東京でカラヴァッジョ 日記

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カラヴァッジョ《悲嘆に暮れるマグダラのマリア》-「カラヴァッジョ展2019-20」

2020年02月06日 | カラヴァッジョ
カラヴァッジョ展
2019年12月26日〜20年2月16日
あべのハルカス美術館
 
 
カラヴァッジョ
《悲嘆に暮れるマグダラのマリア》
1605-06年、112×92cm
個人蔵
 
   大阪会場限りの追加出品作。
 
   ルーヴル美術館が所蔵するカラヴァッジョの代表作の一つ《聖母の死》。画面右下の「マグダラのマリア」を描いた作品である。
 
   大きい画面。サイズは112×92cmもある。
   《聖母の死》自体が369×245cmの大型作品なので、本作はその部分の実物大に近いのだろう。マグダラのマリアの描きぶりも同じに見える。忠実な模写かな?
 
   しかしながら、本展は、本作をカラヴァッジョの真筆として提示する。
 
   本展図録第3版によると、ペルトリッチが、近年発見された本作をカラヴァッジョに帰属した(2004年頃)。デニス・マーンやミーナ・グレゴリーといった美術史家も真筆と認めるに至ったという。
   《聖母の死》の習作として、完成作の見本として注文主に事前提示するために、あるいは、自身のリハーサルのために、カラヴァッジョが制作したものだとする。本作には、多くのペンティメント(描き直し)や画家の作品によく見られる「引っ掻き線」が存在するという。また、ローマ国立公文書館で発見された文書記録によっても帰属の正当性が裏付けられるという(その記録は近く公表予定とのこと)。
 
   ルーヴル作品に忠実に描かれているように見えるので、模写と思ってしまうのだが、そういうことであるらしい。
   ただ、本展では、赤い壁紙の左右に柱の造作がない(と記憶する)。また、部屋の角を挟んで隣には、カラヴァッジョ作品のコピーに関する解説パネルと、ウフィツィ美術館所蔵《聖トマスの不信》が展示されている。大阪展主催者の意図を感じる。
 
 
 
   ルーヴルの完成作《聖母の死》について。
   宮下規久朗氏は、次のとおり記している。
 
   私はカラヴァッジョの研究を始めたころ、この絵がそれほど好きではなかった。カラヴァッジョの代表作とされるのは、単にルーヴルにあるからだけだろうと思っていた。しかし、二度目にルーヴルに行ったとき、縦が4メートル近くあるこの絵を、ソファの上に立ってじっと長時間見ていたら、そのとてつもない厳粛さに打たれた。死というものの絶対的な非情さがしみじみと伝わってきたのである。写真や図版で何度見てもその感興は追体験できないのだが、そのときはまさに絵が立ち上がってきたのである。(『カラヴァッジョへの旅』角川書店)
 
   私は、大昔、ルーヴルに行ったことはあるのだが、カラヴァッジョに関心を持つ前のことなので、《聖母の死》を含むカラヴァッジョ作品については完全にスルーしている。チラッとでも見たという記憶すらない。
 
   今後《聖母の死》実物を観る機会は期待できないけれども、こうして真筆かもしれない、習作かもしれない作品を実見できたのは、ありがたいこと。
 
  「カラヴァッジョ展2019-20」では、本作《悲嘆に暮れるマグダラのマリア》以外にも、ボーダーライン上にある個人蔵の作品、《リュート弾き》、《メドゥーサの首(第一ヴァージョン)》、《法悦のマグダラのマリア》、《聖セバスティアヌス》が出品された。これらの他にも、結構な数のカラヴァッジョ作候補の個人蔵作品が世の中に存在するのだろうなあ。
 
 


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