東京でカラヴァッジョ 日記

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クラーナハと裸婦

2016年12月05日 | クラーナハ

クラーナハ展-500年後の誘惑
2016年10月15日~17年1月15日
国立西洋美術館

 

   クラーナハの裸婦。


   第4章「時を超えるアンビヴァレンス-裸体表現の諸相」がクラーナハの裸婦に捧げられている。


   裸婦像の油彩画出品数は、全8点。
   少ないような気もするし、充分すぎるような気もする点数。

 

   女性別に見ていく。


1)ヴィーナス 1点

《ヴィーナス》
1532年
シュテーデル美術館

   37.7×24.5cmと小品であるが、世界各地のクラーナハ展で引っ張りだこの、代表作の一つであるようだ。


   クラーナハは、「アルプス以北で初めて等身大のヴィーナス裸体像を描いた」画家とされる。

   エルミタージュ美術館の作品が、その最初の作品であるらしい。

〈参考〉
《ヴィーナスとキューピッド》
1509年
213×102cm
エルミタージュ美術館

   であれば、クラーナハ回顧展としては、等身大の裸婦像の出品があってもよかったのでは、と贅沢なことを思う。

   が、実はこっそり出品されていた。


《キューピッド》
1515年頃
ウィーン美術史美術館


   もともとは等身大の《ヴィーナスとキューピッド》であったが、何らかの理由でキューピッドのみの断片になったらしい。確かに、ヴィーナスの足の一部が画面隅に残っている。

 

2)イヴ  1点

《アダムとイヴ(堕罪)》
1537年
ウィーン美術史美術館


   目はアダムを見つめ、右腕はアダムの肩に回して体をアダムに寄せ、左腕は左上の蛇のいる木に伸ばし脇の下を観者に見せる。腰に回されたアダムの腕が細身の体に線をよらせる。

   こんなエロティックなイヴは見た記憶がない。

 

3)ルクレティア  3点

《ルクレティア》
1510/13年頃
個人蔵

《ルクレティア》
1529年
サラ・キャンベル・ブラッファー財団、ヒューストン

《ルクレティア》
1532年
ウィーン造形芸術アカデミー

 

   ルクレティアは、充実というべき3点の出品。
   ウィーン造形芸術アカデミーのルクレティアは、シュテーデル美術館のヴィーナスと対作品であるという。しかし本展では並べて展示しない。潔い判断である。
(でも観たい。期間限定あるいは大阪会場で並べてくれないかなあ。)

 

4)ニンフ 1点

《泉のニンフ》
1537年以降
ワシントン・ナショナル・ギャラリー

   横たわるニンフ。ジョルジョーネ《眠れるヴィーナス》の影響は北方にも。

 

5)擬人像 1点

《正義の寓意(ユスティティア)》
1537年
個人蔵

   クラーナハ節炸裂の裸婦像。
   だが、隣の現代作家レイラ・パズーキ《ルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意》1537年による絵画コンペティション》に気が取られてしまう。

 

6)集団裸婦像 1点

クラーナハ(子)
《ディアナとアクタイオン》
1550年頃
トリエステ国立古典絵画館


   クラーナハの集団裸婦像で私が思い出すのは次の作品。
   青年向け漫画みたいな絵でありながら西洋美術史を彩るクラーナハに困惑していた頃に知った作品である。


〈参考〉
《若返りの泉》
1546年
ベルリン美術館

   肩を借りながら、あるいは、おんぶされて/担架で/馬で/台車で/馬車で運ばれてきた老女たち。裸になり、泉につかって数歩進むと、若さと美しさを取り戻す。泉からあがって、人生を謳歌する。

   老女のヌード描写が魅力的で、以降、クラーナハは気にして観る画家となる。

 

   以上、本展におけるクラーナハ油彩画の裸婦は、6人(パターン)。

 

   版画等で補完される裸婦が次の3人(パターン)。


・パリスの審判/三美神
・マグダラのマリア
・「アポロとディアナ」のディアナ(←上述の集団裸婦像+デューラーの版画による補完)

 


   上述以外でイタリア・ルネサンスでよく取り上げられる裸婦を、クラーナハは取り上げているのか。


バテシバ

   なんと、バテシバについては、着衣で描いている。裾をあげて生足を見せるバテシバ。

〈参考〉
《ダビデとバテシバ》
1526年
ベルリン美術館

 

 

ダナエ、スザンナ、レダ

   見つけることができない。クラーナハおよび工房、ならびにその顧客たちには、馴染みの薄いテーマだったのか。

 

〈参考〉
ヤン・ホッサールト
《ダナエ》
1527年
アルテ・ピナコテーク

 

〈参考〉着衣ですが。
アルトドルファー
《スザンナの水浴》
1526年
アルテ・ピナコテーク

 

(部分)



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