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菱田春草《黒き猫》、重要文化財指定年順年表を見る -【再訪】「重要文化財の秘密」展(東京国立近代美術館)

2023年05月12日 | 展覧会(日本美術)
東京国立近代美術館70周年記念
重要文化財の秘密
2023年3月17日〜5月14日
東京国立近代美術館
 
 
 明治以降の絵画・彫刻・工芸の重要文化財のみで構成される展覧会。
 現時点で、重要文化財に指定されている(まだ国宝はまだない)全68件のうち51点が出品される。
 
 最終週(5/9〜5/14)の夜間開館時間帯に訪問する。
 5/2〜5/8週に続く、2週連続の訪問。
 展示作品は、菱田春草《黒き猫》が登場し、狩野芳崖《悲母観音》が退場したこと以外は、全く同じなのだが、せっかくの機会なので《黒き猫》も見ておきたかったもの。
 
日本画:指定32件、出品25件(訪問時13件)
洋画 :指定21件、出品15件(訪問時14件)
彫刻 :指定  6件、出品  4件(訪問時  4件)
工芸 :指定  9件、出品  7件(訪問時  7件)
 
 
 以下、今回特に見たもの。
 
菱田春草(1874-1911)
《黒き猫》
1910年、永青文庫(熊本県立美術館寄託)
1956年重要文化財指定
 
 最終週のトップバッター。おそらく初見。
 黒猫の、輪郭のぼかしによる、柔らかな毛並みの表現。平面的に表された柏の樹や葉と、黒猫との調和。猫の黒と柏の葉の金色の対比。という解説を参考に見つめる。
 
 
今村紫紅(1880-1916)
《近江八景》
1912年、東京国立博物館
1968年重要文化財指定
 
 前回訪問時は流していたのだが、今回は長く眺める。
 印象派やセガンティーニの影響も言われているらしい。
 
 
 
重要文化財指定年順年表
 
 明治以降の美術品が初めて重要文化財に指定されたのは、1955年。
 1955年は、狩野芳崖2件・橋本雅邦2件、1956年に、菱田春草2件。累計6件。
 
 次の指定は、明治100年の前年1967年。
 1967年は6件で、下村観山、横山大観のほか、洋画の初指定となる高橋由一、浅井忠、青木繁および彫刻の初指定となる萩原守衛。
 1968年4件、1969年4件、1970年2件。累計22件。
 
 引き続き、1971年3件、1972年2件。少し空いて、1977年3件、1979年1件、1982年1件。累計32件。
 
 中断期間が1983〜98年。
 
 1999年に指定再開。
 1999年・2000年が各4件、2001年2件(工芸の初指定1件を含む)、2002年・2003年が各4件、2004年・06年・07年が各1件。累計53件。
 
 
 2010年以降、2022年までに計15件。累計68件。
 
 
 「重要文化財」の美術品といっても、これまでは、国に価値を認められているんだと思う程度。「国宝」とは違い、結構見かけることが多いこともあって、重要文化財だからといって特に注目して見ることはなかった。
 
 明治以降の美術品の重要文化財について、意外に数が少ないこと、その多くを東京の特定の博物館・美術館が所蔵することを、本展により知る。東京では規模の大きい展覧会が多いこと、私的に普段からこの時代の日本美術を注視しているわけではないことも重なって、だから、結構見かけることが多いという印象を持ってしまうわけだ。
 また、評価が揺れる可能性がある時代の美術品ならではの、重要文化財指定のドラマがあるのだなあと知る。
 
 今までなかった観点、この作品は重要文化財に指定されるのかを想像しながらの鑑賞も、なかなかおもしろいなと思う。
 
 想像を上回る楽しい展覧会であった。
 こんなに楽しめるのなら、会期の前半も行っておけばよかったと思う次第。
 
 
 
蛇足
 高村光雲《老猿》が撮影不可となっていた。前回はOKだったはず。
 


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