2023年3〜5月に東京国立近代美術館で開催された「重要文化財の秘密」展。
明治以降に制作された絵画・彫刻・工芸品の重要文化財指定作品のみで構成される展覧会で、当時の重要文化財指定作品68件(国宝指定はまだない)のうち51件が出品された。
あれから1年、令和6年(2024年)の国宝・重要文化財(美術工芸品)の新指定が発表。
明治以降に制作された美術工芸品では、絵画2件、工芸品2件が重要文化財に指定される。
累計は72件となる。
日本画:指定33件(+1件)
洋画 :指定22件(+1件)
彫刻 :指定 6件
工芸 :指定 11件(+2件)
以下、絵画2件をメモする。
近代日本美術の重要文化財指定では、画家、所蔵者ともに初となる。
本多錦吉郎
《羽衣天女》
1890年、127.3×89.8cm
兵庫県立美術館
明治23年(1890)の第3回内国勧業博覧会の出品作。作者の本多錦吉郎(1850~1921)は、広島藩士として洋学を学び、明治時代初のヨーロッパ留学生であった国沢新九郎(1848~77)から油絵を学んだ早期の洋画家である。技法書の翻訳をはじめとして、日本における油絵の普及に大きく貢献した。
本作は油絵が逆境におかれるなかで発表された意欲作で、西洋美術をふまえて日本の伝説を描いた作品として話題を集めた。
日本の油絵の先駆的指導者である本多の代表作であり、技法や表現、題材など、明治時代の絵画の歴史を考えるうえで欠かせない作品である。
小野竹喬
《波切村》(画像は一部)
1918年、四曲一双
笠岡市立竹喬美術館
岡山県笠岡市出身の小野竹喬(1889~1979)は近代を代表する日本画家で、風景画で名高い。
本作は大正7年(1918)、竹喬ら5名の画家が国画創作協会を結成するにあたり、その第1回展で発表された大作である。竹喬はこの時期、東洋の古美術や西洋近代絵画に学びつつ日本画による風景表現の方向性を探求しており、多くの画家に影響を与えていた。
本作は三重県の波切港を描いたもので、油絵を思わせる明るく雄大な景観描写はその模索の成果として示されたものである。竹喬の自信作であるとともに、記念碑的な作品であり、竹喬のみならず日本画の風景表現の展開を考えるうえで重要な位置を占める。
東京国立博物館では、久々の例年スケジュール、大型連休時に、特別企画「新指定 国宝・重要文化財」が開催される。
令和6年新指定 国宝・重要文化財
2024年4月23日〜5月12日
東京国立博物館 本館特別1室・特別2室・11室
令和6年新指定(美術工芸品)の国宝6件、重要文化財36件のうち、国宝4件、重要文化財29件が展示予定であるようだ。
同展には、本多錦吉郎《羽衣天女》が出品予定(所蔵館では8月からのコレクション展にて展示予定)。
小野竹喬は残念ながら非出品。所蔵館にて開催中のテーマ展示「国画創作協会の画家たち」展の後期(5/25〜6/30)に展示予定。