ、旭川市で育った藤戸竹喜(ふじとたけき・1934〜2018)は、木彫り熊の職人だった父親の下で12歳の頃から熊彫りを始めました。まさかりで切った木の塊を渡され、それを自分なりに削る。父はそれを見て、気に入らなければ、火にくべてしまう。そんな繰り返しの中で熊彫りの技を習得した藤戸は、やがて阿寒湖畔に移り住み、この地で才能を開花させて、数多くの木彫作品を生み出します。 
   藤戸竹喜の作品の特徴は、大胆さと繊細さ、力強さと優しさといった、相反するものが同居していることにあります。一気呵成に彫り進められる熊や動物の姿は、まるで生きているかのように躍動し、旺盛な生命力を感じさせる一方で、仕上げに行われる毛彫りは細密で、硬い木であることを忘れさせるような柔らかな質感を生み出しているのです。また、アイヌ民族の先人たちの姿を等身大で彫った作品群は、精緻な写実的描写の中に、威厳に満ちた存在感を示しており、見る者を深い感動に誘うことでしょう。
   本展は、その初期から最晩年にいたる代表作80余点によって、この不世出の木彫家、藤戸竹喜の全貌を、東京で初めて紹介する機会となります。  
 
 
   木彫りの熊。
   北海道旅行のお土産として、戦前の1935年前後と、戦後の1950年後半から1970年代にかけて大定番であったらしい。百科事典や美術全集の流行もその頃ですかね。
   しかし、本展には、芸術作品としての木彫りの熊が集まる。
 
   熊が展示品のほとんどかと思っていたらそうでもなく、狼や鹿、狐、海の生き物なども。
 
   熊がすべての基本。下描きやスケッチを一切せず、丸太に簡単な目印を入れるだけ。まる木の中にもともとあったものを発掘しているかのように制作したという。吠えたり、見つめたり、耳をすませたり、じゃれたり、足をかいたり、怒ったり、獲物を襲ったり、人に狩られたり、とさまざまな姿態の大小の熊たち。私的ベストは「川の恵み」。
 
   狼は、17歳の時から作りたいと思い、父親から熊も一人前に彫らないのに何を言っているのかと怒られ、以降の目標となり、満足のいくものができるようになったのは70歳の時だったという。82歳前後に制作した「狼と少年の物語」19点連作、展示場所は当館ならここ以外はないね。
 
   1歳のときに母が他界し、12歳頃から父のもとで本格的に修業を開始し、15歳から3年間夏は阿寒湖の土産屋で冬は旭川の父のもとで過ごし、その後全道の観光地を渡り歩き、25歳のとき阿寒湖に戻り、30歳(1964年)で独立して阿寒湖に店を構える。
   その数年後、観音立像の制作依頼を受ける。関西の仏像を1週間見て回り、下描きやスケッチを一切しないものだから、しっかりと目に焼き付けて、半年間専念して完成させたという。
   その経験を機にアイヌ民族の先人たちを彫り始める。これがまた魅力的。小型像のカムイノミ日川善次郎、秋アジ漁善次郎、カムイノミ菊地儀之助、熊狩り儀之助、儀之助+タケ、熊狩の連作(4点中3点出品)。等身大像の杉村フサほか計4点。写実の迫力とその威厳。
 
   熊に対して、木に対して、自然に対して、先人に対して、作家の畏敬の念を感じさせる彫刻群。


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