円山応挙 「写生」を超えて
2016年11月3日~12月18日
根津美術館
11/29から後期入りした円山応挙展。《七難七福図巻》の後半を観るべく、早々に訪問、《七難七福図巻》専用の2階第5展示室に直行する。
円山応挙
重文《七難七福図巻》3巻
1768年、相国寺蔵
前後期で巻替え。上・中・下巻とも半分程度ずつ公開。
経典に説かれる七難と七福をリアルに描くことで、仏神への信仰心と善行をうながす目的で制作された絵巻。人間と自然の有様の諸相を卓越した描写力で描きだす、応挙の画業に重要な位置を占める作品である。(美術館サイトより)
以下、後期公開の後半場面を記載する。
上巻:天災と禽獣による害の巻
4)暴風海難
暴風により倒壊した家屋、住民が一人何とか逃げ出したところか。荒れ狂う海には一艘の船。船員ともども運命は如何に。
5)雷
木を縦に割る白い稲妻。辺り一面、白い稲妻。恐れながらも先を急ぐ旅人たち。一人、地面に横たわる旅人は、まさか直撃されたのではあるまい。
6)鷲
紅葉の季節。一軒の家から血相を変えて飛び出す夫婦。その視線の先には、ドヤ顔で大空を行く大鷲。足には彼らの子供を掴んだまま。庭先の人形が切ない。
7)狼
一匹の狼と遭遇した二人の旅人。慌てて逃げるその方向には、もう一匹の狼が待っている、口に人間の片足を咥えて。空には満月。
8)大蛇
一目散に逃げる旅人。驚愕する家族連れの旅人。山から大蛇が現れたのだ。信じられない巨大さ、その目、舌、鱗は、1768年のシン・ゴジラ。彼らは逃げ切ることができるだろうか。
中巻:人がもたらす災いや刑罰の巻
4)水責
一人の罪人を仰向けに寝かして縛り付け、顔に水を休みなく注ぐ執行人たち。
恐ろしい刑罰であるのは確かだが、絵柄的には、まだおとなしめ。進むに連れて、刑罰の凄惨度合いがレベルアップしていく。
5)切腹
肌脱ぎ中の切腹人。介錯人はいない。
6)一家自刃
2遺体。松の木に伸びきった首吊り遺体。喉下に小刀を突き刺した血だらけの遺体。その白い服には血の手形がベッタリとついている。
7)火炙り
のたうち回る裸の男。首には鎖が結びつけられ、火の中から逃げることはできない。
8)獄門断首
3罪人。さらし首、転がる首なし死体。その隣、執行人に断首されんとする罪人。さらにその隣、もう一人の執行人に準備されている罪人。
9)磔刑
磔の男。二人の執行人が槍で男の体を突き刺す、一人は顔を背けながら。流れ落ちる血。
10)鋸挽
胸から下を地中に埋められた罪人。両肩に当てた二本のノコギリを引く執行人は、完全に俯いてしまって前を見れない。流れる血。
11)牛裂
灸を据えられた二頭の牛が左右逆方向に爆進する。牛の足には罪人の足が結びつけられていて、血、内臓、骨が。
下巻:福の巻
1)大邸宅における貴族の祝宴と飲食
2)子供たちの舟遊び
3)祝宴の調理
4)年貢納め
応挙はさすが「正統派」、凄惨な場面がこれでもかと展開されるが、描写は抑え目。
と、前期鑑賞時は思っていたが、実は全く違った。
特に中巻の刑罰シリーズには降参。
下巻の子供たちの舟遊び、祝宴の調理、年貢納めの場面がなんと清々しいことか。
優れた美術家は、エロとグロはお手の物なんですね。
その他の作品。
下期限りの出品作品では、《雪中山水図屏風》(1769年、相国寺蔵)の山の描写《黄蜀葵鵞鳥小禽図》(1773年、個人蔵)の鵞鳥の描写を興味深く観る。
心地良くない疲れで退館する。自業自得である。