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福富太郎コレクションの日本画&洋画 ー 「コレクター福富太郎の眼」展(東京ステーションギャラリー)

2021年04月30日 | 展覧会(日本美術)
コレクター福富太郎の眼
昭和のキャバレー王が愛した絵画
2021年4月24日〜6月27日
(臨時休館:4/27〜5/11)
東京ステーションギャラリー
 
   会期初日の「コレクター福富太郎の眼」展に行く。
   都内美術館の翌日4/25以降の臨時休館が想定されるなか、当面の最後の鑑賞展覧会として、本展を選択したこととなる。
 
 
   日本画の作品群に既視感があり、帰宅後確認する。すっかり忘れていたが、ちょうど10年前、2011年3月上旬に横浜のそごう美術館にて「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美」展を見ていた。「多数展示の美人画には(予想どおり)全く興味が持てず」「短時間で退出」「私の趣味には合わなかった」との感想を拙ブログ記事に残している。
   今回はそこまでは言わないが、美人画(日本画)限定の前回とは異なって日本近代洋画も展示される本展、どちらかといえば日本近代洋画の方を楽しく見ている。
 
 
 
   また、本展では、ここ半年内に別の展覧会で見た作品と再会する。あるいは、別の展覧会で見た作品と関連する作品と会う。
 
 
鏑木清方《妖魚》
鏑木清方《刺青の女》
鏑木清方《薄雪》
北野恒富《道行》
島成園《おんな(旧題名・黒髪の誇り)》
 
   東京国立近代美術館(4/25〜5/11臨時休館中)の「あやしい絵展」に出品されていた上記5点を1ヶ月後に再見する。
   東近美では会期最初の3/24〜4/4まで展示され、その後4/24の開幕にあわせて本展に移ったこととなる。両展の間での厳しい日程調整があったのだろうか。
 
 
 甲斐庄楠音《横櫛》
 
    「あやしい絵展」の東京会場では通期展示、大阪会場では半期展示される京都国立近代美術館所蔵作。大阪会場限りで半期展示される広島県立美術館所蔵作。
   楠音の《横櫛》は2バージョン存在すると思っていたが、実はもう一つバージョンがあって、それを福富が所蔵していて、本展に展示される。
   先の2バージョンが全身像であるのに対し、本作は上半身像。
   東近美で見た京都国立近代美バージョンと比べると、普通の美人画っぽいと思う。が、近づいて観ると、女性の目が尋常ではなかった。怖い。
   本展は、東近美と比べて作品との距離が近いのが有難い。
 
 
菊池容斎《塩冶高貞妻出浴之図》
渡辺省亭《塩冶高貞妻浴後図》
渡辺省亭《塩冶高貞妻之図》
 
   東京藝大美「渡辺省亭」展(3/27〜5/23、ただし4/25より臨時休館中)で見た別バージョンの《塩治判官の妻》(培広庵コレクション)と比べると、本展の省亭出品作は「裏地と肌との境界線上のギリギリの攻防」は見られず、出来が良いように思われる。
 
 
 
   続いて3章の日本近代洋画部門より。
 
向井潤吉《影(蘇州上空にて)》
 
   福富は戦争画も熱心に収集したという。没後、戦争画のコレクションのうち重要な作品約100点は遺族により東京都現代美術館に寄贈されている。知らなかった。
   本展では、寄贈された戦争画のうち5点が特別出品される。向井の作品はその1点である。
   本作は、横須賀美術館「ヒコーキと美術」展(2/6〜4/11、ただし、2/6〜3/7は臨時休館)で観た。横須賀の閉幕後すぐに(東京都現代美を経由して?)で本展に移ったこととなる。
 
