ヴェルサイユ宮殿《監修》
マリー・アントワネット展
美術品が語るフランス王妃の真実
2016年10月25日~17年2月26日
森アーツセンターギャラリー
・絵画作品中心。宝飾品や家具・室内装飾品、書簡(複写)などもあるが、ベースは油彩画と版画。絵画作品でマリー・アントワネットの生涯とその時代のフランス史を振り返る。
・展示品の物量が大。多数の壁面を用意するため、この美術館ではかつてないだろうほど、細かく展示室が区切られている。
・待ち時間こそゼロだが、展示室内は想像以上の混雑。上述の展示室の細かい区切りも影響しているだろう。人気の展覧会であることは間違いない。
・訪問日時もあるのだろうが、鑑賞者の9割が女性。ベルばらにハマった経験のある女性たちが大挙押し寄せているのだろう。
・出品作品は、その多くがベルサイユ宮殿美術館所蔵。他もフランスからであるが、気付いた範囲で2点、アメリカのワシントン・ナショナル・ギャラリーと、オーストリアのウィーン美術史美術館からの出品作品がある。
・圧巻の一つは、入場すぐの肖像画コーナー。
マリー本人(結婚直前の肖像、ウィーン美術史美術館所蔵)のほか、両親(神聖ローマ帝国皇帝)、兄二人(将来の皇帝)、夫(将来の国王)、夫の祖父(国王)、夫の両親・叔母二人・弟二人・妹、その他関係者など、結婚時のマリー・アントワネットを巡る人物の肖像画がずらっと並ぶ。本人を除く全てがベルサイユ宮殿美術館所蔵作品である。
トップバッターの《1755年の皇帝一家の肖像》が印象的。
新たに子供が誕生する度に家族の肖像を描かせたらしい皇帝夫妻。マリーが生まれた1755年にも描かせる。
マリーは15番目(!)の子供だが、描かれた一家は14人、皇帝夫妻を除いた子供は12人である。
このような一家の肖像画は、外交上の贈り物としても使われたらしい。
・私の目当ては、エリザべト=ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブランの作品。
2011年三菱一号館美術館の「マリー=アントワネットの画家ヴィジェ・ルブラン」展以来、気にして観るようにしている画家である。
本展への出品数は、工房・模写・原画を含めて8点。
圧巻は、マリーの肖像、義理の妹の肖像、そして画家の自画像の計3点が並ぶ一画。
皆美人、皆若くて魅力的な女性に描かれている。
そのなかで一番の美人は、やっぱり画家本人である、というのが面白い。
ちなみに、このマリーの肖像はワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵。よく来日してくれたものだ。一番のお気に入り作品。
画家の自画像は、実は、別の画家による模写である。模写であっても美人。原画はさらなる魅力的な美人なのだろう。
他のル・ブラン作品では、マリーの子供たちを描いた作品もある。
・もう一つのお気に入り作品は、ル・ブラン亡命後に、後任の王妃付き画家となったアレキサンドル・クルシャルスキの小品《タンプル塔のマリー・アントワネット》。幽閉中のこのマリーの肖像は、出品作を含めて多数のレプリカが制作され、王制復古後のイコン的存在となったとされる。
・マリー・アントワネットを巡るフランス史について、私は曖昧な知識しかない。
それを本展鑑賞のみで得ようというのはさすがに考えが甘い。
本展を機に、ベルばらを読むか(私の場合、それはあり得ない)、フランス革命に関する歴史書を読むか。今、その余力はないけれど。