続きです。
本展出品のカラヴァッジョ41点について、以下の基準で分類してみました。
<分類基準>
◎ “純正”カラヴァッジョ。没後400年展覧会への出品クラス
○ カラヴァッジョであることは一般的に認められているといってもよいが、没後400年展覧会への出品クラスとまでは言えない
△ カラヴァッジョであることに少なからず異論があるため、没後400年展覧会への出品クラスではない
× カラヴァッジョ作ではない。あるいはカラヴァッジョ作とする意見もないわけではないが、一般的には否定的
<分類結果>
◎:17点
○: 8点 (№7,13,16,17,22,28,31,36)
△:10点 (№1,10,21,23,24,26,29,30,35,40)
×: 6点 (№2,3,4,5,32,38)
・確かに問題のある作品も含めて集められていたことが伺えます。
次に、×以外の35点について、所蔵国を確認しました。
イタリア:17点
アメリカ: 5点
ヨーロッパ、個人蔵:13点
・いわゆるカラヴァッジョ巡礼の聖地である3聖堂からの出品はありません。また、ボルゲーゼ美術館からは6作品中2作品にとどまり、ドーリア・パンフィーリ美術館からの出品はありません。シチリアからの出品もありません。
・他の所蔵先は、1951年のときと概ね同様に協力しているように思われます。ルーブルの「聖母の死」、ウィーンの「ロザリオの聖母」の出品がないのも同様です。
・アメリカからの出品は1951年の1点から大きく増えています。この間、「カラヴァッジョ作品の“発見”」と「アメリカへの流入」が並行して進展したことが伺えます。
【第1部 北イタリアにおけるカラヴァッジョの先駆者】
11画家の14点。画家名をあげます。(複数点出品の場合、カッコ内で数を示す)
バッサーノ(2)
アントニオ・カンピ
ヴィンチェンツォ・カンピ
ロマッツォ
ロレンツォ・ロット
モレット・ダ・ブレーシャ
モローニ
ペテルツァーノ
ロマニーノ
サヴォルド(3)
ティントレット
・カタログ写真を見る限り、アントニオ・カンピの光の効果を追求した作品、サヴォルドの詩情性を感じさせる作品にひかれます。
<カンピ>
「洗礼者ヨハネの断首」(ミラノ、サンパウロ聖堂)
<サヴォルド>
順に「フルートを持った男の肖像」(個人像)、「フルートを持った羊飼い」(英、個人像)、「聖マタイと天使」(ニューヨーク、メトロポリタン美術館)
【第2部 ローマ・ナポリにおける同時代の画家】
21画家46点。(カッコ内の数は出品数を示す)
ジョバンニ・バリオーネ(Baglione)(2)
バロッチ(Barocci)(3)
オラツィオ・ボルジャンニ(Borgianni)(2)
バッティステッロ・カラッチョロ(Battistello Caracciolo)(1)
アンニバーレ・カラッチ(Annibale Carracci)(5)
ルドヴィーコ・カラッチ(Ludovico Carracci)(3)
カヴァロッツィ(Cavarozzi)(1)
カヴァリエーレ・ダルピーノ(il Cavalier d’Arpino)(3)
チゴリ(Il Cigoli)(1)
ドメニキーノ(Domenichino)(2)
エルシェイマー(Adam Elsheimer)(2)
オラツィオ・ジェンティレスキ(Orazio Gentileschi)(4)
ランフランコ(Lanfranco)(1)
バルトロメオ・マンフレディ(Manfredi)(1)
パッシニャーノ(Il Passignano)(1)
ペンショナンテ・デル・サラチェーニ(Pensionante del Saraceni)(2)
イル・ガエターノ(Il Gaetano)(2)
グイド・レーニ(Guido Reni)(2)
イル・ポマランティオ(Il Pomarancio)(1)
ルーベンス(Rubens)(2)
カルロ・サラチェーニ(Saraceni)(5)
・ カラヴァッジョ史では有名な「バリオーネ裁判」。そのきっかけとなったバリオーネ作、ローマ・ジェス聖堂の高さ8メートル、幅4.5メートルの巨大な祭壇画「キリストの復活」(17世紀末には聖堂から撤去されて行方不明)の図像をよく伝えていると思われているルーブル美術館の習作が出品されています。
・アンニバーレ・カラッチは好みの画家です。
出品作3点は、順に「死せるキリスト」(シュトゥットガルト美術館)、「肉屋」(オックスフォード、クライスト・チャーチ)、「分かれ道のヘラクレス」(ナポリ、カポディモンテ美術館)。
次に、第1部・第2部の60点の所蔵国別でみると、
イタリア:21点(うちナポリ4点)
アメリカ:15点(うちMET6点)
フランス、ドイツ:6点
スペイン: 3点
イギリス、アイルランド:2点
オランダ、スイス:1点
個人蔵: 3点
・さすがMET。強靭な所蔵力を感じさせます。
その後、このような大規模なカラヴァッジョ展は2010年までないとしても、カラヴァッジョを冠した展覧会は90年代、00年代と年を追うごとにますます盛んとなり、テーマを特定した優れた展覧会も多数開催されることとなります。