国宝 東京国立博物館のすべて
2022年10月18日〜12月11日
東京国立博物館
本展は、完全事前予約制(日時指定)。
東京国立博物館正門チケット売り場での販売はないので、注意。
本展の人気は高いようで、10月22日時点で申込可能な11月13日入場分までのチケットは、完売状態。
(ただし、キャンセルにより時々空きが出るようだ。)
11月15日以降入場分の受付開始は今後だが、都合のよい日時を確保するには受付開始日すぐの申込が必須となるようだ。
第2部 東京国立博物館の150年
国宝指定以外の収蔵品および関連資料により東博の150年の歴史を振り返る。
【第2部の構成】
1章 博物館の誕生(1872-1885)
2章 皇室と博物館(1886-1946)
3章 新たな博物館へ(1947-2022)
3つの時代に区分し、それぞれの時代を物語る収蔵品や、それぞれの時代に収蔵された名品・優品が展示される。
以下、印象に残る展示品。
(ただし、いわゆる名品・優品は除く。)
「名古屋城金鯱」の実物大レプリカ
第2部は「名古屋城金鯱」の実物大レプリカから始まる。
1872年(明治5年)の旧湯島聖堂大成殿で開催された博覧会。
政府によるわが国最初の博覧会の開催であり、東博はこれをもって創立・開館の時としている。
この「湯島聖堂博覧会」における人気ナンバーワンの展示品が、大成殿中庭のガラスケースに陳列された「名古屋城の金鯱」だった。
金鯱は、雄と雌の一対。
雄の方が大きくつくられているが、体を覆う金の鱗は雌の方が多く、きらびやかに演出されているという。
1612年の据付後、藩の財政難のため、3度改鋳されている。
1871年(明治4年)に宮内庁に献納。湯島聖堂博覧会に展示されたのは大きい雄。きらびやかな雌はウィーン万国博覧会に出品されている。
1945年5月の名古屋大空襲にて焼失。
実物大レプリカのほか、展覧会の展示風景を描いた錦絵《古今珎物集覧》一曜斎国輝筆や、金鯱を撮影した写真パネルも展示。
このサイズの「金」だったら、人気となるのも納得。
《砲弾(四斤山砲)》
明治時代・19世紀
1868年(明治元年)の上野戦争の際に使用された砲弾。
寛永寺五重塔付近の杉樹に命中し、樹中に埋まったままとなっていたところ、1908年(明治41年)、伐採時に発見される。
本品は、砲弾のみを取り出さず、柱に突き刺さっているような形に杉樹を加工して保存されている。
いわゆる美術工芸品に限らず、世界の万物を蒐集しようという当時の博物館の意識が伺えて面白い。
《生人形 徳川時代花見上臈》
三代安本亀八作、明治時代・20世紀
1910年(明治43年)にロンドンで開催された日英博覧会のために制作された生人形18体のうちの1体。
東博では、1970年代まで、マネキンのように東博の所蔵品を着付展示していたとのこと。
その再現なのだろう、本展では、江戸時代・19世紀の打掛、間着、掛下帯を着付展示している。
《くちなわ物語》
野間清六筆
東博の歴史的展覧会と言えば、129万人を動員した1965年のツタンカーメン展と、150万人を動員した1974年のモナリザ展。
戦前の最多動員数を記録した展覧会は、1940年11月5日〜24日に開催された、紀元二千六百年記念「正倉院御物特別展観」であるらしい。
東京における初めての正倉院御物の一般公開で、40万人超の入場者数を記録したという。
本作は、東博の博物館監察官であった野間が、正倉院での点検梱包から東京への輸送、展覧会の開催、終了後の返納までを描いた絵巻。
観覧に集まった人々の列が、くちなわ(蛇)のようであることから「くちなわ物語」と命名された。
是非、全場面を見てみたい。
博物館の扁額/門標
各章ごとに1点展示される博物館の扁額/門標が、東博の歴史を物語る。
《山下門内博物館「博物館」扁額》
明治時代・19世紀
《「帝室博物館」門標》
1903年(明治36年)
《「国立博物館」門標》
1947年(昭和22年)
最後のコーナーには、撮影可能作品が2点展示される。
1点は、見出し画像の、菱川師宣筆《見返り美人図》。
(オリジナル展示は前期まで、後期は複製展示。)
もう1点は。
《金剛力士立像》2軀
平安時代・12世紀
かつて滋賀県栗東市にあった蓮台寺の仁王門に安置されていたが、1934年(昭和9年)の室戸台風で仁王門が倒壊し、仁王像も大破。
その後、長らくそのまま保管されていたが、近年約2年間の修理を経て、2022年2月に東博が購入。最新の収蔵品である。
本展の出品点数は、創立150年にちなんだのであろう、第1部・第2部あわせて150点。
1点(《キリン剥製標本》)を除き、東博の収蔵品である。
なお、「名古屋城の金鯱」実物大レプリカは、150点の中にはない。本展のために作ったのだろうか、飾り付け的な扱いである。
私的には、第2部に集中した通常規模の特別展で見たかった気がする。