東京でカラヴァッジョ 日記

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黄金伝説展 (国立西洋美術館)

2015年11月02日 | 展覧会(西洋美術)

黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝
2015年10月16日~2016年1月11日
国立西洋美術館

 

黒海沿岸の街ヴァルナ vs 古代ギリシャ vs トラキア vs エトルリア。黄金対決。

私的には、トラキアが圧勝!


ヴァルチトラン遺宝》BC14世紀後半~BC13世紀初頭、ブルガリア・ソフィア国立考古学研究所・博物館


   古代ギリシャの「極めて精巧」も総じて「小さく薄く軽量を旨とする」金細工が100数十点ほど続いた後に突然現れる、「大きいことはいいことだ!」「重さがすべてだ!」と言わんばかりの金製品の大迫力。

   全13点の総重量12kg超!

   1924年12月、畑仕事中の農夫の兄弟が掘り当てる。真鍮のガラクタだと思った兄弟は、一番大きな器だけを豚のエサ皿にしようと持ち帰り、他は投げ捨てる。腹を空かせた豚がきれいに皿を舐めると、現れたのは23金の輝き!ビックリした兄弟、他を回収するも、15人の農夫たちと報酬の分配争いが起こる。幾つかの遺物は切り刻まれる(そのため元来の形状は不明とされる)。ここで警察とソフィア国立博物館の職員が仲裁に入り、結果、13点が博物館コレクションとして救済されました、という話。

   救済ですか。豚のエサ皿となった一番大きな器とは、No.190かなあ。


続く展示、
《パナギュリシュテ遺宝》BC4世紀~BC3世紀、プロヴディフ考古学博物館


   ヴァルチトラン遺宝から1000年後の食器セット。さすがに1000年後。精巧な装飾である。全9点6.1kgのうち4点が出品。

   1949年12月に、粘土の掘削作業中の3兄弟が発見。発見のエピソードについては、ヴァルチトラン遺宝と「似たり寄ったり」の話が伝えられている、で片付けられる。


《螺旋状のディアデマ》BC4世紀末~BC3世紀初頭、ソフィア国立考古学研究所・博物館 

   2012年に発見されたばかりの一品(部分)。


   素晴らしいトラキアの金製品。これらは初来日かというと、そうではないらしく、一部は、例えば2009年に「よみがえる黄金文明展-ブルガリアに眠る古代トラキアの秘宝」と題した展覧会が東京大丸ほか各地で開催されていたらしい。見逃した。

 

トラキア以外も面白い。


第1章「世界最古の黄金」

《ヴァルナ銅石器時代墓地第43号墓》BC5千年紀、ヴァルナ歴史博物館


   本展の冒頭を飾る、世界最古、6000年前の金製品。1972年にブルガリアの黒海沿岸の街ヴァルナの工業地帯の建設現場にて、294基を数える集団墓地が発見される。発見された金製品は計6kg。

   そのうち最大量(1.5kg)の金製品が発見された第43号墓からの副葬品を、出土した状態に復元して展示される。単にガラスケースに並べていたら、その凄さに気づくこともなくスルーしていただろう。骨はもちろんレプリカ。50-65歳の身長170-175cmの男性の墓とのこと。

   人は骨(よく残っていたものだ)、衣服は消え去り、土器も風化が進む、しかし金はそのまま残る。金の価値を認識させられる展示方法。


   第3章のトラキアも、第1章のヴァルナも同じブルガリア。何故別の章なの?同じトラキアでないの?どうやらヴァルナの遺宝は、トラキア人が住む以前に住んでいた不明の民族によるものであるらしい。


金製品を補完する絵画の数々


   本展は金製品が主役だが、脇役として、金に魅了された人類の歴史を描く絵画も興味深い。


   第1章、会場入場すぐの展示室。
イアソン - アルゴー船 - コルキス - メディア のギリシャ神話「金の羊毛」伝説。

エラスムス・クエリヌス《金の羊毛を手にするイアソン》1636-38年、プラド美術館

モロー《イアソン》1865年、オルセー美術館

モロー《アルゴー船の乗組員》1885年頃、モロー美術館

ハーバード・ジェイムス・ドレイバー《金の羊毛》1904年頃、ブラッドフォード美術館

   特にプラド美術館からの作品がいい。金の羊毛の輝き。三菱一号館美術館ではなくこちらに来たのですね。まあ小さいサイズではないけど。

その他

プッサン《パクトロス川の源のミダス王》1626年頃、アジャクシオ・フェッシュ美術館

ジャンボローニャ《ヘラクレスとケリュネイアの鹿》(彫刻)1590年以降?、フィレンツェ・バルジェッロ国立美術館

モロー《ヘラクレスと青銅の蹄をもつ鹿》1872年頃、モロー美術館

クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》1903年、愛知県美術館

 

   第2章「古代ギリシャ」や第4章「エトルリアと古代ローマ」もよいが、きりがないので、出品元だけ記載する。


第2章「古代ギリシャ」
・アテネ国立考古学博物館:102点
・ブフォルツハイム宝飾品博物館:23点
・ライデン国立古代博物館:28点

第4章「エトルリアと古代ローマ」
・ヴィラ・ジュリア国立考古学博物館:13点
・フィレンツェ国立考古学博物館:30点
・ヴァチカン美術館:5点

 

   チラシの大きいほうの金製品、《腕輪》BC675-650年、イタリア・チェルヴェテリ、ソルボ墓地、ヴァチカン美術館 も素晴らしい。



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