没後110年 カリエール展
2016年9月10日~ 11月20日
東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館
カリエール(1849生-1906没)については、その名前と、セピア色の画風で知られることを認識していた程度。今回初めて、まとめて作品を見る。
画家の生涯は、「家族の愛に包まれ、パリの画壇での成功と栄誉を我が物とした至福に満ちたもの」だったとのこと。そういう画家もいるんですね。
29歳で6歳年下の女性と結婚し、2男5女(第1子が1878年、第7子が1899年に誕生。第2子の長男は夭逝)にめぐまれ、妻や子供たちをモデルにして、室内の日常光景をセピア色で描く。
母性の画家とも呼ばれる。
画風確立以降、晩年までセピア色、肖像画もヌード画も風景画も全てセピア色である。
今回の出品作品88点のうち12点が新潟市美術館所蔵。他は「個人蔵、フランス」との表示だが、画家の子孫であるミラン夫妻のコレクションが主となっているらしい(割合は不明)。
印象に残る作品
第2章の前半、1885〜90年頃の、家族をモデルにして日常の光景を描いた作品群を集めた一画(出品No.14〜21)は、実に好ましい。
《手紙》本展メイン・ビジュアル
《子どもを抱くエリーズ》エリーズは長女
《インク壷の前の子ども、マルグリット》次女。
出品作品のなかで一番大きい。顔が二重写し。
《ルロール家の肖像》
1891-92頃
158.5×221.5cm
アンリ・ルロールは画家であり美術品収集家。
娘のイヴォンヌとクリスティーヌは、先の国立新美術館のルノワール展で出品された《ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル》のモデルとなっているほか、モーリス・ドニなど他の画家たちのモデルもつとめていて、ミューズ的存在であったようだ。
〈参考〉
ルノワール《ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル》1897-1898年頃、73 × 92 cm、オランジュリー美術館
〈参考〉
モーリス・ドニ《イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像》1897年、オルセー美術館
14歳の次男と妻
《カリエール夫人とジャン=ルネ》
1902年
母親は息子の肩に手を置く。
本展の章だて(本展は他館への巡回なし)
第1章 画家カリエールの誕生から最初の国家買い上げまで(初期-1885年頃)
第2章 母性、子どもたち、室内(1885年頃-1890年頃)
第3章 サロンからの独立、著名人の肖像(1890年頃-1900年頃)
第4章 晩年(1900年頃-1905年)
画家が娘たちと写った写真のパネルも印象的。
公私ともに幸せだった画家として記憶する。