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岡上淑子《夜間訪問》、1953-54年の「抽象と幻想」展 - MOMATコレクション小特集(東京国立近代美術館)

2022年10月31日 | 東京国立近代美術館常設展
 岡上淑子のフォト・コラージュ作品1点が展示中と知って、東京国立近代美術館常設展示室を金曜日に夜間訪問する。
 
 
岡上淑子
《夜間訪問》
1951年、東京国立近代美術館
 
 行ってから知ったのだが、「MOMATコレクション小特集」のなかの展示である。
 
 1952年に開館した東京国立近代美術館が、1953年に開館1周年記念として開催した「伝説の」企画「抽象と幻想」展を振り返る小特集。
 
 
MOMATコレクション小特集
プレイバック 「抽象と幻想」展(1953–1954)
2022年10月12日〜2023年2月5日
東京国立近代美術館2階7室・8室
 
 
【「抽象と幻想」展の概要】
 
抽象と幻想 非写実絵画をどう理解するか
1953年12月1日〜1954年1月20日(38日間)
入場者数 16,657人(1日平均438人)
協力委員 瀧口修造、植村鷹千代
出品作家 89人
出品点数 100点
概要 歴史的な回顧の性格をもつ展覧会ではなく、同時代の動向に目を向けた最初の企画。当時の日本における前衛的な傾向として、二つの主流を形成していたシュルレアリスムとアブストラクトを系統立てて整理し、展覧会の副題が示すように、いわゆる「分かりにくい新しい絵」を理解させるように努めた。観客の理解を深めるため、各作家に自作に関するコメントを寄せてもらい、また写真や図表などのパネルも交えて二つの潮流を解説した。
 
 
 この小特集の小冊子によると、2階展示室が「抽象」の部、3階展示室が「幻想」の部。
 岡上作品は、「抽象」の部にて、次の10点が展示された。
 
現所蔵:東京国立近代美術館
《夜間訪問》1951年
《無情な光景》1951年
《長い一日》1951年
《怠惰な恋人》1952年
《終曲の午後》1952年
《室内》1951年
 
現所蔵:高知県立美術館
《天使の巣》1952年
 
現所蔵:個人蔵
《時の干渉》
 
現所蔵:所在不明
《転身》
《道は遠く》
 
 
 岡上(おかのうえ)淑子。1928年生まれ。
 1950年、文化学院デザイン科に入学、美術の授業での課題がきっかけとなり、コラージュを制作し始める。
 1951年、友人から紹介された武満徹を通じて瀧口修造と面会。瀧口に励まされ、引き続きコラージュ制作に打ち込む。
 1953年1月、瀧口の勧めにより、タケミヤ画廊にて初の個展「岡上淑子コラージュ展」を開催。これを機に新進の作家として注目される。
 そして、同年12月、瀧口が協力委員の一人であった国立近代美術館の「抽象と幻想」展の出品作家に選抜される。
 岡上作品2度目の一般公開となったようだ。
 
 
 『岡上淑子全作品』(河出書房新社刊)によると、当初は瀧口の推薦で2点の出品が予定されていたが、岡上宅を訪れた学芸員、本間正義によって10点が選定され、その全てが展示されることとなったという。
 
 また、『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』(青幻社刊)によると、10点への追加展示となったため、岡上作品は、急遽休憩室の一角をパーティションで囲んだ場所に展示されたという。
(岡上作品は「抽象」よりも「幻想」だと思うが、前述の青幻社刊書籍でも「幻想」の部にて紹介された旨記載されているが、この小特集の小冊子では「抽象」の部の展示とされているのは、休憩室に展示されたことに起因しているのかも。)
 
 なお、89作家で100点と、1作家1点が基本で、2作家は絵画と彫刻各1点であるなか、岡上が10点の出品というのは、相当なことではないだろうか。
 
 
 
  さて、小特集の展示である。
 
 7室は、展覧会の再現VRの投影と、展覧会関連資料の展示となる。
 
「抽象と幻想」展のポスター
 
左:「抽象と幻想」展の会場内配布の小冊子
右:「抽象と幻想」展のカタログ、本展閉幕の翌年1955年の刊行
 左の会場内配布の小冊子8頁の「復刻版」が、この小特集の小冊子に付いている。
 
 「復刻版」を見る。
 絵画と彫刻別で作家のアルファベット順に並ぶ出品目録には、岡上の出品作品の題名は「コラージュ」とある。
 10点の出品であることや、個々の作品の具体的題名はない。
 また、計16点の作品は白黒図版が掲載されているが、岡上作品はない。
 
 
 
 8室が、東京国立近代美術館が所蔵する「抽象と幻想」展の出品作品、および、出品作家による50年代の作品を中心とした展示となる。
 
 「抽象と幻想」展の出品作品100点のうち、東京国立近代美術館が所蔵する作品は14点だという。
 そのうち前後期あわせて10点、私の訪問時の前期では7点が展示される。
 
 
 8室展示風景
 白の壁面展示の右から、天井から吊された立体作品、油彩作品2点、鉛筆画作品、コラージュ作品、木版画作品、銅版画作品、計7点の「抽象と幻想」展の出品作品である。
 
4選。
 
古沢岩美
《プルトの娘》1951年
 
河原温
《浴室16》1953年
 
浜田知明
《初年兵哀歌(歩哨)》1951年
 
岡上淑子
《夜間訪問》1951年
 前期展示。後期は《無情な光景》が展示予定。
 岡上の「抽象と幻想」展出品作品10点中、6点が東京国立近代美術館所蔵なのだが、この小特集への出品は2点どまりで、4点が出品されないのは残念。まあ、出品したら岡上の色が強くなりすぎるけど。
 「抽象と幻想」展では、観客の理解を深めるため、各作家に自作に関するコメントを寄せてもら」ったとのことで、古沢や浜田の作品解説キャプションにはそのコメントが記されるが、岡上のものには、岡上ではなく、協力委員の植村鷹千代のコメントが記される。おそらく岡上のコメントは付されなかったのであろう。
 
 
 
 と、訪問前には想像していなかった方向で、岡上作品を楽しむ。


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