プラド美術館展
ースペイン宮廷 美への情熱
2015年10月10日~1月31日
三菱一号館美術館
7章構成、全102点からなる本展。
ボス《愚者の石の切除》以外の、お気に入り、または気になった作品を記載する。
I 中世後期と初期ルネサンスにおける宗教と日常生活
No.01 ミゼルコルディアの聖母の画家《金細工工房の聖エリギウス》1370年頃、35×39cm、消失した祭壇画のプレデッラ
金細工作業場、多くの職人が働くなかに1人、金の円盤を被る職人が。道行く人に自製品を宣伝しているかのようだ。
No.04 ハンス・メムリンク《聖母子と二人の天使》1480-90年、36×26cm
ボスを観るのも初めてだが、メムリンクも初めて! 憧れの画家。嬉しい。いつの日か、ベルギー・ブルッヘのメムリンク美術館を訪問したいなあ。
II マニエリスムの世紀:イタリアとスペイン
No.11 ティツィアーノ《十字架を担うキリスト》1565年頃、67×77cm
再見かな。見応えのある魅力的な作品。ただ「小さいサイズ」とはちょっと言えない。
No.13 エル・グレコ《エジプトへの逃避》1570年頃、15.9×21.6cm
スペイン3大巨匠の1人、エル・グレコは、スペインに移る前のイタリア時代の作品2点で攻める。No.14《受胎告知》とともに、ヴェネツィア派風だが、エル・グレコらしい不穏さは既に現れている。
III バロック:初期と最盛期
No.28 アダム・エルスハイマーと工房《へカベの家のケレス》1605年頃、30×25cm、ミルウォーキーのベイダー・コレクションにあるエルスハイマーのオリジナル作品の模写(レプリカ)
エルスハイマーは、1578年ドイツ・フランクフルト生。1600年頃ローマに来る。1610年没。まさしくカラヴァッジョと同時代人、「カラヴァッジョとその時代」展では欠かせない画家。その絵はサイズが小さいうえ、遅筆で、作品数は40点ほどしかないという。
ぱっと見、題材が想像できないが、ギリシャ神話であるらしく、喉が渇いた女神が老婆からもらった水を飲み干す。この後、その姿を見て指を指して笑った裸の男の子は女神の怒りを買い、石にされる。後方の暗がり、かすかな光のもと見えるのは、乳搾りをする老人と少女。不思議な位置にあるものもある複数の光源に照らされる夜の風景。
IV 17世紀の主題:現実の生活と詩情
No.51 フランスの不詳の画家《自らの十字架を引き受けるキリスト教徒の魂》1630年頃、72.2×58.7cm
これも不思議な絵。初めて見る積み上げられた十字架。綺麗に積み上げられていたのに何らかの理由(二人が侵入したせい)で、一部が崩れてしまった感。当時のフランスでよく取り上げられた宗教題材なのかと思ったら、そうではなく当時も珍しい題材で、遠近法への興味から描かれたらしい。
No.54 ヘンデリック・ファン・ステーンワイク《大祭司の家の中庭のイエス》1600-49年、41×50cm
夜の室内風景。No.53《聖ペテロの否認 》とセット展示。キリストが大祭司カヤパに裁かれる場面であることは題名からわかるが、画面が暗く、人も小さく描かれているので、具体的に今どの場面なのかわからない。否認する聖ペテロは、No.54ではそれらしき姿が認められるが、No.53では題名にもかかわらず、聖ペテロらしき姿さえ見つけられない。
V 18世紀ヨーロッパの宮廷の雅
VI ゴヤ
ゴヤは6点。うち3点が2011-12年のゴヤ展で来日、他3点も既視感あり、おそらく再来日だろう。
No.90 ゴヤ《アルバ女公爵とラ・ベアタ》1795年、33×27.7cm
4年ぶり来日のNo.91《レオカディア・ソリーリャ?》が好みだが、82.5×58.2cmと「小さいサイズ」とは言い難い。
そこで同じく4年ぶり来日の「小さいサイズ」、狂気を伺わせる本作。こちらからでは背中の女公爵、一体どんな顔をしているのだろう。
VII 19世紀:親密なまなざし、私的な領域
No.98 フォルトゥーニ《ポルティチの浜辺のヌード》、1874年、13×19cm
最後の展示室は、スペイン画家7名11点。初めて名を認識する画家。小さなサイズだが、確かに肉体が感じられる作品。
以上、ボスを含めて10点。