 
阿部合成《顔》
 
   本作も東京都現代美に寄贈された作品。
   東近美の「眠り展」(2020/11/25〜21/2/23)にて、阿部の《百姓の昼寝》(東近美所蔵)を観た。「単にのどかな光景を描いている」のではなく、「国が戦争へと向かっている状況下」「いわば一種の抵抗の隠喩として眠りを描いたと考えることもできる」旨の解説。
   画家が《百姓の昼寝》と同時に発表したのが、《見送る人々》(兵庫県立美術館所蔵)。「出征していく軍人たちではなく、出征を見送る家族のほうを感情表現豊かに描写した」、ヒエロニムス・ボスを想起させる作品。
   本展出品作《顔》も「出征兵士を送別する郷里の青森の人びと」を描く。
   ボス風ではないが、6人ほどの顔を並べる。制作年代は先の2作品(1938年)に少し先立つもののようだ。
   
 
岸田劉生《南禅寺疎水附近》
 
   練馬区立美術館「電線絵画展」(2/28〜4/18)では、岸田劉生の章が設けられ、代々木切通しシリーズや神奈川県藤沢町鵠沼の自宅の窓からの風景画の展示により、劉生の電柱愛が紹介されていた。
   本展出品作は、関東大震災を機に鵠沼から移った京都にて描いた風景画であるが、ここにも電柱が描かれており、劉生の電柱愛が伺える。
   加えて、描かれた山のところどころに赤土。代々木切通しシリーズを想起させるあの赤土のあの独特の色。劉生の赤土愛が伺える。
 
 
 
   以上、ここ半年以内に別の展覧会で見た作品との再会、別の展覧会で見た作品と関連する作品5題。
 
 
   以上の観点とは別に、本展で気になった作品を挙げる(一部重なりあり)と。
 
甲斐庄楠音《横櫛》1918年頃
・尋常ではない目。
 
伊東深水《戸外は春雨》1955年
・題名から想像できない、日劇ミュージックホールの楽屋に取材した作品。床や棚に開いた状態で置かれる傘から始まる絵巻。
 
亀井至一《梳る女》1887年
・逞しさを感じさせる明治の女性像。
 
チャールズ・ワーグマン《英国人への襲撃   生麦事件》1862年
・ルポタージュ・アート
 
藤田嗣治《千人針》1937年、都現代美寄贈
・主婦、ワンピース姿の女性、セーラー服姿の女学生が街中で一針を縫う光景を描く小品。
 
中村研一《青年航空士官(レイテ突撃前夜)》1945年、都現代美寄贈
・青年は1944年10月戦死。南方に配属される直前に家族のもとに送られてきた写真をもとに、青年の姉の嫁ぎ先の遠縁であった画家が描く。
 
向井潤吉《影(蘇州上空にて)》1941年、都現代美寄贈
・飛行機の、町を覆い隠すような巨大な影。その影の下には、通りを歩く多数の人々が描かれている。
 
宮本三郎《少年航空兵》1942年頃、都現代美寄贈。
・1942年航空日のポスター「空だ翼だ若人だ」の原画。
 
満谷国四郎《軍人の妻》1904年
・日露戦争の戦争未亡人を描く。本作は制作直後にアメリカに渡ったが、1990年のクリスティーズのオークションに登場し、福富が入手。
 
 
   新海覚雄《独立はしたが?》1952年 を期待していたが、非出品。
   福富の戦争画コレクションを東京都現代美術館に観に行こう。まとめて公開されるときを狙いたい。
 
   本展の作品解説キャプションには、画家・作品の情報に加え、福富が残した感想・エピソードなども記されている。素直に読んでいると、その見方に囚われてしまうかも。
 
【本展の構成】
1:コレクションのはじまり   鏑木清方との出逢い
2:女性像へのまなざし  
(1)東の作家
(2)西の作家
3:時代を映す絵画
(1)黎明期の洋画
(2)江戸から東京へ
(3)戦争画の周辺
✳︎旧福富太郎コレクションが特別出品として6点展示。
✳︎本展は、東京の後、新潟、大阪、高知、富山、岩手を巡回予定。

 



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