続きです。
4 図録
図録には、61点の作品の図版が詳細解説とともに掲載され、また同数以上の作品が参考図版として掲載されています。作品全てとまではいえないとしても、相当程度カバーしていると思われます。
掲載図版は、1頁に収まる大きさの全体図版が中心で、部分拡大図版がほとんどなかったのは、HPの詳細画像に惹かれた私としては少し残念でした。
61点を所蔵国別に見ると、イタリア34点、英国10点、アメリカ5点、ドイツ4点、フランス3点、ロシア2点、ポルトガル1点、個人2点となっています。イタリアが多いのは当然ですが、各国に広がっています。
所蔵先別に見ると、ヴェネツィア・アカデミア美術館が10点とトップ。次にロンドン・ナショナル・ギャラリー6点、ミラノ・ブレラ美術館5点の順です。恐るべき所蔵力のロンドン。
5 展示作品
図録は61点の掲載ですが、展覧会への出品数はHPを見る限り38点です。
出品国別には、イタリア20点、英国7点、アメリカ5点、ドイツ1点、フランス2点、ロシアなし、ポルトガル1点、個人2点です。
ワシントンナショナルギャラリーの「聖エレナ」、英国・Harewoodの「荒野の聖ヒエロニムス」、リスボン・グルベンキアン美術館の「エジプトへの逃避途中の聖人たちとの休息」等が、外国からの来伊ということもあってか、展覧会の目玉のようです。
出品作品の主題としては、「聖母子」が9点と多いです。
うち、ベッリーニが考案したという「聖母子背後に織物が衝立をなして立ち、両側に風景が長く延びる」パターンが4点あります(「背後中央に織物、両側に風景」パターンと「背後右半分に織物、左半分が風景」パターン)。
次に「荒野の聖ヒエロニムス」が5点。これらをずらっと並べたことも今回の売りのようです。
画家の出身地における外国の大美術館からの作品も集めての展覧会。
背景にコネリアーノの街が描かれたおだやかな雰囲気の作品が多く、展覧会の題「Poeta del Paesaggio(風景の詩人)」というのも納得できます。
画家の作品は、地元にもわずか1枚ではありますが、ドゥーモに残っているとのこと。
地元に愛されている画家のようです。
6 その他
ナショナル・ギャラリー・ポケット・ガイド「絵画の保存」で、チーマ・ダ・コネリアーノの作品「聖トマスの懐疑」(今回非出品)が、現在では最終的な修復手段とされている「新しい支持体への絵画の移し替え」の数少ない実行例としてとりあげられています。
同作品は、早い時期から絵画の剥離が生じていたらしいことに加え、1820年代にヴェネツィアでの修復作業中に高潮に巻き込まれ、運河の水に浸かったことで、ひどい状態になっていたそうです。そこで、1970年代から1980年代にかけて、支持体の移し替え、洗浄、欠損部への補彩といった「大規模な復元」が行われました。
同ポケットガイドには「洗浄前」「洗浄後、修復前」「修復後」の計5枚の図版が掲載されています。