東京でカラヴァッジョ 日記

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モローニ《円柱の上に兜を置いた紳士の肖像》

2020年04月27日 | ロンドンナショナルギャラリー展
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
2020年3月3日〜6月14日
→開幕日未定
国立西洋美術館
 
ジョヴァンニ・バッティスタ・モローニ 
《円柱の上に兜を置いた紳士の肖像》
1555-56年頃、186.2x99.9cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
 
 
   ジョヴァンニ・バッティスタ・モローニ(1520/24-79)は、ロンバルディアのベルガモ近郊の町で生まれ、北イタリア(ブレーシャやトレントなど)で修業・経験を積んだ後、1561年に故郷ベルガモに拠点を構えて活動した。
 
   モローニと言えば、肖像画。
 
   モローニは、図録の解説によると、「美術史上、最も心理的洞察の鋭い肖像画家の一人」とされる。
   その肖像画に対しては、「像主のアイデンティティや内面の思考までも描き出そうとする」、「極端な自然主義と呼びうるもの(像主に媚びた表現はほとんどない)」、「光と影の強いコントラストの利用」などとコメントされる。
   また、ロンバルディアにおけるレオナルド・ダ・ヴィンチとカラヴァッジョの作品の接点となる画家の一人として、モローニが考察されている、とのことである。
 
   本作については、「彼は明らかに足が短い」「おそらくきわめて背が低かったのだろう」と、画家を持ち上げるためにか、像主の身体的特徴に関して酷い言いようをしている。
 
 
 
   ナショナルギャラリーは、この本展出品作以外にも、モローニの肖像画を10点ほど所蔵しているようだ。
 
   そのなかで重要と思われる作品を3点。
 
 
【貴族の肖像画1】
ジョヴァンニ・バッティスタ・モローニ
《男の肖像(足を負傷した騎士)》
1554-58年頃、202.3×106.5cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
   横目使いで観者を見つめる男。その眼は、観者の方へわざわざ向き直る必要のない人物のものであり、貴族特有の見下すような印象を伝えている。
 
 
 
【貴族の肖像画2】
ジョヴァンニ・バッティスタ・モローニ
《手紙をもつ男の肖像(法律家)》
1570年頃、89×72.5cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
   モデルは頭を反らして、鼻の先から観者を見下ろしている。
 
 
 
【庶民の肖像画】
ジョヴァンニ・バッティスタ・モローニ
《仕立て屋》
1565-70年、99.5×77cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
   恭しく頭を下げつつこちらを伺い、その手に鋏を握って、観者の身体に合わせて布を裁断する作業にとりかかろうとしている。
 
 
 
   本展出品作は、ひょっとすると上記3点に比べると作品の格は多少落ちるのかもしれないけれど、日本でモローニの肖像画を見る機会はまずないし、私もそれと意識してモローニの肖像画を見たことはなく、本展での対面を楽しみにしていたところなのだが。


4 コメント

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Unknown (マタイ)
2020-05-10 12:40:27
K様
お久しぶりです。
モロー二といえば、昨年フリックコレクションにて『Moroni: The Riches of Renaissance Portraiture』という特別展が開催されたようですね。YouTubeにも動画がアップされていました。
(既にご存知でしたら申し訳ありません。)

https://m.youtube.com/watch?v=aiKJWXd2_04

個人的には、素晴らしい作品が並ぶなかでも『仕立て屋』が目に留まりました。
そこまで大きなサイズでは無いですが、作品が放つ圧倒的なオーラ、モデルの男性が持つ気品や美しさを余すことなく描き出すモロー二の画力にとても驚嘆しました。
日本でもモロー二の肖像画展を期待したいのですが、画家の日本での知名度的に難しいでしょうか。

ところで、BS1にて5月13日0時15分より『BS世界のドキュメンタリー 疑惑のカラヴァッジョ』という番組が放送されるようです。
こちらも既にご存知でしたら、申し訳ありません。
これからもブログを楽しみにしております。
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5/13のBS1「疑惑のカラヴァッジョ」 ()
2020-05-10 20:01:48
マタイ様
コメントありがとうございます。

カラヴァッジョの番組は全く知りませんでした。早速録画しました。南仏で発見された「ホロフェルネスの首を斬るユディト」の物語ですね。楽しみです。情報ありがとうございます。
モローニ《仕立て屋》は、オーラが違いますね。肖像画展は無理にしても、この作品がいつの日か来日してくれることを期待します。
今後ともよろしくお願いいたします。
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「疑惑のカラヴァッジョ」を見ました。 ()
2020-05-13 12:29:04
マタイさま

「疑惑のカラヴァッジョ」、実に面白い番組でした。まさかの結末でした。教えていただいたことを感謝いたします。

旧トゥールーズ個人蔵の絵は、今までスマホ画面でしか見たことがなく、今回テレビ画面で見たわけですが、「ユディトの顔」に強いオーラを感じました。
カラヴァッジョの未完成作をフィンソンが完成させたという仮説が紹介されていましたが、その説もありかなという気がします。メトロポリタン美術館に展示される日が来るのでしょうか。

しかし、この番組を見て、バルベリーニ所蔵作品の非来日を改めて残念に思いました。

今後ともよろしくお願いいたします。
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Unknown (マタイ)
2020-05-14 00:35:28
K様
お役に立てて嬉しく思います。
気になっていたトゥールーズ版のユディト、さらに個人的に大好きな真贋論争のドキュメンタリーということもあり、あっという間の45分でした。
テレビ画面越しとはいえ、作品の質の高さを強く感じました。
仰るとおり、ユディトの顔、特に観者の方を挑戦的に見つめる視線は、まるで射抜かれるような迫力を感じます。
カラヴァッジョの未完成作品をフィンソンが完成させたという説はとても興味深かったです。
だとすれば、ユディトの顔や袖口の表現の差などナポリ版との違いも納得できるように感じます。

カラヴァッジョの真贋といえば、昨年のカラヴァッジョ展では真贋グレーゾーンの作品が多く出品されており、自分なりに考えながら作品と向き合っていたことを思い出しました。
大阪展は実に惜しかったですね。
ヒエロニムスは素晴らしかったですし、リュートの音色を聴きながらの観賞も楽しかったのですが、バルベリーニのユディトが無事に来日していたなら、どれほど素晴らしい機会だったかと感じずにはいられませんでした。

長文となり申し訳ありません。
こちらこそ今後ともよろしくお願い致します。
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