1999年春、フィレンツェ。
バロックの扉を開いたカラヴァッジョと、ルネサンスの扉を開いたマザッチオ。
西洋美術史に燦然と輝く大巨匠であるが、二人を結びつけて考えることはなかなかないだろう。
その二人の畢生の大作が、サンタ・マリア・デル・カルミネ教会で競演する。
カラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネの斬首》
マザッチオ、ブランカッチ礼拝堂フレスコ画
マルタ島・ヴァレッタのサン・ジョヴァンニ大聖堂が所蔵する《洗礼者聖ヨハネの断首》が、フィレンツェで修復されることとなる。
まず、修復前の1996年夏、ヴェッキオ宮殿の500人大広間にて公開された。
そして、修復後の1999年春、今度は「CARAVAGGIO AL CARMINE」と題し、サンタ・マリア・デル・カルミネ教会で公開されたのである。
ブランカッチ礼拝堂目当てにサンタ・マリア・デル・カルミネ教会を訪問した男。
カラヴァッジョ作品の特別展示を知り、ラッキーと思う。
ただ、カラヴァッジョの名前は知っていても、特に関心を持つ訳ではない男。背後に少し見えるブランカッチ礼拝堂に気持ちありながらも、先に縦3.6m×横5.2mの大画面の前に立つ。
画面が全体的にテカテカしている、画面が光って見づらい、あっさりとした描写だなあ。
特に興味をひかれるようなことはない。知識として知る、血の署名だけは確認する。
洗礼者聖ヨハネの首から流れ出る血で書かれた体裁の「f michelAngelo」。
それだけ確認すると、ブランカッチ礼拝堂フレスコ画鑑賞に専心するのである。