カラヴァッジョ研究史上最重要な展覧会として、次に1985年開催の「カラヴァッジョとその時代展」を確認したいと思います。
まず、本展覧会について、宮下規久朗氏は、
「1985年に米伊両国で開催された画期的な展覧会以降、カラヴァッジョ研究は新局面を迎えた。」
「カラヴァッジョ研究がひとつの区切りを迎えたことを世に印象付けた。」
「大展覧会のあった1985年あたりから一般の人気も目覚しく、イタリアでは10万リラ紙幣の顔となり、展覧会にはどこでも長蛇の列ができ、作品のある聖堂や美術館は、常に観光客でごったがえすようになった。」
石鍋真澄氏は、
「近年のカラヴァッジョ・ブームにいっそう拍車をかけることになったのが、1985年に開催された展覧会です。」
「1951年にミラノで行われた大回顧展以来の、ビッグ・イベントだといっていい」
「この展覧会は、戦後目覚ましく進んだカラヴァッジョ研究の成果を反映した、非常にすぐれた展覧会で、大成功をおさめました。」
「私はこの展覧会のカタログを日本で入手したのですが、それを見てこれは是非行かなければと思い、大学を休んでナポリまで見に行ってきました。薄給の身にはまったく高い入場料になってしまいましたが、無理をしてでも出かけていった甲斐は十分あったと思います。」
「いろいろな意味で問題となる作品が、よく集められていた。」「早くから彼のコピーがたくさん作られました。そのため、彼の真作がどうか、疑問の作品が少なくないのです。ですから、やはり原作を見ないことには話にならないわけで、そうした点をカバーしたこの展覧会は、寄与するところが非常に大きかったといわなければなりません。」
これから先は、手持ちの展覧会カタログがもとになっています。
【開催概要】
ニューヨーク・メトロポリタン美術館「The Age of Caravaggio」
1985年2月5日~4月14日
ナポリ・カーポディモンテ美術館「Caravaggio e il suo tempo」
1985年5月14日~6月30日
【構成】
第1部 北イタリアにおけるカラヴァッジョの先駆者
第2部 ローマ・ナポリにおけるカラヴァッジョと同時代の画家
第3部 カラヴァッジョ
【展示作品数】
101点。第1部が14点、第2部が46点、第3部が41点。
まず「いろいろな意味で問題となる作品が集められていた」第3部から確認していきます。
1 果物を剥く少年(個人蔵)
・ 2001年時点では東京個人蔵。
・ 2001年東京・岡崎の「カラヴァッジョ展」出品作とは別バージョン。
2 バラの花瓶を伴った少年(アトランタ、ハイ美術館)
3 静物(果物と野菜)(ボルゲーゼ美術館)
・ 2010年の上野の「ボルゲーゼ美術館展」に「2匹の蜥蜴がいる静物」の題名で登場。
4 静物(鳥)(ボルゲーゼ美術館)
5 静物(果物と野菜)(ハートフォード、ワズワース・アシーニアム)
6 果物籠を持つ少年 (ボルゲーゼ美術館)
・ 2001年東京・岡崎の「カラヴァッジョ展」に出品。
7 女占い師(カピトリーノ美術館)
8 聖フランチェスコの法悦(ハートフォード、ワズワース・アシーニアム)
9 合奏(ニューヨーク、メトロポリタン美術館)
10 トカゲに噛まれた少年(ロンドン、個人蔵)
・ 今はロンドン・ナショナル・ギャラリーにある作品のようです。
11 バッカス(ウフィッツィ美術館)
12 アレクサンドリアの聖カタリナ(ルガノ、ティッセン・ボルネミッサ・コレクション)
13 マグダラのマリアの回心(デトロイト美術館)
・ 「1973年にデトロイト美術館が、賛否両論の渦中にあったこの作品を購入して大きな論争を呼んだ。翌年『バーリントン・マガジン』が全号を挙げて、これを真作とする美術館側の調査報告や研究論文を掲載したことによって概ね真筆として受け入れられたものの、いまだに否定的な意見がとだえることはない。」(宮下氏)
14 ユディトとホロフェルネス (パラッツォ・バルベリーニ国立古代美術館)
15 果物籠 (アンブロジアーナ美術館)
16 ナルキッソス(パラッツォ・バルベリーニ国立古代美術館)
・ 2001年東京・岡崎の「カラヴァッジョ展」に出品。
17 ダヴィデとゴリアテ(マドリード、プラド美術館)
18 エマオの晩餐 (ロンドン、ナショナル・ギャラリー)
19 勝ち誇るアモール (ベルリン、ダーレム美術館)
20 イサクの犠牲 (ウフィッツィ美術館)
21 茨の冠(プラート、貯蓄銀行蔵)
22 瞑想の聖フランチェスコ(ローマ、カプチン聖堂)
・ 2001年東京・岡崎の「カラヴァッジョ展」に出品。
23 瞑想の聖フランチェスコ(パラッツォ・バルベリーニ国立古代美術館)
・ 22の別バージョン。今では23のほうが真作と考えられているよう。
24 瞑想する聖ヒエロニムス(モンセラート、サンタ・マリア修道院付属美術館)
25 洗礼者ヨハネ(カンザス・シティ、ネルソン=アトキンス美術館)
26 エッケ・ホモ(ジェノヴァ、パラッツォ・ロッソ)
27 エマオの晩餐 (ミラノ、ブレラ美術館)
・ 2001年東京のみ「カラヴァッジョ展」に出品。
28 祈る聖フランチェスコ(クレモナ、市立美術館)
・ 2001年東京・岡崎の「カラヴァッジョ展」に出品。
29 マグダラのマリアの法悦(ローマ、個人蔵)
・ 2001年東京・岡崎の「カラヴァッジョ展」に出品。
30 茨の冠 (ウィーン、美術史美術館)
31 柱に縛られたキリスト(ルーアン美術館)
32 柱に縛られたキリスト(スイス、個人蔵)
・ 31と同じ図像。
33 キリストの苔打ち(ナポリ、カーポディモンテ美術館)
34 アロフ・ド・ヴィニャクールの肖像(パリ、ルーブル美術館)
35 マルタの騎士の肖像(フィレンツェ、ピッティ美術館)
36 サロメ(ロンドン、ナショナル・ギャラリー)
37 ダヴィデとゴリアテ(ボルゲーゼ美術館)
38 歯医者(フィレンツェ、ピッティ美術館)
39 聖アンデレの殉教(クリーブランド美術館)
40 聖ペテロの否認(個人蔵)
・ 今はメトロポリタン美術館にある作品のようです。
41 聖ウルスラの殉教(ナポリ、イタリア商業銀行蔵)
壮観!
続きは次回。