創立150年記念特集
時代を語る洋画たち
東京国立博物館の隠れた洋画コレクション
2022年6月7日~7月18日
東京国立博物館 平成館企画展示室
日本、東洋の古美術コレクションのイメージが強い東京国立博物館。しかし、博物館の草創期から、欧米作家の作品も含む、制作とほぼ同時期に収蔵された洋画も収蔵しています。
東博が所蔵する、欧米作家の作品と日本人による近代洋画。
普段目にする機会が少ないと思われる作品が並んでいる。
以下、印象に残る作品3選。
レンブラント
《画家とその妻》1636年
東博がレンブラントの版画、それもレンブラント自身とその妻サスキアを描いた版画を所蔵することも意外だが、その所蔵は「購入」によること、時期が1950年(昭和25年)であることは、さらに意外。
東京国立近代美術館(昭和27年開館)も国立西洋美術館(昭和34年開館)もない昭和20年代前半。
東博は、戦時期に触れることのできなかった西洋美術を求める人々に応えるため、日本に常設の近代美術館が設立されるまで、表慶館を日本近代美術&西洋美術の常設展示室とする方針を打ち出す。
昭和23年6月から常設展示を開始。
日本近代美術はそこそこ収蔵しているが、西洋美術はその多くを寄託作品で埋めざるを得ず、作品集めに東奔西走したようだ。
しかも、展示中の作品の所有者変更が結構あったらしい。展示して1ヶ月も経たないうちに引き上げ要請があったり、所有者変更届を受領したり。展示室の作品の前で所有者が他の人と商談している光景もしばしば見られたという。
レンブラントの版画は、国内所蔵者からの購入だったのだろうか。その人から他の作品もあわせて購入しているのだろうか。
東博HPから所蔵品検索データベースを見ても情報はない。
本作の機関管理番号A-10940の前後を見ると、日本美術品が並んでいて、1番前・後こそ該当作品はないが、3番前は黒田清輝《読書》、2番後はなんと!国宝《地獄草紙》が登場している。
猪熊弦一郎
《画室》1933年
大正13年に死去した黒田清輝、その翌年、一周忌の記念事業として、美術奨励金を集めて黒田子爵記念賞が設けられる。
この事業は、新進洋画家の優れた作品を奨励金で買い上げ、東京帝室博物館などに寄贈するというかたちで、昭和戦前期まで続けられたという。
本事業により買い上げられた本作は、ヌードの女性モデルを2人の女性画学生が描いている画室の光景。
若桑みどり著『隠された視線』(岩波書店)を思い出し、そのあとがきを読む。
田代二見(1890-1960)
《大正震災焼跡写生図》1923年
「上野公園における避難民とバラック」
「浅草仲店より観音堂」
関東大震災から99年となる今年。
首都圏では99年もの間、巨大地震がなかったこととなる。
東京は地震が多いと聞いていたが、社会人になって東京に住み始めると、本当にしばしば揺れる。東京に住んだからには生きている間に巨大地震に遭遇するのだろうなあと、ある意味の覚悟をしたが、ひょっとしてこのまま逃げ切るなんてことがあったりするのだろうか。
「上野駅趾」
「吾妻橋」
54図からなる本作、うち4図が展示される。
作者からの寄贈。
作者が震災から18年後に寄贈した理由は不明だが、東博としては新しい本館(復興本館)の開館を機に、震災を記憶をとどめるため寄贈を受けたのかもしれない、との説明。
当然のことであるが、寄贈をする側だけではなく、寄贈を受ける側にも理由があるのだ。
東京都復興記念館にもほぼ同図様の作品が所蔵されているとのこと。
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
作品名キャプションも時代を語る一部です。