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MOTコレクション
歩く、赴く、移動する 1923→2020
2023年12月2日〜2024年3月10日
東京都現代美術館
洋画家の鹿子木孟郎(1874-1941)。
3度にわたるフランス留学を通じて、歴史画家ジャン=ポール・ローランスにアカデミックな写生技術と画面構成を学ぶ。
当時49歳の鹿子木は、京都で活動していたが、大震災の一報に接し、日本画家の池田遙邨(1895-1988)を誘い、上京する。
〈池田の回想〉
震災の直後、近所に住んでいた洋画の鹿子木孟郎先生が、「池田君、これから関東大震災の跡を写生に行こう」と誘いに見えた。突然のことなのでその日は行けない。それであくる日、先生に同道して出発し、一カ月ほど東京に滞在しました。ずい分怖い思いをしまして、写生をしていると罹災者が瓦を投げつけてくる。こんな悲惨な目にあっているのにお前ら何事だ、というわけで・・・。
二人は、焼け野となった隅田川を挟んだ下町の風景を写生して歩く。
本展では、鹿子木の震災スケッチが15点、および写真やスケッチなどを元に制作した大画面の油彩画が展示される。
入室後すぐの登場である。
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震災スケッチの展示風景
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《震災スケッチ(上野)》1923年
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《震災スケッチ(避難民と焼野)》1923年
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《震災スケッチ(夕暮遠望)》1923年
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《震災スケッチ(水上生活者)》1923年
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《大正12年9月1日》制作年不詳
池田も、400点以上のスケッチを行い、翌年、6曲1隻の屏風作品《災禍の跡》(現、倉敷市立美術館蔵)を第5回帝展に出品する。
〈池田の回想〉
この絵を描いている時はもう涙がぽろぽろこぼれてね。黙祷しながら描いた。これほど必死の思いで描いた作品はありません。
美術家で新聞漫画家でもあった柳瀬正夢(1900-45)。
当時23歳の柳瀬は、ドイツから帰国した村山知義(1901-77)らと大正新興美術運動のグループ「マヴォ」を結成し、1923年7月に第1回展を開催したばかり。旅行から東京に戻ってまもなく被災する。
震災の混乱に乗じて社会主義者を取り締まる憲兵隊に逮捕された柳瀬は、5日目に釈放され、父の住む門司にいったん避難する。
翌10月上旬、たくさんの支援物資を担ぎ、まだ戒厳令の解けぬ東京へと帰還する。
本展では、その道中を記録する日記と、1か月ぶりに戻った都市の只中から被害の跡が生々しく残る街や人々の生活を捉えようとした3冊のスケッチブックが展示される。
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展示風景
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3冊のスケッチブック
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柳瀬は、のちに「自叙伝」で、震災の日を自分の生年だと語り、組織的無産階級解放運動に目覚めたことを記しているという。