東京でカラヴァッジョ 日記

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「生誕270年 長沢芦雪」(九州国立博物館)

2024年02月26日 | 展覧会(日本美術)
生誕270年 長沢芦雪
若冲、応挙につづく天才画家
2024年2月6日〜3月31日 
九州国立博物館
 
 
 九州国立博物館。
 15年以上前(本ブログを始める前)、出張の隙間に行ったことがあるが、そのときは特別展は開催されておらず、常設展示のみを鑑賞した。
 今回は、2度目の訪問。
   福岡市美術館においてカラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》を観た後、もう一つの訪問先として、九州国立博物館の特別展「長沢芦雪」を選んだもの。
 
 見出し画像のトンネルを抜けると、九州国立博物館の現代的な建物。
 
 
 長沢芦雪展。
 
 
 2017年の愛知県美術館「長沢芦雪展 - 京のエンターテイナー」は、芦雪を単独で取り上げる展覧会としては、2000年の千葉・和歌山、2011年の滋賀以来、3度目であったという。
 
 4度目となるのだろう本展は、大阪中之島美術館(終了済)と九州国立博物館での開催である。
 
 
九州国立博物館での出品数は、
 通期 64点
    芦雪  :45点
    芦雪以外:19点
 
 前後期でほぼ全点の展示替えが行われる(通期展示は2点のみ、うち1点は襖絵8面を前期・後期で4面ずつ展示替え)。
 
私の訪問日(前期)の出品数は、
 前期 33点
    芦雪  :23点
    芦雪以外:10点
 
 出品数からは少なそうに見えるし、展示室の広さから見ても少なさ感はあるけれども、襖絵などの大型で重要な作品の比率が高いので、見応えは充分。
 
 
 大阪会場では、出品数的には、より大規模であったようだ。
【参考:大阪会場】
 通期 110点
    芦雪  :95点
    芦雪以外:15点
 前後期でほぼ全点が展示替えされ、一度の訪問で見れる作品は半分程度、というのは九州会場と同じ。
 見どころの中心となる大型の襖絵や屏風については、大阪・福岡両会場ともに出品されているようである。
 
 図録については、福岡会場専用版が用意されている。大阪会場では、他の方のブログによると、大阪・福岡共通版が用意され、福岡会場限りの芦雪出品作も掲載されているらしい(未確認)。
 
 また、芦雪以外の画家について、福岡会場では、応挙、若冲、蕪村、大雅、蕭白の5人が取り上げられている。後期の目玉は、芦雪展であるにもかかわらず、若冲《象と鯨図屏風》(MIHO MUSEUM蔵)。
 ちなみに、大阪会場では、応挙、若冲(《象と鯨図屏風》も出品)、蕭白の3人で、蕪村、大雅の出品はなかったようだ。
 
 なお、入場料(一般当日)は、大阪会場が1,800円、福岡会場は2,000円である。
 
 
    
【本展の構成】   
第1章 円山応挙に学ぶ
第2章 紀南での揮毫
第3章 より新しく、より自由に
特別出陳 同時代の天才画家たち
 
 
 以下、特に見た作品を記載する。
 
第1章 円山応挙に学ぶ
 
 千葉市美術館蔵の《長沢芦雪像》から始まり、次に、応挙と芦雪の「幽霊図」が共演する。
 芦雪の《幽霊図》は、青白い顔や額の皺などにより壮絶さを強調している、描き表装により、だまし絵効果を狙っている旨の説明。
 
 芦雪《岩上猿・唐子遊図屏風》。右隻には黒い大岩に3匹の猿。大岩の表面、流れ落ちる水流や紅葉と緑の蔦が鮮やか。左隻には、遊ぶ子供たち5人と仔犬たち5匹。楽しい雰囲気の作品。
 
 芦雪《龍図襖》島根・西光寺蔵。8面中、前期は「雲龍図」4面の展示。画面いっぱいにダイナミックにくねくねする姿が魅力的。後期は「昇龍図」4面に展示替え。
 
 
第2章 紀南での揮毫
 
 前期は、和歌山の無量寺・串本応挙芦雪館からの4点の芦雪作品で構成される章。
 
 京都時代に応挙と親交があった無量寺の住職は、襖絵を応挙に依頼する。多忙の応挙は弟子の芦雪を代理に指名する。
   天明6(1786)年10月頃、33歳の芦雪は応挙が描いた一部屋分の絵を携え、上京していた住職とともに南紀に向かう。翌年2月中旬にかけて、臨済宗の無量寺・成就寺・草堂寺、真言宗の高山寺など現地の寺院や個人のために多くの作品を残す。
 
 本展のメインビジュアルである芦雪の重文《虎図襖&龍図襖》。
 「虎図襖」6面の虎は、前脚から肩にかけてはほぼ正面から見た形、左後脚は真横から見た形になっていて、手前に飛び出してくるかのような効果を狙っている。
 「龍図襖」6面の龍は、仏間側からやってきて、振り返る。稲妻が走り、墨が襖の上を流れ落ちて、龍が降らせる雨を表している。
 
 他3点は、軸装の《布袋・雀・犬図》《楊柳観音図》《牡丹雀図》。
 後期は、和歌山の無量寺からの作品は退場し、和歌山の草堂寺、高山寺などからの6点の芦雪作品に展示替えされる。
 
 
第3章 より新しく、より自由に
 
芦雪 重文《山姥図》広島・厳島神社
芦雪《月に郭公図》
芦雪《降雪狗児図》逸翁美術館
芦雪《瀧に鶴亀図屏風》
芦雪《月竹図》
芦雪《蓬莱山図》国(文化庁保管)
芦雪《孔雀図》静岡県立美術館
芦雪《月夜山水図》兵庫県立美術館
芦雪 重文《宮島八景図》国(文化庁保管)
 
と続いたあと、奈良・薬師寺の旧福寿院障壁画7点29面のうち4点17面が展示される。
 
芦雪《松虎図襖》8面、奈良・薬師寺
芦雪《山水図襖》4面、奈良・薬師寺
芦雪《岩浪群鳥図襖》4面、奈良・薬師寺
芦雪《松鶴図杉戸》1面、奈良・薬師寺
 
 このなかでは《岩浪群鳥図襖》の鳥たちに注目する。その腹部は、横方向に線を無造作に引き重ねているようだが、「付け立て技法」(一筆の中に濃淡が生じる描き方)によるもので、表情豊かな縞模様を生み出している旨の説明。
 
 
特別出陳 同時代の天才画家たち
 
 前期は、若冲2点、蕪村2点、大雅2点、蕭白1点、応挙1点の計8点の展示。うち5点が重要文化財)と、見応えのある作品が並ぶ。
 このなかでは、応挙の重文《雨竹風竹図屏風》京都・圓光寺蔵。右隻は竹の葉が下向きに、左隻は竹の葉が四方に向くことで、右隻は雨の、左隻は風の情景を見事に表している。
 ほか、若冲《達磨図》MIHO MUSEUM蔵、蕪村の重文《蘇鉄図屏風》香川・妙法寺蔵、蕭白《許由巣父図屏風》九州国立博物館蔵などを楽しむが、大雅2点(ともに重文)はスルーしている(その魅力に目覚めていないため)。
 
 
 撮影不可の本展、せっかくのフォトスポットも、ミュージアムショップに遮られる。
 
 
 大いに楽しむが、ほぼ展示替えとなる後期も行きたくなる。
 将来の首都圏での芦雪展開催を待つ。


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